オモコロ杯2020

結果発表

オモコロ杯2020、過去最高の533通もの応募をいただきました。作品をお送りいただいた皆様、誠にありがとうございます。533という数は、みずほ銀行の自由が丘支店の番号と同じです。みずほ銀行の自由が丘支店の店番と同じ数だけの創作に触れられるというのは、自分にとってもたいへん楽しい経験でした。
こちらで紹介できるのはほんの一部となりますが、結果そのものだけでなく寄せられた作品自体もぜひお楽しみいただければと思います。それではオモコロ杯2020の、審査結果を発表させていただきます! オモコロ編集長原宿

最優秀賞

もっともよかった1作品に与えられる本イベントの最高賞。

賞品:Amazon ギフト券10万円分
100日間おなじ商品を買い続けることでコンビニ店員からあだ名をつけられるか。
作:与謝野

審査員コメント
原宿: タイトルの通り、「コンビニで印象的なお客は、バイトに陰であだ名をつけられるのか?」というあるあるから始まり、なんと100日間をかけて同じものを買い続けるという周到な記事で度肝を抜かれました。行動力だけでなく観察力も高く、店員さんとのやりとり含めた100日間の過程をも面白く描写しており、小さな気付きとコミュニケーションから未知の大海に漕ぎ出す快感を、読み手も一緒に味わうことができます。素晴らしい記事!
ARuFa: すごい!!!!!!!!!!!!!!!!!
こういう長期的な企画って、自分が苦労した故にディテールまでこだわってメチャクチャ長い記事になったり、個人的な想いを優先して読者を置いてけぼりにしてしまったりする方が多いのですが、この方は素晴らしいですね!!
要点をまとめつつ、ずっと読者を惹きつけ続ける文章なので、写真が少なくてもスイスイ読めました。実際に起きた現象と、それを受けた自分の感想のバランスも丁度良いので、まるで追体験しているような感覚になりました!
あと、こたつが我が家のと同じなのですが、アイリスオーヤマのこたつ(5,980円)を使っている方に悪い人はいないらしいので、この方もきっと素晴らしい人格者に違いありません。
恐山: 人間を相手にしたゲリラ実験レポートって、やり方によっては不遜な感じになってしまうこともあると思います。でも、この記事はとても誠実で、淡々としてるのにスリリングでおもしろかったです! 「100日連続でビスコを買う」という、手間も出費もかなり大きいチャレンジにも関わらず平熱の温度で読ませてくれました。自らを異常な状況に放り込みつつ、その様子を淡々と記録する。それも冷たい感じじゃなくて、自分の細かな感情の動きも含めて記録しているところが、とてもよかったです。
凸ノ: 思い付きそうなことでも「実際にやる」となると難しいです。 更に「面白くやる」となるともっともっと難しいです。 それを淡々とやり切る胆力にまず唸りました。
買い方に個性を出してどうなるかを試すという工夫があるのが嬉しい。 何より登場人物たちが皆良く、「けだるげな女性」「背の高い丁寧な女性」「ギバちゃん」「お姐さん」「副店長」…読み終わった後なんだか全員をちょっと好きな自分がいました。 ビスコ公式アカウント(あるの?)も喜ばれるのではないでしょうか。お見事でした。
岡田: まずタイトルの「やられた」感で一気に惹きつけられました。そして中身も最高。100日間もの記録というのはともすればダラけた展開になってしまいそうですが、店員との距離がじりじり縮まっていく様子をリアルに描く書き味が素晴らしく、次どうなるの!?とかなり前のめりに読んでしまいました。
検証ルールも3種類のコンビニで買う、こちらから声をかけてはいけない、などめちゃくちゃストイックなのに、それを主張しすぎずにさらりと書いてしまうあたり、この方の人柄がにじみ出ていて良かったです。コンビニという日常の中にもこんなドラマが潜んでいるんだな〜と、最後はなぜかじんとしてしまいました。ビスコ買お。
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金賞(個人賞)

