はじめに

映画、見てますか?私はかつては毎週のように映画館に通って新作映画を2〜3本ハシゴし、往復の移動中にもダウンロードしておいた映画をスマホで見るという生活を送る程度には映画を見ておりました。

最近は育児に追われてるのと外出しづらい環境なので全然見れてませんが、本日は私が好きな映画のジャンル…そう、「POV手法で撮られた映画」のオススメをご紹介させていただきます。

(もうすでに知ってたらすいません。あと私より詳しい映画好きの方は「浅い」とマウントを取りたくなる気持ちもわかりますが、大目に見てください。)

 

 

POV映画の成り立ちと隆盛

そもそもの話からですが、POVとは「Point Of View」の略で、撮影しているカメラマンが一人の登場人物としてカウントされて展開する主観映像といった撮影方法で、見る人はあたかもその出来事を追体験できるような臨場感と緊張感にあふれています。↑早い話がこういうやつですね。さらに「記録映像」との相性が極めて高く、多くのフェイクドキュメンタリー(=モキュメンタリー)が作られていきました。

古くは1983年の「食人族」が そのショッキングな映像と真贋が話題となりこの手のジャンルの原点といった存在になっていますが、やはりこの手法が一気に知れ渡るきっかけとなったのが1999年に公開された「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」でしょう。

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「魔女伝説が残っている地域を調べるドキュメンタリー映画を撮影していた三人の学生ヘザー、マイク、ジョシュが消息を絶ち、1年後に発見されたフィルムを編集して映画化した」という触れ込みで、真相をほとんど明かさず見る者に推理させる構造と現実と虚構を曖昧にさせる宣伝戦略で当時一大ブームを巻き起こしました。2016年にヘザーの弟がドローンなどの現代機器を駆使して姉を探しに森を捜索するという正当続編「ブレア・ウィッチ」が公開されたことも記憶に新しいですね。

この「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の成功により、POV手法で作られた映画が雨後の筍のようにめちゃくちゃ作られるようになりました。クオリティも高い傑作も飛び出していますが、その原石を見つける作業はさながら体育館にずらりと並べられた大量の犬の糞の中から、たった一つのかりんとうを見つけるかのような作業、つまり駄作の方が多いというというのが現状です。製作側からしてみたら「大きな機材が必要なく、コスパ良く制作できて、投げっぱなしでも成立する」という大変作りやすいジャンルですからね。

 

 

POVを見る上での楽しみ方

そんな感じでPOV映画は普通の映画と一線を画す飛び道具的存在なので、好き嫌いが明確に分かれるジャンルとなっております。その理由に「そもそも駄作をつかんでしまってつまらなかった」「画面酔いして見れない」というのは仕方がありませんが、「画面がブレて肝心のお化けや怪物などがちゃんと映らない」、「結末や真相が分からないまま投げっぱなしで終わる」など、普通の映画と比べるとフラストレーションが溜まる構成が多いからです。ということで、POV映画を見る上での心構え二か条。

 

一、お化けが明確に見えたら怖さが半減すると思え

「画面がブレて肝心のお化けや怪物などがちゃんと映らない」という不満点に対するアンサーですが、逆にお化けがめちゃめちゃしっかりカメラに収まったら「あ、こういう顔付きなのね」と一つの答えが提示されてこちらで想像する幅が狭まってしまい、怖さが半減してしまいます。

人間っちゅうもんは正体の分からないものに対してぞわぞわしたり恐怖を感じたりする習性を持っていますから、その居心地の悪さを楽しむようポジティブに変換してしまいましょう。で、この辺りの怪異の作りがうまかったのが「都市伝説:長身の怪人」です。

 

アメリカで2009年頃に生み出されたインターネットの架空キャラクター「スレンダーマン」を元にしたPOVホラーで、主役のお化けであるスレンダーマンをアップで映すことは決して無く、森の奥にチラッ、窓の向こうからスッ、木の陰からボヤ〜…と、起源になった画像や構築された各種設定を裏切らずに極限まで映さないスタイルで不気味さと緊張感を際立たせることに成功しました。このように「お化けを明確に映さないことで見る側に想像の余地を残す作り」になっていると◎ですね。

 

