毎年恒例の早川書房Kindle本のセールが6月16日から始まりました!

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』『三体』などの話題作から、アガサ・クリスティーなどの不朽の名作まで、あらゆる作品がお安くなっているそうです。

せっかくなので、何か買ってみたいのですが、早川書房といえばミステリーやSF作品の宝庫ですし、何を選べばいいのか悩んでしまいます。

お得とはいえ失敗はしたくない……。

 

そこで、オモコロライターのみんなに「これオススメ!」という作品を聞いてみました。ぜひ参考にしてみてください。

 

『Final Anchors』

電子書籍で単話で買えるSF短編です。

ほぼ全ての自動車は完全自動運転に、さらにコンピュータ内部にはそれぞれ独立のAIが組み込まれ、運転にまつわる判断を統括しているという設定。

「絶対に避けられない衝突事故」が起きる0.5秒前、2台の自動車の中にいるAIは超高速で通信し、最後の討論を始める。議題は「どちらに過失があり、責任を取るべきか」。

AIに倫理判断を委任する、ある意味現代と地続きの近未来世界で起こる奇妙な会話劇で、かなり面白かったです。短くてすぐ読めるし。

強制的に車を停止させる方法が予想外の力技で、それも見どころです。

 

『ハウスメイド』

前科持ちの女がとある豪邸で家事手伝いのメイドとして働くことになったが、雇い主の奥さんがめちゃくちゃイカれまくっており、無意味な仕事を押し付けられたりいびられたりして辞めたすぎる…前科持ちで次の働き口が無いから耐えるしかない…。そんな中、次第にこの変な人の家の秘密が明らかに…というミステリー。

とにかく主人公の女への精神をすり減らす攻撃が陰湿でありつつも、エッ!?となる仕掛けからの終盤にかけての伏線回収、そして前半のストレスを跳ね返すめちゃくちゃ気持ちいいクライマックスと、かなり「完全」な小説でした。

海外では人気のあまりもう映画公開されていて、そろそろ日本公開されるという噂。

社員旅行の飛行機の中の映画リストにこれがあって(日本語字幕は無し)前方斜めに座ってた人が見てたのが視界に入ってたんですが、端々のシーンが目に入っただけでも再現度はかなり高そうで期待が膨らみます!

 

『ネット怪談の民俗学』

スーパー良かったです。

とにかく著者のリサーチ力がやばい。ネット怪談ができた流れを解説してくれるんですが、有名な怪談が生まれた経緯が知れて良かったです。

著者の方がイベントで梨さんと対談しててそれも最高でした。

 

『マルドゥック・スクランブル』シリーズ

なぜか図書館のラノベの棚にありました。おじさん×女の子のバディものです。

ゴーストインザセルやアップルシード、AKIRAが好きならおすすめです。

 

『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』

シンデレラとか竹取物語とか有名な童話のハードSFパロディ短編集でめちゃめちゃ面白いです。

おむすびころりんを元ネタにモンティホール問題とコンピューターを扱った上で愛の話にまとめてきたりして感動しました。

 

『ソース焼きそばの謎』

焼きそばに取り憑かれ、偏愛しすぎている男・塩崎さんの焼きそば三部作です。ほかに『あんかけ焼きそばの謎』『カップ焼きそばの謎』があります。

特に『ソース焼きそばの謎』がすごくて、膨大な資料から焼きそばにまつわる問いにあらゆる角度から迫っています。

・なぜ醤油ではなくソースなのか?
・関東では細い蒸し麺が使われ、関西では太い茹で麺を使うようになった地域差には何があったのか?
・戦後大阪発祥説は正しいのか?

など狂気的に焼きそばの背景を追い求め、ありふれた一皿の料理から現代につながる人々の暮らしが立ち昇っていく過程は圧巻です。

 

『宇宙の戦士』

「感情を持たない昆虫軍団との戦闘」「戦闘用パワード・スーツ」「火星を舞台に描かれる乾いた戦争」など、今では定番中の定番となった設定たちの元祖となったSFの古典。

「暴力はなにも解決しない、というのは誤りであり、歴史上ありとあらゆる争いは暴力によって解決されてきたのだ」という徹底したマッチョイズムに則った世界観に賛否はあるかもしれないが、「男なら、戦わねばならぬ時がある」と自らを奮い立たせる起爆剤にもなりうる小説。

クラスメイトの女子がパイロットに志願するのを後から追いかけて軍隊に入っただけの主人公が、「一介の兵士ユニット」として覚悟を決めていく過程が哀しい。

ガンダムの世界観のベースになったとも言われ、一度は読んで損はありません。

 

『〔少女庭国〕』

この小説はいわゆる「デスゲームもの」ジャンルの創作を内側から考え直す小説です。
同時に、そのジャンルが持つ可能性を別の地平でもう一度開拓する小説でもあります。要するに、無類におもしろい小説です。