最優秀賞には一歩届かなかったけど太鼓判を押せる作品にお送りする賞です。

賞品:各審査員が選んだ気の利いた物
鏡を鳴らす
作:接着髄

審査員コメント
原宿: 少し毛色の違う作品なのですが、個人賞ということで好きなのを選んでもいいだろうと半ばエゴイスティックな気持ちでこちらを選ばせていただきます。“よく冷えた水を鏡の表面に垂らすと音が発生する「冷鏡鳴(れいきょうめい)」という現象の紹介”とあるんですが、無いんですねそんな現象は。動画も「ちょうどありそうなライン」というのをうまく突いてるなという印象で面白く、接着髄という投稿者名も普通じゃない感じがして、気がつけば心を掴まれていました。
なんか理科の実験っぽかったので、顕微鏡をお送りしたいと思います。 賞品:顕微鏡
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アドトラックを手作りしてみよう
作:メイシー

審査員コメント
恐山: ただただおもしろかったー! トラックのサイズを泉こなたで例えるあたりに妙なシンパシーを感じました(泉こなたの身長=142cm)。アドトラックは最近よく注目されてますが、そこから「ほんとにトラックを借りてきてなんかやってみよ」と思って実行できるの、すごいです。あんなでっかい金属の構造体を手配するの、考えただけでダルすぎるのに……。トラックを走らせたあと定点で観測するGIFなども「こういうのが見たいんだよ!」という需要を満たしてくれました。
おばあちゃんが畑をやらないことで不足する栄養を補えそうな、ホテルオークラのスープセットをお送りします。賞品:ホテルオークラのスープセット
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【検証】ブラック・マジシャン・ガールが遊戯王で1番エッチなわけねぇだろ!!!
作:ざわ

審査員コメント
ARuFa: 題材はアホなのですが、とにかくすごい気合が入っていて素晴らしかったです! 小ネタが面白いのと、記事のリズムが良くて読みやすいですね。あとちゃんとカードを調査して、表を作って、街頭でインタビューして……という手間をかけているのが好印象でした。 そして、街頭インタビュー時には通行人にボカシをかけるなどの配慮も良いですね!
個人的には、急に裸になったときだけ窓の外にモザイクをかけた理由を知りたいです。(股間を露出した瞬間にリテラシーが上がることは本来起こり得ないから)
個人賞の賞品ですが、見たところお部屋が殺風景な印象を受けたので、お部屋を華やかにするために、『世界で一番かっこいいタペストリー(2m30cm)』をお送りさせていただきます。壁にかければ窓のモザイク処理をする必要もないかと。
あと、お部屋にテーブルが無さそうだったので、テーブルもお送りさせていただきますね。
賞品:世界で一番かっこいいタペストリー

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りょうくんグルメの文体を自動でもとに戻すやつを作りました
作:フスマ

審査員コメント
岡田: 非常に刺激的な記事でした。というかギリギリを攻めていて正直選ぶのが怖かったのですが、元ネタの『りょうくんグルメ』さんにはきちんと許可をとったとのことと、やはり面白さがその怖さを余裕で上回ってきたので、勇気を持って選出させていただきました。
根底にある意味で「悪」な部分が秘められていて、それを上手く昇華し、1つの作品に仕立てた手法がすごい!時折挟まれる小ネタも面白くて、一気に最後まで読んでしまいました。言葉の脚色を剥がして本質を残すとどうなるのか?を機械的な手法で検証するというのはライターにとっても興味深く、同時に恐ろしいテーマでした。プログラミングを活用した他の記事も読んでみたいです。 これからも本質とスイーツを愛して欲しいので、マカロン35個セットをお送りします。 賞品:マカロン35個セット
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変身
作:ディッくん