一、記録映像なんだから仕方ないじゃん

「結末や真相が分からないまま投げっぱなしで終わる」という点に対して少し大人の余裕を見せる解答で恐縮です。たいていのPOV映画は真相は分からずじまいで終わってしまいますが、それもそのはず、現実世界では映画みたいに都合よく行くわけがないのです。

私はPOV映画を本当に起こった記録映像だと自分に言い聞かせて見ている生命体なので、非力な人間がカメラ一つで立ち向かったところで超常現象や怪異・怪物の真相を解き明かすことなど出来るわけが無いと考えています。するとどうでしょう、結末が分からなくても人智の及ばない現象に対して人間が深入りし、「ここまで記録できたよ!死んだけど」と残してくれた映像の、なんと美しいことか…と思えてくるのです。人間の一瞬の煌めきを切り取った90分前後の映像として見てみましょう。どうしても何のわだかまりもなくスカっと終わるPOVが見たい時は、「イン・トゥ・ザ・ストーム」を見てください。

 

超巨大竜巻に巻き込まれてただ耐えることしか出来ない人間の弱さ、そこで生まれる人々の絆、そして竜巻の超絶インパクトが楽しめます。あと、最終的にはもちろん晴れるので…。

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ようやく本題!オススメPOV映画

さて前置きが長くなってしまいましたが、ようやくここから私のオススメPOV映画をジャンル別にご紹介したいと思います。ちなみに誰もが知るようなレジェンドPOVはいったん除外しています。

また、単純な怖さの「恐ろし度」、リアリティがすごい「リアル度」、登場人物がバカであればあるほど高得点の「愚か者度」、一切希望が無い「ヤバい度」、一周回って逆に笑えてくる「お笑い度」の5つで採点しています。

 

 

圧倒的完成度の傑作5選

1・コンジアム(2018年・韓国)

【あらすじ】
ホラー動画配信サイト「ホラータイムズ」のハジュンは、その昔患者が集団自殺し院長も謎の自殺を遂げ世界7大心霊スポットに数えられるようになったコンジアム精神病院跡への潜入をライブ配信し、霊障の謎を解こうと試みる。視聴者から隊員を募りいざ進入するが、案の定やばすぎることが巻き起こる〜!助けてくれ〜!アニョハセヨ〜!

恐ろし度:★★★★★
リアル度:★★★★★
愚か者度:★★★★☆
ヤバい度:★★★★★
お笑い度:★★☆☆☆

いきなり割と有名なやつで恐縮ですが、近年のPOVホラーの中で久々に大当たりレベルの怖さを誇っていてるので紹介させていただきます。実在するコンジアム精神病院に潜入したオッペケペーな若者たちが恐怖のどん底に突き落とされるシンプルな構成ですが、「グレイヴ・エンカウンターズ」や「ブレア・ウィッチ」「REC」などのレジェンドPOVへのリスペクトを感じさせるアップデートされた恐怖演出に、ジワジワと盛り上げて後半に本気の本気で叩き込むお化けラッシュはかなり完成度が高く、普通に震えあがりました。

霊を出しすぎない、安易なビビらせがあんまりない、そもそも病院内の全てが怖いなど、怖さのバランスも絶妙です。前半に登場人物がキャッキャ遊ぶシーンがあって冗長ですが、「こいつらが後でひどい目に遭う」と考えると必要な場面となります。

 

 

2・V/H/S ネクストレベル(2013年・アメリカ)

【あらすじ】
「変な義眼を入れられてから幽霊が見えるようになった男」、「頭にGoProを付けた男がゾンビになってゾンビ視点でGoproが回り続ける話」、「狂った宗教団体に潜入したリポーターが体験した地獄」、「子供が宇宙人に連れ去られる話」のオムニバス短編シリーズ4本でぇ〜す

恐ろし度:★★★★☆
リアル度:★★★★★
愚か者度:★★★☆☆
ヤバい度:★★★★★
お笑い度:★★★★☆

「POVホラー短篇集」という新たなジャンルを構築したシリーズの二作目で、あえてのVHS画質で素人投稿の心霊映像のような仕上がりになっているのが嬉しい傑作。幽霊、ゾンビ、カルト教団、宇宙人と完璧すぎるジャンルに、剛力と笑いを表裏一体で突き進むバランス感覚は脱帽しかありません。特に宗教団体に潜入したエピソード「Safe Heaven」は、30分の間によくここまで詰め込んだな…というほどの地獄につぐ地獄、絶望につぐ絶望です。

