みなさんは『憑依』という言葉を聞いて何を想像しますか?

 

死者を自らの身体に憑依させるイタコ。

悪魔が少女に憑依する映画エクソシストなど非現実的な現象を想像するかと思います。

 

しかし私たちは普段、オンラインゲームやチャットのアイコンなどで自分のアバター[分身]を作りそのキャラに自分を憑依させているのではないでしょうか。

自分の身体以外の入れ物としての自分に意識を持たせるという行為を、私たちはテクノロジーの進化と共に当たり前のように行っています。

 

そんなテクノロジーや憑依をテーマにした作品が山口県の山口情報芸術センターで行われているアート展『バニシング・メッシュ』内で展示されています。

 

 

OGP2

 

『アバターズ』と名付けられたこのインスタレーションは、メディアアーティストである菅野 創とyang02の共同制作作品で、電話・カラーコーン・石膏像・車などの大小様々な日常的オブジェクトが会場に配置されています。

 

そして、この作品のすごいところは、各オブジェクトにはマイコンやセンサー・カメラ・マイク・モーターが仕込まれていてインターネットを介することにより自分が無機物に憑依することが可能な所です。

 

特設サイト (※PCのみ) にアクセスして注意事項を確認して『同意して鑑賞するボタン』を押せば、あなたはもう無機物となり会場内に存在することが出来ます。

 

 

鏡

 

例えばこれは石膏像となって会場内を自由に移動している場面。

鏡に映っている自分(石膏像)を見ています。

 

ブラウザにはカメラから見ている映像と共にオブジェクトに違う操作ボタンが表示されるので対応するボタンをキーボードで押すことによってアクションを起こせます。

 

 

バルーン

 

これはバルーンとなって会場を上下している様子。

 

 

車

 

に憑依してワイパーを自由に動かしたり

 

 

照明520

 

自分が照明になって会場を好きな色で照らすこともできます。

 

 

iMAc

 

もちろん会場内には他のお客さんがいるのですが、会場にいる人は無機物が動いている様子を鑑賞しているだけなのにPCの前にいる自分は山口県にいる人と無機物として接していると思うと不思議な感覚に陥ります。

 

特に土日に憑依すると家族連れのお客さんが多いため会場にいる子供たちが興味津々でこちらに話しかけてくる様子を見ることができます。(オブジェクトにはマイクがついているので会場の音声も聞くことができる。)

 

 

プロジェクター

 

プロジェクターに憑依して左下のテキストボックスに文字を打つとコミュニケーションを取ることも可能。

 

また、黒電話に憑依するとPCに付いているマイクをアクティブにするかどうかの確認が表示され、選択次第では会場にいるお客さんと会話することもできます。

 

IoTに代表されるようにあらゆる物がネットワーク化され、人工知能が成熟しようとしている現在、自律性を持たない無機物である物たちが、意思を持った者となり世界を知覚し動き出した時、そこに立ち上がってくる新たな関係性を観察する作品です。 (作品解説より)

 

作品解説にもあるように、今は何でもIoT化されコーヒーメーカーですら使ったことがスマホに通知される時代です。

 

もしかしたらこの作品のように物たちが憑依される事なく自らの意志で動き出す未来はそう遠くはないのかもしれません。

 

 

『Avatars』特設サイト (※PCのみ) 

 

 

 

同じく菅野 創とyang02が過去に共同制作した『SENSELESS DRAWING BOT』という、自動で動くマシンが壁にグラフィティを描く、芸術から身体性を排除して無機物と人間との関係性について考えさせられる作品も最高にカッコイイです。

 

 

 

基本情報

 
『バニシング・メッシュ』
 
●開催日時
2017年2月18日(土)〜5月14日(日)
10:00〜19:00
 

●会場

〒753-0075 山口県山口市中園町7-7
 
●休館日
火曜日

 

●料金

入場無料

 

●詳細

バニシング・メッシュ|山口情報芸術センター[YCAM]