ファイナルファンタジーX アルティマニアΩ (SE-MOOK)

岡田悠

人生で最も熱狂したゲームの一つ、ファイナルファンタジーXの攻略本です。600ページあって、めちゃくちゃ分厚い。辞書か?と思う重厚な佇まいが、本棚の真ん中に飾りたくなる一品です。

FF攻略本として名高いアルティマニアシリーズの中でも、オメガは裏ストーリーや製作者へのインタビューが掲載されている、まさに「究極」的にマニアックな内容で知られています。これだけ分厚いのに、ゲームをクリアするための情報には、あまりページが割かれていません。この攻略本を読むような読者に、攻略情報など不要なのです。僕がこの攻略本を購入したのも、ゲームを2周クリアした後でした。

この攻略本は(というかもはや資料集に近いのですが)、ゲームを一通りやり込んだ後にこそ楽しめるのです。裏ボスなどの隠し要素はもちろん、キャラクターのセリフのちょっとした分岐に驚いたり、世界観の裏設定を楽しんだり、ゲーム中では登場しないキャラ同士の「親密度」なるパラメーターの複雑な計算式を解読したり。ゲームにはそこまでの広がりがあったのかと、胸を打たれること間違いありません。

攻略本は、常にネタバレとのバランス調整が必要だと言われます。そんな文脈において、製作者の一人が、この本を作った思いを次のように語っています。

「ゲームをクリアした人や、さらなる探究心を持つ人を読者と想定して、自分自身に何の束縛も与えずに本を作ってみたいー」

この本から溢れ出すエネルギーは、攻略本のしがらみから解き放たれたクリエイターたちの、自由の咆哮でもあるのです。

 


バーチャファイター2 act.1―完全保存版 (ゲーメストムック)

ギャラクシー

僕が読み込んだ攻略本は、ゲーム雑誌『ゲーメスト』の別冊ムック『バーチャファイター2 ACT.1』です。

この本が発行された1995年当時、『バーチャファイター2』という格闘ゲームに熱中していたので、通勤電車でもトイレの時も職場の休憩時間も、ずっとこれを読んでいました。

このシリーズは確かACT.3まで発行されてまして、ACT.1は「基礎編」として全てのキャラクターの、全ての技に対して、詳細な情報が載っていたんです。

当時はまだまだインターネットが普及していなかったため、技の詳しい情報を把握している人はごく僅か。基本的にはゲーセンで知らん人に「今の技ってどうやって出したんですか?」って聞くしかなかったんです。本としてまとめられたのは本当に嬉しかったです。

技の情報で特に重要だったのは「攻撃発生時間」と「硬化時間」です。例えばサラというキャラの蹴り技『イリュージョンキック』は発生が10フレーム、硬化が36フレームとなっています。※フレームとは、1秒を60分割した単位(1秒=60フレーム)

つまり初心者のために単純化して言うと……『イリュージョンキック』を防御できたら、相手は36フレームの間なにもできないので、こちらは発生が35フレーム以内の技を出せば確実に当たる、ということです(実際はこちらもガード硬化時間があったり距離を詰める必要があったりするのでそう単純な話ではないです)

そういった情報を知っているかどうかで勝率が大きく変わってくるため、自分が使うキャラだけではなく、10キャラ全ての技(900以上!)の情報を暗記するために、何百回も読み込んでいたわけですね。

おかげで地元では55連勝したりして、確固たる地位を築くことができました。僕がゲーセンに入ると周りでヒソヒソと「おい、アイツ確か……55連勝したあの……」みたいな感じで噂になって超気分良かったです。今は亡き『ゲーメスト』、ありがとう!

 

 

『ドラゴンクエストⅦのあるきかた』(エニックス)

ダ・ヴィンチ・恐山

ドラクエ7の攻略本なのですが、ストーリーをクリアしていることを前提とした完全やりこみ本です。最初のページの企画が「メタル系スライムを100回ずつ倒して逃げやすさを検証」であることから、その本気度がうかがい知れるというもの。プレイしていたら気になる情報や考えもしなかった視点でのやりこみを「足で稼ぐ」方法で網羅していくさまは圧巻です。

「1バトルで経験値を一気に100万稼ぐ」
「カジノのスロットの図柄構成」
「ゲーム中で手に入るアイテムを『全て』手に入れる」
「歩いた歩数を計れるアイテムを使って世界一周し、世界のおおよその広さを知る」
「作中キャラが住んでいる家の風水を見てみる」
「各マップにある壺や鉢植え、本棚などの小物の数を全て数え、文化的傾向を知る」
「技『いっぱつギャグ』で言うダジャレのパターンと出現頻度の調査」
……などなど。

 

ドラクエ7という大作を隅から隅まで楽しみ尽くすために時間と手間を惜しまない企画はまさに「攻略本」の名を冠するにふさわしいと思います。

 

『ポケットモンスターを極める本』(マイクロデザイン)