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3・トロールハンター(2010年・ノルウェー)

【あらすじ】
ノルウェーの大学生が北欧の妖精トロールの撮影に成功した!というドキュメンタリー映像

恐ろし度:★★☆☆☆
リアル度:★★★★★
愚か者度:★☆☆☆☆
ヤバい度:★★☆☆☆
お笑い度:★★★☆☆

ストーリー自体はシンプルなものの、「トロールは紫外線を浴びるとガスが体内に溜まり爆発する」「クリスチャンに敏感で襲い掛かってくる」といった生態の細かさや、「大きな鉄塔の電線が無意味に一周ぐるっとつながった内側にトロールを隔離していて、政府はそれを隠蔽している」など、都市伝説のような設定がリアリティを増幅させてくれる上、トロールの造形も素晴らしいし、舞台となるノルウェーの自然が実に美しい…。ホラーではなく冒険活劇的なジャンルなので星のスコアは低いですが、フェイクドキュメンタリーとして圧倒的な完成度です。

 

 

4・ザ・ベイ(2012年・アメリカ)

【あらすじ】
とある海辺の町で寄生虫による疫病が大発生。瞬く間に死の町と化してしまうまでを様々な視点で描いたフェイクドキュメンタリー

恐ろし度:★★★★★
リアル度:★★★★★
愚か者度:★★★★☆
ヤバい度:★★★★★
お笑い度:★☆☆☆☆

これはコロナ禍に見舞われている現代に見ることでよりリアルに恐怖が倍増しそうな傑作。パトカーの車載カメラやTVリポーターのカメラといったメディアの他、病院の防犯カメラや政府の会議映像など、様々なツールで疫病発生の原因を色んな視点から見せていくことで真相が見えてくるシナリオ作りが素晴らしいです。疫病の描写もなかなかグロい!

 

 

5・武器人間(2013年・アメリカ/オランダ/チェコ)

【あらすじ】
第二次世界大戦末期、ソ連軍がナチス・ドイツの占領地域のとある施設に入ったらフランケンシュタインの孫のマッドサイエンティストが人間と機械を合わせた改造人間を大量に製作しているところに出くわして大変なことになる話

恐ろし度:★★☆☆☆
リアル度:★★★☆☆
愚か者度:★★★★☆
ヤバい度:★★★★★
お笑い度:★★★★★

バカが作った最高の映画です。武器人間の造型がめちゃくちゃ最高!人体実験を行う博士が出てきてから一気に面白さが加速します。人体改造が雑なこともあってグロいシーンもてんこ盛りだし、博士の「俺はこんなにも真面目に取り組んでるのに!」っていう狂った思想も最高。POV映画にしては珍しく、ほぼ全ての武器人間をゼロ距離でめちゃくちゃしっかり撮影してくれてるのもサービス満点で良いです。そりゃ見せたいよね、武器人間…。

 

 

実話が元になっている奇作4選

1・奴隷の島、消えた人々(2016年・韓国)

【あらすじ】
天然塩が有名な韓国のとある離島で、大量殺人事件が発生。ここでは知的障害者たちが違法な人身売買で連れてこられ、賃金未払いで酷使させられ、まともな生活も保証されずに不当な暴力も受けているやばすぎる現場だった。記者のヘリとソクフンは殺人事件発生直前にその実態を暴くために突撃取材を敢行するのだが…

恐ろし度:★★★★☆
リアル度:★★★★☆
愚か者度:★★★☆☆
ヤバい度:★★★★☆
お笑い度:★☆☆☆☆

タイトルの時点で嫌さが立ち込める本作は実際に起こった「新安塩田奴隷労働事件」をベースにしたもの。あらすじに書いてあることヤバすぎるけど、昔の話でしょ?と思ったら、2014年の事件らしいです…こんなこと現代でありまっか!?