審査員コメント
凸ノ: ワンアイディアというか序盤にどう笑わせようとしてくる漫画なのかが分かるのに まんまとずっと面白い! 下らなさが最高。
律儀にずっと怯えてる主人公がバカで読者が思わずツッコんでしまう構造なので ギャグがどれだけくどくても読み味がくどくならないのは感心しました。 ワンアイディアものなのでオチを決めるのは難しかったと思うのですが、ここにもセンスを感じました。 普通思い付かないってこれは… こういう通り魔的な漫画を今後ももっと発表して欲しいです。
漫画が良い肉に変わる快感を知ってほしいので、高級肉をお送りします。 賞品:高級肉
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銀賞

すごく面白かったけどもう一声!惜しい!という作品にお送りする賞です。

大阪守口市にしかない犬糞看板を集めました
作:パスカ

「そんなの集めて何になるの?」というものを収集してこそ路上観察といった趣がありますが、その中でもこの言葉に着目したのはたちが悪くて素敵でした。(凸ノ)
「犬糞一掃作戦」というワードがあまりに強すぎて、読んでる間ずっと笑ってました。(岡田)
転職したいので『ビデオレジュメ』を作って、プロに見てもらった。
作:加味條ジェイク

海外には自己PRを動画で作るという文化があるんですね。まずそのことが未知だったので、「面白い!」と思いました。作り始めまでがもう少し早い方が、よりスマートな記事になりそうです。(原宿)
なるほど、そういうのがあるんだ…という学びと、ふざけ方のバランスが良いなと思いました。コミュ力高い。というか普通に優秀な人では!?(凸ノ)
僕を救った大切な友達「ケロケロベー」は「ヒポポ」だった。
作:大塚拓馬

子供の頃に自分を救っていた幻想に、大人になってもう一度出会うという「探偵ナイトスクープ」味のあるノスタルジックなお話で、とても共感できました。(原宿)
鼻の奥がツンと来る感じの、つまり良い話でした。こういう子供時代の非常にリアルな体験、誰かの思い出に触れられるのは楽しいですね。(凸ノ)
屋根裏で猫を見つけて、雨降りの日に釣りをした話
作:イチジロ

文章、立体物、画像の組み合わせで、独特の世界観を不思議な読み味で楽しめました。こういう形の幻想的なショートショートが、もっと増えるといいですね。(凸ノ)
幻想的で美しい。まるで絵本を読んだみたいな読後感で、世界観の作り方が見事でした。(岡田)
誕生日にまつわる父の話
作:ゆうすけ

父親が言ってた「うちの家族は誕生日が“12”という数字に関連してる」という話を、数学的論理で打ち砕く(なぜ)というようなお話なのですが、とらなくていい揚げ足をとってしまう快感がありました。(原宿)
こういう「誰かにかかっている魔法を解いてしまう」活動って、性格が悪くて個人的に好きです。(凸ノ)
歴史ある武家屋敷街にあった不思議な「マダガスカル温泉」。遠い異国に魅せられた野村さんの人生
作:横田ちえ

知らない人の知らない人生ですが、波乱万丈をまとめるのが非常に上手くて興味を持って読めました。抑制の効いた文章でとても良いです。(凸ノ)
シンプルに大好きです。野村さんの人生に思いを馳せながら何度も読み返しました。(岡田)