 今となっては「デスゲームもの」と聞いただけで「ああ、そういう設定の話ね」と何となく想像できてしまうぐらいお馴染みになったデスゲームですが、そもそもデスゲームなんてものはこの世にありませんでした。
偉大な先駆者たちの古典作品を端緒に、作者と読者たちが共同作業で「そういうものがある事にしましょう」と捏造していった創作上の様式でありルールです。

 当たり前の事ですが、創作内の登場人物は作者ではありません。作者が捏造したルールの全体像についても知った事じゃありません。勝ち筋や最適解、ライバルの出し抜き方なんかもすぐに見つかる訳がありません。

 「〔少女庭国〕」の登場人物たちは、それぞれの限られた視点から知覚できたわずかな部分、理解できたわずかな部分のみを足がかりにし、積み上げたり崩したり迂回したりしながら各個人が理解の及ぶ領域を広げていくしかありません。
「筋道立った説明をしてくれる、なんか変なお面を被ったデスゲーム主催者」は居ないし、じゃあそれなら自分でって事で思いついた断片から先に発する口語は整わないし、意図は相手にすぐには伝わらない。
といったような制約が、つまり「今できる事を順番にやっていくしかない」人間ならではのしんどい制約が、この小説においては無類におもしろいスリリングな仕掛けとして最初から最後まで機能しています。人間の思考が直線的であり、文章が直線的である事実についての祝福です。

 

 長々とすみませんでした。要するに、無類におもしろい小説です。

そして、「バトルロイヤル風間」という固有名詞が出てくるこの世で唯一の小説です。

 

伊藤計劃シリーズ

『虐殺器官』

有名作ですが、有名なだけあってとても面白かったです。

テロ対策で徹底管理された先進国と、内戦や大量虐殺が起きている発展途上国。
大量虐殺の原因を追っていくと、必ず「ジョン・ポール」という男が背景にいた。彼は何者なのか?なぜ彼の行く先に虐殺が起こるのか?といったことを探っていく小説です。

読了後もちょくちょく「面白かったな〜」と思い出してしまいます。電子書籍で読むと作中に入り込んでいる気分になれるので、電子がおすすめです!

 

『ハーモニー』

めちゃくちゃ好きです。

未来、医療技術が極限まで発達した結果「健康であること」が義務になった世界の話。
WHO(世界保健機構)が国家権力のような存在になっていて、「健康に貢献しないなら殺す」みたいな武装集団になっていたり、不健康な行為で人間ランクが落ちるディストピア/ユートピア世界の話です。

家山さんの上げてくれた「虐殺器官」と世界が繋がっているので、続けて読むのも面白いです!

 

『the indifference engine』

ディストピアSFから遺稿「屍者の帝国」の冒頭、漫画やメタルギアの二次創作も収録された滅茶苦茶に闇鍋的な短編集です。

既存ファン向けと思われるかもしれませんが、各作品どれも短く作風の幅も広いため、伊藤計劃入門書としてもおすすめです。

 

 

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

今さら当たり前すぎて誰も言及していませんでしたが、さすがにこれは外せないので挙げておきます。

地球滅亡の危機を救うべく、ひとりの教師があらん限りの奮闘をするお話なんですが、ドキドキとワクワクのサイクルが猛スピードで展開して目が離せません。「エンターテイメントってこういうことなんだ!」と思い知らされます。

すでに映画をご覧になった方もいるかもしれませんが、そういう人にもぜひ読んでほしいです! 小説内では一人称視点で主人公の思考とユーモアが描かれるので、一度見た物語がさらに拡充するような体験になると思います。

文庫本でも1600円を超える結構な大作(しかも、それが上下巻ある)ですが、今見たら990円になってました。いいなぁ〜。俺もその値段で買いたかったよ。

今までに読んだSFの中でもぶっっっっっっっちぎりで面白かったし、この先何十年も語り草になる作品だと思います。

『どうせいつか読むんだから』という気持ちで、この機会に買ってみてください。

 

『息吹』

同僚に教えてもらったSF短編集。サクッと短く、それでいてズシッと本格的なSFが味わえます。

この一冊に9本の短編小説が掲載されているんですが、その全てが面白いです。そんなことあんの?!?

こういうこと言うのもアレなんだけど、1作くらい「まぁまぁ……これくらいのヤツもあるわな」とか思っちゃう短編まざってるもんじゃないの??? 百発百中ってどゆこと??!?

特に表題作の『息吹』はビックリしました。よくもまぁ、こんなこと考えつくなぁ……。

 

設定や文体も含めて、やや硬派なSFなので、初心者にはオススメしづらいかもしれません。ただ、上記の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が読めたのなら、断然オススメです。

 

以上です。

早川書房Kindle本のセールは7月13日まで! 気になる作品があったら、この機会にチェックしてみてくださいね!