知的障害者は過酷な状況で働かされていながらも「自分には他に居場所がなくてここにいるしかないんですぅ〜」と言い、ボコボコに殴られてても「転んだだけなんですぅ〜」と警察にウソの証言をしてしまうなど完全に「教育」がされている上、警察も施設と癒着してまともに調査してくれないという絶望的な状況で、何とか解決に向かえるか…と思わせておいてクライマックスは圧巻。韓国映画は胸糞悪いことがよくあるんですが、こちらもなかなか嫌で良かったです。

奴隷の島、消えた人々(字幕版)

 

 

2・サクラメント 死の楽園(2013年・アメリカ)

↑信じられない

【あらすじ】
VICE社に勤めるサム宛に、奇妙な手紙が届く。それは音信不通になった妹からの手紙で「とある共同体で暮らしているから安心して」というものだった。何か気になるので「エデン教区」と呼ばれる共同体へカメラマンのジェイクとともに潜入取材を敢行するのだが…

恐ろし度:★★★★☆
リアル度:★★★☆☆
愚か者度:★★★☆☆
ヤバい度:★★★★☆
お笑い度:★★☆☆☆

実際にあったカルト教団「人民寺院」の集団自殺事件をモチーフにしたホラー。なかなか盤石の布陣で「何かが狂ってる異常な雰囲気」をジワジワと醸し出す演出がよいです。この共同体の中に充満する「真意の見えなさ」「理由の分からなさ」が逆に恐怖を掻き立てるツールとしてこれ以上なく機能しています。本来だったら「もっと理由を明確にしろ!」とか思ったりもするんだけど、そこに思考を到達させないほどの圧倒的威圧感と恐怖感は折り紙付きです。

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3・ディアトロフ・インシデント(2013年・アメリカ)

【あらすじ】
1959年にロシアで実際に起きた、9人のプロ登山家がテントを内側から引き裂いて裸足・下着で逃げだして凍死した謎すぎる超未解決事件「ディアトロフ峠事件」。それに惹かれた大学生ホリーは4人の仲間を引き連れて事件のあった山脈に赴いて謎を解こうとするが、お察しの通り大変なことが巻き起こる〜!助けて〜!

恐ろし度:★★★☆☆
リアル度:★★★★★
愚か者度:★★★☆☆
ヤバい度:★★★★★
お笑い度:★☆☆☆☆

「ディアトロフ峠事件」はマジでめちゃめちゃ謎で、何故か舌を抜かれて死んでいたり、頭蓋骨や肋骨が折れてるのに外傷が無かったり、雪山なのに死体が放射能に汚染されていたりとミステリーすぎる事件で、現時点でも様々な考察本が出ているほど有名。本作はその山脈で何があったのか?を解き明かそうとするスリラー。

予算があるのか、全体的な映像描写にかなり気合が入っていて、最後まで緊迫感が途切れない!また、「この事件、こうだったらいいよな〜」という監督や脚本家の妄想を映像に落とし込み、静かに張った伏線を見事に回収しながら時には他の未解決事件と大胆にからめたり、さらなる謎を混ぜ込んで一つの結末を描いてみせる展開は剛力ながら素晴らしい仕上がり。お見逃し無く。

 

4・フェニックス・インシデント 襲来(2015年・アメリカ)

【あらすじ】
1997年3月13日、アリゾナ上空に無数の発光体が現れた。後に通称「フェニックスの光」と呼ばれるのだが、この日発光体が現れた現場近くで4人の若者が姿を消し、17年たった今でも一切の手がかりが無く、未解決事件として片付けられた。

アメリカ空軍によってその後の真相は全て闇の中に葬られたが、ジャーナリストが入手した機密文書、若者の当時の記録映像、内部告発者の単独インタビューをまじえて多面的に真相を再検証する。果たしてこのフェニックスの光事件とは何だったのか…?

恐ろし度:★★★☆☆
リアル度:★★★★★
愚か者度:★★☆☆☆
ヤバい度:★★★☆☆
お笑い度:★★★☆☆

行方不明になる若者たちの手持ちカメラによる迫力満点の記録映像を軸に、告発者の単独インタビューで真相を補完する構成の妙で中だるみは全く無く、めちゃくちゃ緊張感と臨場感に溢れてて、「これこそ政府がひた隠しにしていたマジの真相だ…」と思わせてくれるような重厚さで最高です。「コール・オブ・デューティー」の開発に携わった人が制作陣にいたおかげで、サバイバル描写やカメラワークが他のPOVと比べてかなり凄まじい熱量を帯びています。陰謀論が好きなら見逃してはいけません。

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勢いがすごい痛快作3選

1・エビデンス 第6地区

【あらすじ】
キャンプしてる若者4人が謎の野獣に襲われる〜〜〜!