銅賞

なんかわからんけど未来を感じるあなたへお送りする賞です。

俺が考えた工作『釘化』に挑戦した結果、短い野球人生に幕を閉じた。
作:アエガワ
「This is a pen」と言ってみたくて勝負してみた
作:バーチャル炊飯器
タイ・チャンタブリでの宝石買い付け 〜 日本人が知らない色石のメッカ
作:岡部達也
その辺のカップ焼きそばを、僕なりに本気でレビューしてみる
作:tdk
ちびまるこのYoutubeチャンネル
作:ちびまるこ
余ってしまった土地4
作:空き地研究
コケにしないで~地衣類オフを開催した話~
作:佐野あきお
ベンチの会議室
作:カジ
久しぶりに「髻ウ讌ス髑題ウ」したら、「莠コ髢薙↓驕ュ驕」した話
作:天竜川ナコン
気を操る整体師に通っていた話
作:モモセブン
プレッツェルに最も適した平仮名は本当に「め」なのか検証しました
作:湖西しーた
【検証】バリ島のスパのセラピストって握力最強なんじゃね?
作:バリミカ
自作のベリベリベスト!
作:水野ひらおよぎ
白髪マジで三千丈
作:滝川治助
オモコロの記事を自動生成する試み
作:小松 悠理
都会の日常
作:都会
オリジナルのストロング系チューハイを作って飲んでみた
作:タカノ
サイコクラッシャーで出張に行きたい
作:mann
アオアシのアシト君を100回描いて一番アシト君っぽい絵をAIに決めてもらう
作:立川豊
バニラヨーグルトコミュニティへようこそ
作:水筒
回復ポッドを自作して、労働の疲れを癒してみた
作:北山
幽谷霧子は焼け落ちた俺たちの翼にも「さん」をつけるか
作:佐藤タカハシ
勇者になりたいから宝箱を作った
作:かずひ子
なんか見えた?
作:メカと渓谷
自宅を「電脳空間」化できるアイテムを作りました
作:damin
元気な4コマ漫画
作:犬飼のりを
内懐
作:朝ボラ毛
魚の4コマまとめ
作:ニョペ茄子

大会総括

見事に単独優勝を果たした与謝野さまを初めとして、「記事、漫画、動画、面白ければなんでもアリ」というふわっとしたコンセプトの大会に作品をお送りいただいた皆様、本当にありがとうございます。どれも豊穣な可能性を感じさせる作品で、たいへん楽しませていただきました。

過去大会との印象の違いについて言うと、2020は動画の作品がかなり多くなってきたなという感じがします。オモコロも最近になってYouTubeチャンネルを頑張り始めましたが、今後のWebメディアの表現においても「写真とテキスト」というフォーマットに限らない表現手段はどんどん活発になっていきそうで、そんな中でもオモコロでは古き良き「しょうもない記事」という文化を残していけるよう、今後もくだらないことをたくさん考えていきたいと思います。

あとはこちらからオススメさせていただいたのもありますが、noteを使っている人もかなり多かったですね。HPやブログの代わりとして、身の回りでもnoteでちょっとした日記を書き始める人なども増えている印象で、こうして色んな人の書いた文章がたくさん供給されるという現象は、20年前ほどの日記系サイト、テキストサイトブームの頃を彷彿とさせます。noteでウケた方には、ぜひオモコロでも何か書いていただきたい、そんな気持ちで次回のオモコロ杯にも向かっていきたいと思います。これまで冬にやることが多かったので、次回は夏にやりたいという気持ちです。

オモコロ編集長原宿

審査員紹介

原宿
オモコロ編集長 / 大会委員長

オモコロの編集長を8年ぐらいやっている人。それ以外に特に目立った実績はないが、味のりとジャイアントカプリコが好き。

ARuFa
オモコロ編集部 / ライター

顔を目線で隠し続けているライター。手間暇をかけた奇行に定評がある。

ダ・ヴィンチ・恐山
オモコロ編集部 / 小説家

奇妙な仮面を着け続けているライター。「品田遊」という名義で小説家としても活動する。予防接種を受けた後に支払いを忘れて帰宅する「打ち逃げ」をして看護師に怒られた。

凸ノ
オモコロライター / 漫画家

大阪府出身のジャンプ作家。第一回のオモコロ杯で優秀賞を受賞後に上京し、「アリスと太陽」で週刊ジャンプデビュー。怪談ライブなどにも精力的に参戦。将来の夢は吉高由里子さんと鳥貴族で飲むこと。

岡田 悠
オモコロライター

1988年兵庫県生まれ。副業で旅行記やエッセイを執筆。第6回のオモコロ杯で、noteで書いた「近所の寿司屋のクーポンを記録し続けて3年が経った」を応募して優勝。魚がし日本一から寿司食べ放題のクーポンをもらう。好きな会計用語は旅費交通費。