7年前、東京ジョイポリスという室内遊園地に行った。行列のできるアトラクションを乗り終え「次はどれに乗ろうか」なんて話をしながら歩いていた。
そこで見つけた、比較的落ち着いている3Fフロアにポツンと佇む、ダークチャペルという名のアトラクション。
室内型遊園地にありがちな、映画館のような部屋で3Dメガネを装備し、映像に合わせて椅子が上下に動いたりするものだった。
近くにはポスターがあり、その一文は今でも覚えている。
「ダークチャペル 衝撃の結末を目撃せよ!」
映像を観る時間など多くても5分くらいだろう。それで衝撃と言ってのけるほどの結末を作り上げたというのだろうか。
「これにしよう!」とみんなを引き連れ場内へ。暗くなり、3Dメガネ越しに映像が流れる――
主人公の神父が、悪い魔女にさらわれる。
神父は椅子に拘束され、さらに魔法で石にされる。
そして魔女は神父を殺すためのバケモノを召喚するが、そのバケモノはポケモンでズルした時みたいに言うことを聞かない。
すると神父のネックレスが光り、石化が解かれ、神父がバケモノを消滅させる――
バケモノを退治した神父は魔女に言う
「お前はじっくり時間をかけて改心させてやる」
魔女は「離せ!」と言い、平手打ちをしようとするがその腕も掴まれる。
向かい合う二人、そして……
2人はキスをした。
は?
魔女の「んっ……//」という声と共に映像は終わり、場内に明かりが灯る。
キャストのお姉さんから「ありがとうございました~」とアナウンスが入る。
「は?」「終わり?」「え?」「なんで?」「どうして?」
観客達は口々にその場で感想を述べる。俺も全く同じ意見だ。
衝撃のラストだった。確かにそうだった。衝撃は受けた。
でも違うじゃん。そういうのじゃないじゃん。衝撃のあと疑問が残っちゃダメじゃん。じっくり時間をかけて改心の意味が変わってくるじゃん。
何か見落としていたのか。最後のキスに繋がる伏線を、布石を。
その後も様々なアトラクションに乗りながら、頭にはずっとダークチャペルがあった。
「もう1回観よう」
普通に嫌がる友人たちを説き伏せ、もう1度3Dメガネをつけてダークチャペルに乗り込んだ。
そして同じストーリーが進み、やはり何も布石はなく、バケモノを召喚して殺そうとしてきた魔女にいきなりキスをする衝撃のラストを迎えた。前に座っていたギャルが大きな声で「えええええ!!」と言った。
2回見ても同じだった。動機づけも伏線も無かった。衝撃だけがあった。一緒にラーメンを食べていた友達が突然ゲロを吐いた時と同じ種類の衝撃。なんだって突然だから驚く。
なんとなくわかっている別れに悲しみこそあれ驚きは無いが、いきなり別れを告げられたら驚くだろう。
日常になっていたものが急に変化する。受け入れる準備が出来ていない。理由がわからないまま結論だけを浴び、より一層驚く。突然は少しだけ不親切なのかもしれない。
その日、島田紳助が芸能界引退を発表した。