恐ろし度:★★★★★
リアル度:★★★★★
愚か者度:★★★★☆
ヤバい度:★★★★★
お笑い度:★★★★☆

あらすじを見る限り何度もこすりにこすったシチュエーションと思いきや、後半30分、ありとあらゆる衝撃が一切の間髪を入れずに畳み掛けてきて、それに対した無力な人間が叫びながら逃げまどう凄まじき熱量に、数年前に見たのに初見の衝撃をまだ覚えているほどです。POVのあるあるを覆して思考や推理の余地を一切与えないとんでもなさは死ぬまでに一度見る価値のある逸品です。

 

 

2・ある優しき殺人者の記録(2014年・日本/韓国)

【あらすじ】
韓国の障害者施設を脱走して18人殺害した異常者パクから取材して欲しいと連絡があった幼なじみのジャーナリストのキムと日本人カメラマン。指定された廃マンションの一室に行ってみると、「本当は見つかってないだけで25人殺してる。そしてここに偶然やってくる日本人夫婦を殺して27人に達したら、幼なじみのユンジンが生き返る…それを見届けて欲しい」と言い出して、果たしてこの男が言ってることは本当なのか、本当にただの狂人なのか…

恐ろし度:★★★☆☆
リアル度:★★★☆☆
愚か者度:★★★★☆
ヤバい度:★★★★★
お笑い度:★★★★☆

「ノロイ」や「コワすぎシリーズ」でその名を馳せた日本のPOV映画の先駆者・白石晃士監督の作品の中でも屈指の最高傑作といえる完成度。廃マンションの一室だけで話が進む閉塞感の中で異常者の狂気と怖さが爆発して、凄まじい緊迫感を86分全編をワンカット長回しで展開していきます。さらにPOVなのに恐ろしいほどキレイにフィナーレを迎えるのもGOOD中のGOOD。絶対に予想を裏切りつつも期待を裏切りません。

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3・戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-04 真相!トイレの花子さん(2012年・日本)

【あらすじ】
とある映像制作会社の元に届いた、「トイレの花子さん」を撮影したという親友同士からの映像。ディレクターの工藤はアシスタントとともに霊能力者の力を借り、廃校に向かうのだが、とんでもないことに巻き込まれてしまう…

恐ろし度:★★★★☆
リアル度:★★☆☆☆
愚か者度:★★★☆☆
ヤバい度:★★★★★
お笑い度:★★★★★

こちらも白石晃士監督のオリジナルビデオ作品シリーズで、全作総じて面白いのですが、その中でもこの「トイレの花子さん編」が色褪せない屈指の傑作になっているのでこのカテゴリで紹介させていただきます。ただの花子さん退治の話かと思ったら大間違い、時空が歪む、次元を超えると想像を超える大スペクタクル巨編となっています。初見の衝撃は今も忘れられません…。コワすぎシリーズはとにかく主人公の工藤が最高に魅力的なキャラクターで、どんな怪異にもバットや拳で解決するのが痛快です。

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雰囲気がすごい、謎すぎる怪作3選

1・スペクターズ(2013年・アメリカ)

【あらすじ】
小さな田舎町で洪水騒ぎが起こり、避難勧告が出された。この町以外にも世界中で何かしらの災害が同時に起こっているらしい。そんな中、山奥でドラッグパーティーに明け暮れていた若者たちがただならぬ雰囲気を感じて町へ降りてくるが、住民は町から消え失せていた。満月は月食で欠け、さらにカラスが空中で燃えながら落ちてくる。ようやく見つけた人影も何故か血だらけで意思疎通が一切できない。この町に一体何が起きているのか…。

