「早く、こっちに隠れて」

「なんで建物の中なのに、当然みたいに████があるの?」

「ちょっと待って、こんな道を███に乗って行くんですか?

「いったん二手に分かれましょう」

「ん、どうしたんですか……あれ」

「うわあああああああ」

 


 

今回は、ホラーコンテンツのレポート記事である。

 

記事内でホラー小説的表現を用いることはないが、

紹介するのは本当に怖いホラーイベントなので、

その点はご了承願いたい。

 

知っている方は多いと思うが、

以前、恐山さんが自身のラジオで上海旅行に行った旨を語っていた。

 

 

 

この旅行の目玉であった「UMEPLAY(ユーミープレイ)」のホラーエンタメについて、

私もレポート記事という形で感想を書いていく。

 

宿泊時、初対面の煮ル果実さんと二泊の相部屋だった

 

理由はひとつ。

2025年に体験したあらゆるエンタメの中で最も面白かったからだ。

 

どころか、これまでの人生で体験したものの中でも有数である。

少なくとも、これまで体験したホラーイベントのベスト5のうち、過半数はあの場所で更新された

 

二か月ほどが経ち、体験直後よりずっと冷静になった今もその感想に齟齬がないため、こうして筆を執った次第である。

 

なお詳細は後述するが、今から感想を書くコンテンツはすべてが本当に怖いし、あらゆる意味で体験難易度が高い

 

普段、私が執筆するホラーコンテンツなどを楽しんでくださっている方の中で、この体験を十分に楽しめる方は、好意的に見積もって二割ほどだろう。

但し、その二割には絶対に届けられなければならない体験だと確信している。

 

私たちが二泊三日の中で体験したUMEPLAYのコンテンツはざっと七つ。

 

その中でも特に印象に残ったものを抜粋して紹介しつつ、いま上海を熱狂させているこの体験がどういうものなのかを、

オモコロライターというよりは「『行方不明展』『恐怖心展』などを制作したホラー作家」の視点から紹介していくことにする。

 

進行上、多少のネタバレや、装飾的な表現も含まれる。

しかし、この程度の文章で「あの」体験が損なわれたり、実物よりハードルが上がりすぎたりすることはまず無いので、一旦このまま読んでいってほしい。

 

そもそも「UMEPLAY」とは

公式サイト 上に不穏な何かが見える

 

中国首支用“实景”搭建虚拟游戏世界的执行队伍

(「実景」に仮想ゲーム世界を構築する中国初の制作チーム)

(公式サイトより引用・抄訳)

 

中国を拠点に、多数のイベントを提供している創作集団のブランド(レーベル)名。

そして、彼らが制作するものの総称である。

 

上海現地で撮影した、複合施設の中に在るUMEPLAYの一店舗 妖しくネオンが光る

 

それぞれの公演は、多くの場合で合計百二十分ほどの体験時間を要する。

四~六名ほどの体験者に対して二~三名程度の演者がつきっきりで随伴し(この時点でとんでもない)、体験者はひとつの建物のフロアをほぼ貸切状態で使用する

 

なお、日本語話者でUMEPLAYのコンテンツを体験しており、日本語の感想記事を上げている例は、本稿執筆時点だとそれほど多くない。

 

肌感覚だが、そもそも日本人でこのコンテンツを経験している人自体が、まだ三桁台くらいに収まっている可能性も高いのではないかと思う。

四桁は恐らくないだろう。

 

体験しようにも、そもそも「日本語版」がないのだし。

(私たちは現地の通訳の方を雇って同行してもらった)

 

そんなエンタメなので、「UMEPLAYの体験」を一語で言い表せる日本語は、まだ存在しない

 

日本で言うところの「お化け屋敷」「イマーシブ」「体験型エンタメ」と言った概念に近いのかもしれないが、これらの日本語に先行する文化的イメージでUMEPLAYを捉えると、確実に不幸な誤解を生むだろう。

見てもらうのが一番早い。

 

体験施設の受付(公式微信より引用) 実際この場にいると緊張感が凄い

 

 「それでは、こちらをどうぞ」

「これは──」

VHSテープですかね」

 

これらひとつひとつに「実景」が読み込まれている

 

店舗によって細部は異なるものの、すべての公演は、こういった受付フロアで一本のビデオテープを渡されるところから始まる。

 

このビデオテープを入口のドアに挿入することで、テープに記録された「空間」がドアの向こうに読み込まれ、摩訶不思議な作品世界を体験できる──という趣向なのだ。

 

私たちは少なからぬ期待と緊張を胸に、ひとつめの扉を開けた。

 

《INSANE(インセイン)》

年齢制限は「16+」

 

UMEPLAYの出世作であり代表作といえる、最もクラシカルな公演である。

 

あらすじ

 

数年前の火災により廃墟となった洋館。

嘗ての居住者であった夫婦の幽霊が現れる、果ては人を喰う怪物が現れるなど、その家には様々な怖ろしい噂が囁かれていた。

体験者は、廃墟写真を撮影するため、その家に潜入するのだが……。

 

受付の方に見送られ、

エレベータの扉が開く。

そこには──

 

「え?」

 

「民家」が広がっていた。

 

民家のセットというか、「民家」としか思えなかった。

先程、雑居ビルの中に在る、近未来的な構造の受付を通ったはずなのに。

 