加藤亮

1996年、今では全世界で愛されるポケットモンスターが発売。発売前に雑誌でこのゲームを見かけ「2つバージョンがあってちょっと違うの!? モンスターを育てて交換したり対戦させる!? やるしかない!」と当時小学生のぼくは購入を決めた。

しかし、フタを開けてみれば発売当初に同学年でポケットモンスターをプレイしているのはぼくひとり。「ポケットモンスター? なにそれ?」という状況である。オーキド博士からいただいたヒトカゲをせっせと育て、ひとりでポケモン交換も対戦も、何なら攻略情報の交換すらなくプレイする毎日。殿堂入りし、もう片方の緑バージョンを追加購入して図鑑を完成させていた。

孤独な日々、ブームは急にやってきた。何がきっかけだったかわからないが、突如としてクラスの男子の大半がポケモンをプレイしだしたのだ。ファミ通? なんで誰もやってないゲームが急に流行ったの?

とはいえ、あまりに先に進みすぎており、結局ぼくが友だちとポケモンを戦わせたり交換することはなかった。圧倒的に強すぎるし、図鑑も完成していて意味がないからだ。

そんな時、この非公式攻略本「ポケットモンスターを極める本」が発売された。「ある程度やりつくしたな」と思っていたゲームをさらにやりこみ、当時は誰も知らなかった努力値や個体値に近づいてもいた。タイプ相性図なども便利。当時の非公式攻略本は、ただ攻略情報を載せるだけでなく、編集部が独自に検証・やり込んだ結果が反映されていて、ただ読むだけでも楽しかった。

編集者やライターの主張なども強めで、ぼくがそこそこ好きだったウィンディが「レベル100まで育てても意味のないポケモン」とまで言われていたりする。そんなこと言ってやんな! でんせつポケモンだぞ!

また、初代環境での対戦で猛威を振るっていたケンタロスについては、あまり特筆されていない。「氷、雷系の技も覚えられるので結構イケるかも」と、その可能性に気付いてはいたようだ。最初に発見したトレーナー、あなたはスゴい!

ちなみに、誰とも交換も対戦もせず、両バージョンを購入して図鑑を揃える…という孤独な戦いは今も続いている。ぼくにはポケモンがいる。友だちはいらない。

 

『RPGツクール SUPER DANTE 公式ガイドブック』(アスペクト)

山口むつお

今から27年前の1995年、「RPGツクール SUPER DANTE」というスーパーファミコンソフトが発売されました。その名の通り、自分のオリジナルRPGを作ることができるぞ!というものなのですが、そんなの小学生の心をときめかせまくるに決まってますよね。

ご多分に漏れず、当時小学生だった山口少年は近所のゲームショップ「わんぱくこぞう」にダッシュしてこのソフトをGET。RPG制作にとりかかりました。

本来難解なゲーム制作を簡易化しているとはいえ、そこそこプログラミング的な思考が求められるので、1本ゲームを作り切るのは小学生にとってなかなかシビア。

結局、山口少年が作り上げた処女作は、だだっぴろい草原の真ん中に小さな家。その中にはニワトリが1羽。

話しかけると、「アー・ユー・ウィンダム?」とトヨタの車・ウィンダムのCM文句を問いかけられ、”はい”と答えるとゲーム内で使用できる全てのエフェクト(揺れ、点滅、BGM変更etc)が1通り起こったあと、ニワトリは完全に消滅。家には鍵がかけられ、主人公は二度と外には出られなくなる…というものでした。

「こらあきまへんでホンマ(当時関西に住んでいたので、関西弁がすごかった)」と絶叫すると、山口少年は再びゲームショップ・わんぱくこぞうへ。ファミ通が発行するRPGツクールガイドブックを購入し帰宅すると、すぐさま購入時に店員さんに一緒に入れてもらったミニコミ紙「ぱっくんぽっけ」を熟読しました。

「やっぱり馬頭ちーめい先生の『兄弟神技』はおもろいでんなあ、かなんでしかし…」とつぶやいた後に公式ガイドブックのほうを開いたのですが、RPG作りのテクニックより著者のおもしろい文章に心惹かれることになりました。

特に著者の1人であるスタパ斎藤氏の自己紹介文が面白く、ゲームそっちのけでそこばかり読むことに。

それもそのはず、後から知ったのですが、スタパ斎藤氏は週刊ファミ通の名物コーナー「ゲーム帝国」の全盛期を支えたライターさんだったのです。

結局スーパーファミコンのRPGツクールはそれ以上作り込むことはなかったのですが、その数年後に発売される「RPGツクール3」では自分でドットを打ち、宇宙警察・ヒロノブが布袋寅泰とともに悪の存在(青竜刀を持った英語教師)を滅ぼしにいく、というRPGを最後まで作り切ったのでした…。

 

 

以上、5名に寄稿いただきました!

人の攻略本の思い出を聞くと胸の奥がホワ〜といい気持ちになれる! 最高!!

 

みなさんの攻略本の思い出もぜひ教えてくださいね!

 

(おわり)