少年誌。文字通り少年向けの雑誌だ。少年ジャンプやコロコロコミック、きっと何かしら読んだことがあるだろう。

 その歴史は古く、明治時代にはすでに少年向けの雑誌が存在したという。「少年向けである」という点はいまも昔も変わらないが、その内容は時代に合わせて変化し続けている。

 

 さて、俺(ナ月です)は一冊の少年誌を手に入れた。きっと読者の皆さんは読んだことがないと思う。

 

 

 

 これだ。

 

『友の子い良』

 

 と書いてある。友の子い良? 変な名前!」「素敵! 子供が生まれたら友の子い良って名付ける!」と思われるかもしれないが待ってほしい。これは横書きを右から左へ読む時代の本。戦時中の少年誌『良い子の友』だ。戦時中、平成生まれの俺なんかは教科書や物語の中でしか知らない時代だ。その時代に実際に子供達が読んでいた雑誌がこれだ。

 

 では実際に見ていこう。

 

 

 

 

 裏。あの小学館から発行されていることがわかる。下段のクレヨンの広告がレトロで可愛い。

 

 

 

 そして上段の広告は西宮航空園なる施設の広告。

 

「アコガレノ セントウキバクゲキキニ ノレマス」

 

 すごい。戦時中ならではの広告だ。当時の子供たちはこれを見て親に連れてけとねだったのだろうか。

 よく見たらなんか一番上にもなんかすごいことが書いてある。

 

「ヘイタイサンニ マケヌヤウ ワタクシタチモ ガンバラウ」

 

 すごいな戦時中の少年誌、現代だったら「ライバルに差をつけろ!」とか書いてあるところが「兵隊に負けるな」だ。競う対象がすごい。

 

 ではいよいよ中を見ていこう。

 

 

いきなり見開きで戦車

 

(小学館『良い子の友 十一月號』P2-3より)

 

 ドジャーン、いきなり見開きでかなりハードなイラストと戦車を讃えるポエムが掲載されている。しょっぱなから容赦ない軍国教育。時代背景がよくわかる。

 

 

(小学館『良い子の友 十一月號』P5より)

 

 これは『鉱山の子供達』という読み物。鉱山で働く人々の様子やそこで暮らす子供達の様子を書いたお話だ。もう冒頭から「戦争に勝つためみんな一生懸命」という話をしていてすごい。我々が「生きる」とか「アイドルマスターで遊ぶ」とかそういう当たり前の次元に「戦争」がある時代だ。

 

 

 

 

(小学館『良い子の友 十一月號』P18-19より)

 

「なんでも食べる良い子供」という詩。好き嫌いせずになんでも食えよ、という食育のページだ。いつの時代も子供にはスクスク育って欲しいのが大人の願い。ではなぜスクスク育って欲しいのか。

 

 

(小学館『良い子の友 十一月號』P19より)

 

 お国に尽くすために決まっている。

 

 

(小学館『良い子の友 十一月號』P20より)

 

 これはお役立ち情報。空襲警報が発令されたらどうすれば良いかが書いてあるページだ。おそらく本書の中でも一番生活に密接だったページではないだろうか。柔らかなタッチのイラストなのになんだか生々しさを感じる。

 

 

(小学館『良い子の友 十一月號』P32より)

 

 これは戦況についてのコラムだ。戦時中の少年誌は子供にも今の戦況をゴリゴリに伝えていく。冒頭から最初に降伏したイタリアをボロクソに書いている。

 

 

(小学館『良い子の友 十一月號』P36より)

 

 もう本当にボロックソに書いている。そして結論は「イタリア抜けちゃったけどドイツも頑張ってるし、米・英を叩き潰すまで戦い抜こうな」というもの。内容こそプロパンガンダではあるが、子供向けに書かれていてめちゃめちゃわかりやすい。これより前や後の号だとどうなっているのか気になる。開戦から順番に読んでみたい。

 

少年誌だしもちろん漫画もある

 

(小学館『良い子の友 十一月號』P54より)

 

 少年誌といえば漫画、戦時中の少年誌にももちろん漫画は掲載されている。もちろん戦争モノだ。イラストが可愛い。

「空中および地底と協力、敵を撃滅する」

 空中はわかる。背後に描かれている戦闘機だろう。地底と協力ってなんだよ。ドリルを搭載した地底戦車でも出てくるのだろうか。

 

 

(小学館『良い子の友 十一月號』P55より)

 

 その通り、出てくる。

 

 

(小学館『良い子の友 十一月號』55Pより)

 

 なんてこった、掘り過ぎて海に落ちてしまったぞ。どうなっちまうんだ!

 

 

(小学館『良い子の友 十一月號』P55より)

 

 大丈夫だった。あとなんか落ちたとこにたまたまいた敵国の潜水艦にドリルで穴を空けた。

 

 

(小学館『良い子の友 十一月號』P56より)

 

 敵の潜水艦をドリルで沈めて陸に上がってみれば、なんか敵がドンチャン騒ぎ中だった。こうなったら奇襲するしかない。即落ち2コマみたいに奇襲成功。

 

 

 

(小学館『良い子の友 十一月號』P56より)

 

 いっぱい捕虜を捕えてやったぜ、というお話。

 いっぱい捕虜を捕えた時のセリフが「エライゾーッ」なのがなんか良い。現代でも使っていきたい。「エライゾーッ」

 

 

読者のイラストが戦時中ならでは

 

 個人的に本書で一番紹介したいのがこのページ。

 

(小学館『良い子の友 十一月號』P76より)

 

「お友達の描いた絵」のコーナーだ。おそらく読者のお友達が描いてくれた絵なのだろう。

 

 下段は縄跳びで遊ぶ女の子の絵だ。可愛い。

 そして上段の絵だ。見てこれ、タイトル。

 

「センシャ」

 

 すごい絵だ。戦車の上の鉢巻アンテナが特徴をよく捉えている。ガルパンで見たやつだ。知波単学園のやつだ。

 

 この二枚が並んでいるのがすごいよな。平成生まれの俺でもこのページを見るだけで、本当に当時は日常の中に戦争というものがあったのだなと理解できる。

 

 

 

 というわけで戦時中の少年誌だった。俺たちが知っている少年誌とはかなり違った。

 なんとなく、戦時中という時代が持つ迫力のような物を感じることができたのではないかと思う。子供向けにわかりやすく書かれているものだからこそ、ストレートにその迫力が伝わってきたのかもしれない。

 

 手に取る機会は少ないかもしれないが、こうした時代を感じられる読み物はめちゃめちゃ面白いのでぜひ見かけたら手にとってみて欲しい。