↑30年後のブロス編集部です。

1話で終わる話が連なってめちゃめちゃ読みやすい本でおなじみの「短編集」。今日はバーグハンバーグバーグ社員の中でも「Mr.短編集」と呼ばれそうなほど漫画好きに、「オススメの漫画短編集」を教えてもらいました!

 

 

ダ・ヴィンチ・恐山の好きな短編集

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グヤバノ・ホリデー

【おすすめ人:ダ・ヴィンチ・恐山】

panpanya先生は私にとって数少ない「紙で単行本を買いたい」作家さんです。

デビュー以来一貫してほぼ同じキャラクターをつかってシュールレアリスムと現実の間を散歩するような短編を発表し続けているpanpanya先生ですが、『グヤバノ・ホリデー』あたりから、完全なエッセイも散歩の範囲に入って、さらに世界が拡張されている感じがします。人間社会というセンス・オブ・ワンダーを自然物のように噛み尽くす筆致はいつまでも憧れの対象です。

 

 

雨穴の好きな短編集

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夜明ケ

【おすすめ人:雨穴】

人生で一番衝撃を受けた漫画です。しりあがり寿先生の初期の短編を集めた「エレキな春」「おらぁロココだ!」に続く三部作完結編で、若さゆえの迷いと不安、性の衝動が紙面いっぱいに荒々しくぶつけられています。

個人的には、モラトリアムの中盤~終わりにかけて多くの人が抱く絶望や無力感をコミカルに描いた「はたちマエ」シリーズと、しりあがり先生の作品としてはやや異色な「他所へ…」が特に好きです。

 

 

みくのしんの好きな短編集

チクサクコール

【おすすめ人:みくのしん】

ピューと吹くジャガーの作者、うすた京介先生の短編集。チクサクコールが当時好きでした。

チクサクコールといえば、中学生の頃を思い出す。

中学生。僕はジャンプを読み始めた頃。

そもそもアニメの前に漫画本があることも小学生の時衝撃だったのに、漫画の前にそれが連載されてる雑誌があることも知らなかったので、連載中の作者の短編集みたいな漫画本があるというのはもう意味がわからなかった。おそらくこんな事は誰もしらないぞ。と興奮して一人家に帰って読んでいたのを覚えています。

僕のクラスでギャグ漫画や深夜のバラエティを好きと言える人はどっちかと言うとインドアな人が多く、野球部・サッカー部などの体育の時間に怖くなるタイプの人は、おそらく普通におっぱいの写真とか見てたんだと思う。知らないけど。

オタクな趣味がわかる訳でもおっぱいの写真についてもわからない振りをしている僕としては、中途半端な場所にいた気がするけど、どちらかと言えば漫画が好きな人の周りにいることが多かった。

ある日、いつもの友だちとジャンプの話をしていたら、バスケ部に一人から「みくのしん、ジャガーさん見てるの?」と声をかけられて、突然”バスケ部の、背の高い、短髪の、痩せ型で、筋肉質な、薄めの腹筋が体育の着替えの時見えるタイプ”と突然ジャガーさんがきっかけで仲良くなったことがあった。林田か、森田だった気がする。木田ではなかった。

仮に樹木田として、樹木田とは好きなバラエティ番組なども同じで、それ以外は全く違うのに面白いと思う場所だけは似ていた。金曜日。つまり内Pの次の日には必ず答え合わせみたいに番組を振り返っては笑っていた。バカ笑いってくらい面白いと思うところが似ていた。

ある日「チクサクコールって知ってる?」と、樹木田から言われた時があった。すごく嬉しくて、その日の事は今でも覚えてる。

・チクサクコール。そもそも表紙面白すぎない?
・駅で一人でこの格好で立ってるのすごい
・胸にUFOマンって書いてあるやつでしょ?
・だらんとコンビニのビニール袋持ってた
・絵上手くね?
・漫画の表紙でかなり一番面白いかも

僕らは表紙だけで1時間近く喋っていて、今でもチクサクコールの表紙を見ると思い出して嬉しい気持ちになる。覚えてないけど、この思い出、夏だったらいいな。

この本には、そういう思い出があります。

 

 

ヤスミノの好きな短編集

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福本伸行自撰短編集 1 あの人のトランペット

【おすすめ人:ヤスミノ】

福本伸行といえば『カイジ』『アカギ』に代表される命を賭した狂気的なギャンブル漫画。それと同時に『最強伝説 黒沢』や現在連載中の『二階堂地獄ゴルフ』など、どうしようもない人々の非喜劇をやさしく肯定するような作風も特徴です。

この短編集『あの人のトランペット』はこてこてで暑苦しい人情話です。ちょっと古臭い(というか実際古い作品)なのは否めないものの、そのてらいのなさというか直球のエモーションがかえって胸に響きます。なので「黒沢」タイプの作品だな、と思ったのですが単純にそうとも言えないかもしれません。

というのも『カイジ』や『最強伝説 黒沢』、そして『あの人のトランペット』、それぞれのテーマは異なれど、どれも一貫して福本伸行の人生に対するスタンスが刻み込まれているからです。そのスタンスとは、お金や地位を得るよりも人間の矜持や尊厳だけは曲げてはならないということ。これを読むと福本伸行作品の根底みたいなものがより鮮明になる気がします。オススメです。

それと、このころの福本伸行は女の子をかわいく描こうとする気持ちがまだあったみたいです。そのへんも注目ポイントです。

 

 

ギャラクシーの好きな短編集

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室外機室 ちょめ短編集

【おすすめ人:ギャラクシー】

ちょっと不思議でちょっとエモい物語が収録されたマンガ短編集。絵もうまいしストーリーもうまいしで全編おすすめなのですが、特に『21gの冒険』っていう話が良かったです。

交通事故で死んだ女性が魂(霊?)となって、自分が入る予定の墓を見に行くというだけの話なのですけど、普通この設定なら、【今までの人生を振り返る】とか【最後に愛する家族に会いたい】とか、安易な“良い話”になりそうなものじゃないですか。この短編はそういうのが一切無くて、「21g(魂の重さは21gという説がある)となった女性の、風に吹かれて飛んでいっちゃったり、人にぶつかって跳ね飛ばされないように腐心したり、電車の屋根に飛び乗ったりといった冒険が、ただただ軽やかに描かれてるのがめちゃ良いです。

湿っぽい部分は全然無いのですけど、草原に飛び降りた時に「足元の花を潰しちゃったかも」と見てみると全然大丈夫だったりするんですよね。「自分はもうこの世に何の影響も与えることはないんだな」という寂しさや、この世や人々とのお別れが、なんとなく空気で感じられるようになっててとてもエモいです。

 

 

さようなら

以上!気軽に買えちゃうのも短編集の良いところですね。気になったら是非!

敬具