恐ろし度:★☆☆☆☆
リアル度:★★☆☆☆
愚か者度:★★★★☆
ヤバい度:★★☆☆☆
お笑い度:★☆☆☆☆

こちらは評判はすこぶる悪いのですが、「POV雰囲気大賞」を送りたいほどに雰囲気作りが素晴らしい作品でした。様々な超常現象が周りで起こってるのに、詳細は一切分からずじまい。無人の町、燃えながら落ちてくるカラス、特定の人物に近づくと異常にノイズやバグが入る演出、古臭い画質と形容できない全体を包みこむ雰囲気は今までみたPOVの中でも群を抜いたクオリティです。78分で駆け抜けてエンドクレジットも含めて最高の雰囲気でした。何一つ真相はわかりませんが…。

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2・キャビン・イン・ザ・ウッズ(2012年・アメリカ)

【あらすじ】
マイクのもとに1本の映像データが送られてきた。中身は親友のクリスが薬物依存になってる映像と、居場所が記された地図。マイクはクリスがいる森の小屋に行き、彼と滞在してヤク抜きを手伝ってあげることに。手錠で拘束して様々な話をしていたのだが、実はクリスはあの映像を送った記憶も手段も一切無いという。一体誰があの映像を撮ったのか?そして怪現象も巻き起こる…な話

恐ろし度:★☆☆☆☆
リアル度:★★★☆☆
愚か者度:★★☆☆☆
ヤバい度:★☆☆☆☆
お笑い度:★☆☆☆☆

かなりシュールで静かに展開していく本作だけだと表面的には退屈という評価を下されてしまいそうですが、世界観を共有する続編である「アルカディア」とワンセットで見ると深みが増す独特な構成となっています。

キャストはほぼ二人、小屋の中の会話劇が大半、全然予算のなさそうな感じもありながら、小屋の周りで偶然拾ったビデオテープを再生すると自分たちの少し前の様子が映像として収められていることに気づき、どんどん見つかる映像媒体を再生していくとその差が徐々に縮まっていき、挙句の果てにリアルタイムと映像が追いついてくる!という大いなる怪異が薄ら怖くて良いですよ。

厳密に言えばこちらはPOVではないのですが「映像で謎の啓示が送られてくる」というギミックと、主役マイクの後ろについていくようなカメラワーク、そして劇中で示唆される事象から私の解釈としては、ある意味でPOVという位置づけでこちらに入れさせてもらいました。映像の繋ぎ目で入るノイズにもそれらしき意味を見いだせたりして、低予算ながらこの辺りの構成はなかなか匠の技が光るな〜と思いました。「アルカディア」とセットで見ましょう。

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3・コリアタウン殺人事件(2020年・アメリカ?)

【あらすじ】
アメリカ、コリアタウンで殺人事件が発生する。この事件に興味を持ったカメラマンの男は現場周辺に聞き込みを行うなど独自の調査を進めその模様を映像に収めていたのだが、やがて狂信的にその事件に深入りするようになっていき、精神状態が不安定になっていく。果たして男の身に何が起こったのだろうか?な話

恐ろし度:★★★☆☆
リアル度:★★★☆☆
愚か者度:★★★☆☆
ヤバい度:★★★★☆
お笑い度:★☆☆☆☆

2020年7月に突如アマプラに配信されインターネットの映画好きがざわついたインディーズPOVで、監督や主演の情報が「わからない(Unknown)」になっている背筋がぞわぞわする奇作。この手法お得意の謎が謎を呼ぶ構成かつ、具体的に何が起こるっていうわけでもないストーリーなんですが、オープニングからラストまでとにかく不気味で作り込みも緻密。男が少しずつ狂っていく過程を丁寧に描き、陰謀論的な妄想に取り憑かれつつも真実はどこへ…とモヤモヤが残る異常性が際立っています。

さらにこの殺人事件は実際に起きており、海外の掲示板では公開1年前にこの事件を調べるカメラマンの男の情報が残されているというのも不気味です。おそらくそういう戦略だとは思いますが、極端に情報を遮断したり現実世界とリンクする薄気味悪さが素晴らしい作品でした(実在の事件をベースにしたものより謎の怪作という色味が強いのでこちらのカテゴリで紹介しました)。

 

 

頭のおかしい奴が堪能できる狂作3選

1・クリープ(2015・アメリカ)

【あらすじ】
売れない映像作家が、とある男からの依頼を受ける。なんでもその男ジョセフは余命いくばくもなく、いずれ産まれてくる子どもに会うことが出来ないかもしれないからまだ動けるうちに自分のありのままの姿を撮影してくれないか、と。山奥の別荘で彼を撮影し続けるが、だんだん「こいつマジで気が狂っててやべー」ってなる話

