こんにちは、ライターのたかやです。『ハチミツとクローバー』という作品をご存じでしょうか。
羽海野チカ先生による青春漫画の金字塔。2000年から2006年まで連載されていた。全10巻。略称は「ハチクロ」。
「ハチクロ」は僕の青春漫画のバイブルと言っても過言ではありません。それぐらい何度も…何度も読み返しました。
そこで、この場をお借りして「ハチクロ」の魅力を紹介させてください!
この記事の登場人物
たかや:「ハチクロ」を紹介します。
かまど:オモコロブロス編集長。たかやは「自分の『好き』をさらけ出したいタイプのオタク」なので、聞き手として協力して貰いました。
なんで今のタイミングでハチクロを紹介するの? 結構前の漫画だと思うけど。
「ハチクロ」の登場人物って大学生なんですよね。いま入学式シーズンだし、読み返してたら“熱”が再燃してきちゃって…。どこでもいいから“熱”を放出したくて…。
ちなみに、たかやはいつ「ハチクロ」を好きになったの?
いつだっけ。たぶん高校時代にたまたま読んで好きになった記憶が…。でも、“好きになった瞬間”って思い出せないから、恋じゃん? 好きって、そーいうもんじゃん?
日本語なのに何言ってるのかわっぱり分かんねえ。
今日は「良い」「凄く良い」「超良い」の視点から、僕が「ハチクロ」の好きなポイントを3つプレゼンさせてください。
視点が狭すぎるな。
➀登場人物全員片想い! 「片想いの権化」山田あゆみに心揺さぶられる!
「ハチミツとクローバー」のメインキャラ(手書き)
まず、こちらが「ハチクロ」の主要キャラです。美大を舞台に、若者たちの青春群像劇が展開されます。
なるほど、そういう漫画だったんだ。
大学生の男女が集まったら何が起きるか…。そう、「恋愛」しかないですよね?
「しかない」ってことはないだろ。
現実の大学生なんて全員不埒なのでそうに決まってます。しかし、この「ハチクロ」はただのグループ内恋愛に収まりません。
次の図をご覧ください。
「ハチクロ」恋の相関図
どうです? この図を見て何を感じますか?!
なんか、やたら一方通行の好きが多いね。
そう! 全員が別の相手に「片想い」をしてるんですよ。 RPGなら全員のジョブが「片想い」ですよ? そんなパーティーある?!
「片想い」は職業(ジョブ)じゃないだろ。
この作品は究極の片想い特化型漫画。作品についたキャッチフレーズは『登場人物全員片想い』。ハチクロ読者ならわかってくれると思うんですが、このフレーズが見事なもんでねぇ…! 胸がこう…ギュンギュンしちゃうんですよね! ギィ!
一回深呼吸してくれ。ただ、「ハチクロ」が片想いの恋愛模様を描いた作品とは知らなかったな。メインになるカップルがいるのかと思ってた。
中でも、この山田あゆみ(茶髪の子)は「片想いの権化」と僕の中で呼ばれています。それぐらい彼女の一挙手一投足がもどかしいというか…甘酸っぺぇんスよ…。
僕は「ハチクロ」の中で、山田あゆみが断トツで好きなんですよね…。
すみません。彼女のこと考えたら一回大きな声を出したくなってきました。
出してもいいですか? 出しますね?
あ~~~~~~!!!
俺、帰ってもいい?
