2022年11月。
ある果物の「生食での国内輸入」が解禁された。
リュウガンである。
リュウガンはライチなどと同じムクロジ科の果物で、主に東南アジアで栽培されている。名前の由来は、実を切った断面が「龍の眼」に見えることから。「ロンガン」とも呼ばれる。
これまでリュウガンは、防疫のために日本国内への生果の輸入が禁止されていた。しかしこのたび、基準を満たしたベトナム産の生リュウガンに対して輸入が解禁されたのだ。
今年になり実際に輸入がスタートしたところで早速ゲットしたので、フルーツ仲間のダ・ヴィンチ・恐山さんを呼んで一緒に食べることにした。(フルーツ仲間=おいしい果物や珍しい果物、及びその情報を交換しあう関係のこと)
ダ・ヴィンチ・恐山さんと筆者の鬼谷
ロンガン、ついに生果輸入の解禁ですか……
恐山さんは「ロンガン」派なんですね。実は僕もです
ロンガンはこれまで冷凍しか食べたことがなくてね
冷凍で食べたことある日本人もなかなかいないですよ
そのときの冷凍ロンガンは長期保存されていたためか風味を満足に味わえていない感覚があったので、生食には期待しています
生のロンガン、果たして……
うわ、持つと結構フヨフヨだ
元々こういう果物なのか、この個体の状態が悪いのかが分からない
マイナーフルーツあるあるですね
皮は手で剥けそうですけど、まずは断面を見るために包丁で切ってみますか
果肉は透明寄りの白色ですね。冷凍で食べたものよりプルプルしてます
種も真っ二つにしてしまったけど、「眼」っぽさを見るためにはアボカドの種みたいに残した方がいいのかも
おお、ちゃんと白目と黒目だ!
ネットでよく見るロンガンの姿ですね!
そんなロンガンを手に入れたからには……
やっぱり、やらなきゃですよね
龍の眼、ぜひ目にあてましょう
こんなくだらないこと本場の人もやってるのか分からないですが……
どうですか?
お……、なんか面白い
本当ですか?
なんだこれ、おもしろ。すご
……
もうちょっと真ん中に寄せてみてください
面白くて怖い
アジアにはこんな原始的なおもしろがあったのか
日本にまでは伝わっていなかった面白さだ
やるべきことはやったので、食べます。
けっこう甘い! 食感はアロエに似てるかな。ライチの系統らしくボンヤリとした味ですけど、水分はたっぷり含まれています
おいしいですか?
うーん……独特の香りがあって、手放しに「うまーい!」とは言いにくいですね。もしかしたら熟しすぎてるのかな。でも果物としてのポテンシャルはたしかに感じます
手で剥いてみる恐山さん
簡単に剥けますね。柔らかさがコロロ(そういうグミ)みたい。皮と果肉の間に空間があって、ハズレのみかんを剥いてるときに似た感覚です
なるほど。身離れがよくて剥きやすいとも捉えられますね
実食
ん? んー、うんうん
ふむ……
味としてはやはりライチが一番近いけど、風味に少々の生臭さがあり、親しみやすくはない
つまり?
私は苦手!
おお、これはこれで貴重な感想
甘さは好みなんですけどね〜。冷凍ではここまで苦手に感じなかったから、あれは風味が弱まっていたぶん臭みも飛んでたのかも
場合によってはフレッシュさが仇にもなりうるのか……
※読者の皆さんへ
生ロンガンの食べ頃は外見では分かりにくいので、とりあえず買ったらすぐに食べてみることをおすすめします。初めて出会った今回はこのような感想でしたが、もっと美味しくロンガンを食べるコツはあるはずで、そこを気長に探っていくことも新しいフルーツを楽しむポイントのひとつです。
今回さらにロンガンのシロップ漬けも持ってきました。これは以前から輸入されていて、アジア系食品のお店ではよく見かける商品でした
缶詰に加工されることで味の印象も変わりそうですね
よいしょ
おおー
見た目は食べられる虫のよう
夜の海を漂ってそうだ
では、いただきまーす!
ロンガン農家に見せたい笑顔
おお! はるかに親しみやすい味!
やっぱり違うんだ! シロップ漬けになって甘すぎるということはありませんか?
ないですね。生よりライチ感は薄れて、パイナップルに近くなったような
えー!? 酸味ですか?
酸味もありますが、砂糖水で漬けることによって元の水分が外に出て、生食のブヨブヨしたゼリー感から繊維質が目立つようになったことも一因でしょう。それがパイナップルの一方向に並ぶ繊維に似て、食感が近づいたのかな
分析はやっ
全く別物のフルーツになりました。これならフルーツポンチに入っていても戦える
なるほどこれは違う! おいしいですね。辛味にも似た酸味が残っていて、甘い大根のような気配を感じます。雑味が消えたことで野菜っぽくなった。こういう変わり方ができるんだったら料理にも使えそう
生とシロップ漬けと冷凍でそれぞれ大きく印象が異なる果物でした
今回の生ロンガンはコンディションが万全じゃなかった可能性もありますが、その安定性も重視するなら缶詰はおすすめですね。生食と異なる味わいが楽しめるという点ではむしろ缶詰向きの果物と言ってもいいかもしれない
生ロンガンの今後の流通においては、実の形状の扱いやすさや剥きやすさを強みとしつつ、同類のライチの食味にどれほど抵抗していけるかが争点になりそう
がんばれ、ロンガン!
せっかくなので、近くにいた人にも食べてもらうことにしました。
近くにいたライター・電気バチさん
ロンガンを食べてください
ロンガン?
なんだこれ、変な色
ぜひ安心して食べてください
うん、ライチの味だ。甘いですね
おいしいですか?
おいしいです。キンキンに冷やしてあったら更にいいかも
ありがたい意見だ
缶詰もあるのでぜひ
あ、缶詰の方がうまい! シャクシャクしてる
さっきまでロンガンに興味なかった人がロンガンを美味しく食べてる様子、嬉しいなあ
お雑煮食べてるみたい
ガツガツガツ!!
すごい! 箸とお椀でロンガンをかっこんだ人なんて未だ存在しないですよ
ごちそうさまでした
お口に合ったようでよかったです
ちなみにこのロンガンという果物はリュウガンとも呼ばれてまして、漢字で「龍眼」と書きます
切った断面が龍の眼に似ているというわけですね
まさか
はい、ぜひお願いします
大丈夫、想像しているよりは少し面白くなります
やっぱり面白い
こんなので面白いはずないのに
……以上、日本の果物好きによるレビューでした。
ロンガン、またの名をリュウガン!
日本に来てくれてありがとう!
甘くてちょっと面白くなれるフルーツ、みんなも食べてみよう!