恐ろし度:★★★☆☆
リアル度:★★☆☆☆
愚か者度:★★☆☆☆
ヤバい度:★★★★☆
お笑い度:★★★★☆

「人間が一番怖い系POVホラー」。NETFLIXで見れます。キャストも二人しかいないし見るからに低予算だけど、シンプルな怖さが突き詰められててよかったです。1時間20分ぐらいでサクッと終わる構成も忙しい人にも最適。メインとなる登場人物のジョセフという男がマジでめちゃくちゃ気持ち悪くて最高です。初めて会った映像作家の男と森を歩いて、岩に二人のイニシャルを書き込んでハートで囲む程度にはキモい…。

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↑これは違うクリープ

 

2・リクシャー(2016・インド)

【あらすじ】
インド。三輪タクシー「リクシャー」を転がすナラヤンは映画監督に憧れ、自分のドキュメンタリー映画を作るために友人に密着取材を行わせた。しかし彼は性格が悪く全員からナメられており、貧しい出自で客には殴られ金を払わず逃げられ、思いを寄せる女にもウジ虫のような扱いを受ける。母にも「早よ結婚しろ!」と怒鳴られ続けた挙句、次第に彼の本性が浮かび上がる…な話

恐ろし度:★★★★☆
リアル度:★★★★☆
愚か者度:★★★★☆
ヤバい度:★★★★★
お笑い度:★★★☆☆

NETFLIXの、インド産POVモキュメンタリー。インドには一度行ったことがあって、日本の常識が通用しないヤバい空気感を実際に体験してるだけに、フェイクとは思えないリアリティ溢れる「本物のヤバさ」の表現が特段に素晴らしい逸品です。

最悪すぎる人間が見てらんないぐらい虐げられ、貧困や劣等感、そして人生の上手く行かなさがないまぜになって一人の男の狂気を強めていく過程は鬼気迫るものがありました。そもそも主役の男が全く笑えない下ネタでゲヘゲヘ笑ったり、運転中に犬を跳ね飛ばしたり、ストーカーまがいの行動を起こしたりととにかく最悪中の最悪なのが良いです。そこからさらなる凶行に及ぶとあっちゃもう誰にも手が付けられない…!この仕上がりが最高。

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3・スプリー(2020・アメリカ)

【あらすじ】
SNSで有名になりたいカートは様々な動画をUPしたり生配信したりするが、泣かず飛ばずのしょうもない日々を過ごしていた。バズるためには…危険で刺激的な配信だ!!と目覚めた彼はライドシェアサービスの運転手となり、相乗りしてきた乗客を眠らせ殺すやばい配信を始める。次第にエスカレートしていく中で偶然SNSの有名インフルエンサーを乗せた彼は自分を売り込むが…な話

恐ろし度:★★★☆☆
リアル度:★★★☆☆
愚か者度:★★★★★
ヤバい度:★★★★★
お笑い度:★★☆☆☆

4月公開ですがオンライン試写にて見ました。「ストレンジャーシングス」のスティーブ役でその名を轟かせたジョー・キーリーが頭のおかしいサイコ野郎となり衝動的な殺人とその生配信を繰り返すスリラー。全編スマホの配信画面と車載カメラだけで作られてるのでジャンル的にはPOVというカテゴリでよいでしょう。

うっかり乗ってしまったが運の尽き!頭のおかしい男が無双状態で笑いながら人殺しを重ね、それを生配信して成り上がろうとする姿と、その凶行をスナック感覚でフェイクと思いながら閲覧し野次を飛ばす視聴者、この双方がまさに現代社会の闇と言わざるを得ない狂気!この辺の嫌〜な空気感が良かったです。こんな方法で有名になっても行き着く先に光は無いのが分かってるはずなのに、バズるために結果を見据えずに手段が狂っていく過程はホンマモンの狂(くるい)!

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さようなら

以上です。前述の通り好みが分かれるジャンルなので、気になったら見てみてくださいね。入門編としてホラーは「コンジアム」、「武器人間」あたりから始めてみてもよいかと思います。

敬具