「ハチミツとクローバー」 1巻127p
同級生の真山に対して、一途なまでに想いを寄せる山田あゆみ。しかし、物語が始まる前段階で、あゆは真山にフラれている。
「ハチミツとクローバー」 1巻 133p
それでも真山のことを諦め切れないあゆみ。好きな相手にフラれても一途に想い続けるその姿はあまりにも純粋で儚く切ない…。
「ハチミツとクローバー」3巻 7p
文化祭で少しでも好きな相手と接触したかったあゆのモノローグ。この「わざと用を作っては会えそうな場所を何度も~」の一文がたまらなくもどかしい。僕たちも学生時代にやったよね~(泣)
ガラス細工のように繊細なあゆの「片想いムーブ」がマジで愛おしいんだ…。
大学生ならではの機微って感じだね。ノスタルジックな恋愛模様だ。
あゆのエピソードはどれも好きなんですが、特に「グサッ」と来た話がありまして。
「ハチミツとクローバー」 4巻 66p
みんなで夏祭りに参加しようとなった回で、女性陣は浴衣を着て行ったんですよ。ほら、世の女子は好きな人に「浴衣姿、可愛いな」と言われたいじゃないですか。
お前が世の女子の心を代弁すんな。
「ハチミツとクローバー」 4巻 72p
で、その願いはあっさり叶うんですよ。「ユカタ似合うな」と、意中の相手に言って欲しかったその一言をあっさりと貰えた。
いいじゃん。片想いじゃなくなる予感がするね。
「ハチミツとクローバー」 4巻 73p
でも次のページを見て下さい! 幸せな表情がだんだんと曇っていきます。どうして?! どうしてなの?! 欲しかったひと言もらえたよ?! ねぇ~~~!?
たかやが「!」を使うと途端にノリが鬱陶しくなるな。
あゆは気づいたんですよ! 浴衣姿を褒められたけど、真山の心までは揺らしていないことに! それは…あくまでお世辞なことに……。 聞きたかった言葉だったけど、欲しかった言葉ではないことに!
この真山のセリフも、本当にドキッとしたなら「ユカタ似合うな」じゃなく「浴衣似合うな」になってたんですよ! カタカナ表記がまた切ない!
ッあああああああああああ(泣)
無理を承知で言うけど、黙って喋ることできないかな?
「ハチミツとクローバー」 4巻 74p
その後のあゆのモノローグがまた切ないんですよね…。
そのたった一言が聞きたくて
髪を結って
キモノを選んで
大騒ぎして着付けして
慣れない下駄を履いて
………
ドキドキして
他の誰の為でもなく
あなたのそのひと言のために願いを込めて
ほんの少しでも少しだけでも
あなたの心が
私にかたむいて
くれないかって―――
「ハチミツとクローバー」 4巻 75p
どうして私は夢を見てしまうんだろう
くり返し
くり返し
あきもせず
バカのひとつ覚えみたいに
片想い中の立ち振る舞いと情緒を、このモノローグは見事に表しているんですよ…(泣)「登場人物全員片想い」な『ハチクロ』の中でも、山田あゆみの片想い度は群を抜いてます。トップ・オブ・片想いです。
そんな悲しい称号をつけるなよ。
世の中の恋愛なんて大半が片想いで終わってるんですよ。だからこそ、この超一途で超乙女な山田あゆみが響くんです。 一度でも「片想い」に苦しんだ人はマジで読んで欲しい…突き刺さっから…。
「ハチミツとクローバー」 6巻 7p
バレちゃってる片想いって不毛だけどラクだもんね
罪悪感で相手は優しいし
こちらは作中に登場する野宮っていうイケメンがあゆに対して言い放ったセリフ。 片想いの「狡さ」をピシャリと言い当ててます。
②「青春」って恋愛だけじゃないよね! モラトリアムのボディーブローに抉られる!
この作品は思春期に誰もがぶつかる「モラトリアム感」もめいっぱい描かれています。特に↑の竹本がいい味出してましてねぇ…。
「ハチミツとクローバー」 5巻 71p
彼は根が真面目で良いヤツなんですけど、悪く言うと「普通」寄りの人間なんですよね。
「ハチミツとクローバー」 6巻 76p
美大なんて才能を持った人間の集まりじゃないですか。さらに、自分が好きになった相手は芸術家として大天才の花本はぐみ。そして恋のライバルが同じく天才の森田忍。天才たちに挟まれ、余計に自分の凡才さを目の当たりにする。
才能の有無で悩むキャラか。俺、そういうの好きだな〜。
迷走→迷走からの脱却→また迷走…と。竹本はとにかく自己問答が多い。山田あゆみが「片想いの権化」なら、竹本裕太は「モラトリアムの権化」です。
「ハチミツとクローバー」 6巻 76p
「自分に出来ることってなんだろう?」「俺って何がしたかったんだっけ?」誰もが一度はぶち当たった青春の迷路。このマンガはそんなモラトリアム感を致死量を超えるレベルで摂取できます。作中の野宮さんの言葉を借りるなら「青春再放送」ってこと!
