まんがライフMOMOが休刊した。

 

 これ以上、他に言うことがあるだろうか。あれからずっと泣いているのに。涙は出ずとも気持ちの上でメソメソしている。みんなの模範となるべき僕がこんな調子じゃいけないと思った。そんな時。

 

「それを書け!その気持ちをその通りに書けば、それがお前の小説だ」

 

 そんな啓示を受けたので書かせてもらう。あまつさえ稿料も頂く。

 

 10年近く前、僕は留年した。親を泣かせ、自身の経歴にも傷を付けた。

 

 そんなボロボロの僕を支えたのが4コマ雑誌だった。一冊300円程度で手に入る優しい世界を貪るように買い漁った。まんがライフ、まんがライフオリジナル、まんがタイム、まんがタイムオリジナル、まんがタイムスペシャル、そしてまんがライフMOMO。

 

 それら4コマ誌の中でもまんがライフMOMOは特に優しかった。舌の上でほんのりとろける甘さ。翌日に残らない程度で酔っぱらえた。

 

 冷凍イカのような目を持つ無口な女子高生が主人公の「森田さんは無口」。突然お金持ちになってしまった可愛い姉弟の物語「晴れのちシンデレラ」。毎回ねこが魚を食べるというオチで終わる「さかな&ねこ」。世界観がやけに壮大だった「イブ愛してる」。「おうちでごはん」。「ポヨポヨ観察日記」。「家政婦のエツ子さん」。「カギっこ」。「せんせいのお時間」。「奥さまはアイドル」。タイトルばかり羅列して、USJのE.T.みたいになってきた。

 

 では、何故こんなに素晴らしい雑誌が休刊になるのか。酷いじゃないか。僕がなんか悪いことしたか?した。していた。

 

 そう。これだけ世話になっておきながら僕は、社会人になった途端4コマ誌を買わなくなったのだ。4コマよりも優先すべき事が出来てしまった。情けない。僕ひとりが買わなくても千代に八千代に続くと信じていたのだ。甘えていた。これは何より僕の罪だ。この場を借りてお詫びしたって竹書房には届かない。竹書房だけに竹ショボーンって感じだ。むろん虚勢である。もし他人に目の前で「そりゃ残念ですね、竹書房だけに竹ショボーンですか?」と言われたら迷わずブン殴る。出来もしないことをやる。

 

 それでも休刊するタイミングに気づけたのは奇跡と言える。

 

 あの日、たまたま、何の気なしに書店の4コマ誌コーナーに立ち寄ったのだ。連載キャラクターが勢揃いしたMOMOの表紙を見て「お、豪華だな」と手に取るも、「15年の感謝を込めて」という文に嫌な汗が流れる。背表紙には「またね」の文字。またね?慌ててスマホを取り出し竹書房のサイトを確認する。休刊のお知らせ。唇がねじりドーナツのごとく曲がり、隙間からひゅっと息が漏れる。

 

 

 

 

 当然その最終号は即買った。

 

 しかしこれを読んでしまえば、もう会えない。竹書房が決めた以上、終わらせるのは僕の手ひとつだ。

 

 そう思えばどうしても誌面を開けず、未だビニールに包まれたまま。たまに目をやり、ため息をつく。きっと二度とそうなのだろう。

 

 同時に買った「物理さんで無双してたらモテモテになりました」1巻はバリバリ読んだ。

 

 

 

 

 

 

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