僕が「ハチクロ」を好きな理由ってココなんですよね。片想いの一喜一憂や自己の迷走。それらを「青春」の一言で片づけるのは簡単ですが、年頃の若者の心理を恐ろしい程リアルに、そして繊細に表現されているんです。
右手は「片想い」、左手は「モラトリアム」。そのワン・ツーでボディを殴打されちゃあねぇ。そりゃアンタ、KOですわ。
ずっと一人で喋りつづけてる。
③自転車の旅、したくなるよねぇ~
あ~~~~、自転車で旅がした~~~い!
急に何?
先ほど紹介した竹本、就職活動の失敗が続いた結果、自転車で「自分探しの旅」に出ます。
「ハチミツとクローバー」 6巻 140p
「自分探しの旅」なんて「若気の至りエピソード」でトップ3に入るぐらい恥ずかしいヤツですよね。
今思うと恥ずかしいけど、あの時は自転車さえあればどこにでもいけると思ってたもんな〜。
たかやが大学時代に挑戦した自転車日本一周の写真
僕も大学生時代、自転車で日本一周に挑戦しました。「自分を見つけるにはコレっきゃねぇ」と衝動のままにチャリを走らせちゃった…。
へ〜。たかやがそれやってたなんて初めて聞いたな。その時は何日くらいかかったの?
自分探しのために日本を一周するつもりだったんですけど、途中の京都で宇治抹茶ソフトクリームを食べた瞬間「もう…いいかな」と満足して帰りました。
宇治抹茶ソフト探しじゃねえか。
いま思えば完全に「ハチクロ」の影響されただけで、その時の僕には別に探したい自分とかいなかったんですよ。でも、そんなことをしちゃうくらい「ハチクロ」の「自分探しの旅」シーンは魅力的なんです。
「ハチミツとクローバー」 6巻 148-149p
この捨てられたゴミも廃材も利用しちゃうのもいいんですよね。大学生って基本的に金が無いし、これぐらい泥臭い旅の方が圧倒的に記憶に残るよ!
「ハチミツとクローバー」 6巻 128-129p
竹本は、最終的に東京から北海道の最北端・稚内までたどり着きます。
竹本くんはちゃんとやり遂げてるんだ。
稚内に到着する直前のコマ割りが漫画史に残ってもいいレベルで素晴らしいんですよ…。マジで読んで欲しい。
あぁ…僕もまた自転車旅したいですねぇ…。
しても良いですか? しても良い…?
自転車旅行、しても良い~~~~?!
それは好きにしたらいいと思う。
以上、超青春漫画「ハチミツとクローバー」の紹介でした
以上、端的ですが「ハチミツとクローバー」の魅力を語らせて貰いました。ハチクロは少女漫画でも少年漫画でもなく「青春漫画」という区分がぴったしなのです。これ程までに“若者らしさ”を表現している漫画はない…。
基本コミカル調でストーリーも進んでいくし、羽海野先生作品に共通する「優しい世界観」も、「ハチクロ」では満ち満ちています。「こんな学生生活送りたかった~」の連続です。
恋の辛さ、思春期の自己葛藤、才能を持った人間だからこその芸術への苦悩。「ハチクロ」に登場する人物は、常に何かしらに対して、届かない想いを抱いています。このマンガのテーマはやはり「片想い」なんですね。「登場人物全員片想い」←このキャッチフレーズを考えた人、本当に素晴らしい…。
だからこそ「ハチクロ」の登場人物は全員愛おしいし、こんな世界に憧れます。連載終了から約10年以上たった今も色褪せることなく、「ハチクロ」は青春漫画の金字塔です!
春の始まり、「青春感」に飢えている人は「ハチミツとクローバー」を読んでみてはいかがでしょうか?
かまどさんに次会ったとき、単行本持ってきますね。
布教活動にも抜かりの無いオタクだ。
次は花沢健吾先生の名作「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を紹介させてください
(おわり)