あの敷地の十倍はくだらない規模の、洋風の廃墟が「そのまま」存在していたのである。

 

なお、UMEPLAYの体験ルールは極めて明快である。

ここで体験者がしなければならない行動は二つ。

 

①暗くなったら動かない。

②明るくなったら、光のある方へ進む。

 

たったこれだけ。

謎解きも、こちらが特別に演技する必要のある場面も、特に存在しない。

 

「どういうこと?」

「あ、あっちが明るくなった」

「……とりあえず進みましょうか」

「なんか、寒くないですか?」

※気温も湿度も匂いも、全公演の全フロアで都度ストーリー用に調整されている

 

私たちは恐る恐る、

とある家族が住んでいたという荒廃した廃墟に足を踏み入れた。

 

ここからの体験は、掻い摘んで紹介しよう。

 

「あれ、電気が消えた」

「なんかこっちに近付いてくる足音が聞こえ──」

(本当に怖い時特有の喉が潰れた絶叫)

「え、なんですか?」

「嘘でしょ、足掴まれた

「え、どこですか?」

「逃げないと──」

「いま消灯してるから、動けないんだよ」

「で、でも、何かいるんですよね? 何処に──」

「やばい、本当に照度がゼロだから何も見えない」

 

目を閉じても開けても視界が全く変わらない本当の暗黒の中で、私はただ嵐が過ぎ去るのを待っていた。

 

私に言わせてもらえば──

UMEPLAYの体験は、劇薬である。

 

怪異は容赦なく私たちに触れてくる。

※多くのお化け屋敷では基本的に禁忌とされる

 

「消灯」したときは、一生目が慣れない暗闇に放り出される。

※多くの体験型イベントではそのレベルの暗室など作られない

 

突然に自分たちがいる場所が物理的に破壊されるなど日常茶飯事だ。

※多くのイマーシブコンテンツでは建物が物理的に破壊されてはいけない

 

私のような人間が制作するタイプのエンタメにおいてはタブーにすらなりえる演出の三段階上を、軽々と超えてくる。

 

「いったん二手に分かれましょう」

「早く、こっちに隠れて」

「ちょっと待って、こんな道を███に乗って行くんですか?

「あ、もういっこのチームが戻ってきた」

「どうでしたか?」

「え、なんでそんな青い顔してるんですか」

「──同行していた調査隊の人が。一瞬暗転した次の瞬間、宙に浮いて█████してて

「え、どういうこと?」

「分かりません。本当に瞬きした次の瞬間だったんですよ。その直前まで普通に雑談してたのに」

「どうしよう、通訳さんが先頭のチームに行きたくないって、震えながら」

「それは別の問題じゃないですか?」

 

中国の「変面」を御存じだろうか。

服の袖で顔が隠れる一瞬のうちに、次々と面が変わっていく伝統芸能。

 

あれが「大道具」「人間」果ては「空間」の単位で起こる、と思っていただければ実態に少し近くなる。

 

瞬きの間に人が瞬間移動しているとか、

行って戻ったら建物の構造が変わっているとか、

そのくらいのことは導入のちょっとしたジャブぐらいの感覚で起こる。

 

普通クライマックスのシーンに大ギミックとして持ってくるレベルの空間演出が、五分に一回のペースで飛んでくる

 

そんな体験が、致死量のジャンプスケアと共に九十分から百二十分休憩なしで続く

 

圧倒的な物量と技術と力業からなる演出で、脳の処理能力を大幅に逸脱した体験を連打される。

 

そういう劇薬である。

 

単なるイメージビジュアルだと思っていたこれが「本当」だとは思わなかった

 

大事なのは、それらの演出が単なる飛び道具に終始していないことである。

勘違いされがちだが、ジャンプスケアは誰にでも真似できる簡単な技術ではなく、限られたものにしか使いこなせない高等技術だ。

 

ショー型催眠における驚愕法のようなもので、視線誘導や意識の空白の作り方を少しでも間違えると、冷められるどころか、怒りを覚えられる可能性すらある。

 

恐らく接触などの縛りがないことも関係しているのだろう。

ちょうど視線を外したタイミング

少し肩の力が抜けたタイミング

空気が弛緩するタイミングを巧妙に狙って、

「手段としての」ジャンプスケアを的確に撃ってくる。

 

「うわあああああああ」

 

そんな約二時間の体験ののち、何とか全員がぎりぎり五体満足で脱出した。

 

「……凄かったですね。他に言葉が出ないというか」

「見送ってくれた演者の方にも『エクセレント』しか言えなかった」

「それにしても、『あの家』の家族──」

「うん」

「きっと彼ら自体は、ただ██████だけなんでしょうね」

「そうですね」

 

そんな会話をしながら、私たちは受付までの帰途に着いた。

 

これが、最も私が惹かれたポイントである。

あれだけのことをされたのに、最終的な感想は「とんでもないドラマを観た」だったのだ。

これは全公演に言えることだが、エンディング/エンドロールの演出が突出して練られていた

 

先程のような導入と演出で始まった体験が、最終的には「お化けが怖い」ではなく、壮大な群像劇と人間ドラマへの感動に収束していく。

 

脅かせることが目的なのではなく、「読後感」の爪痕をしっかりと残す。

 

かなり絶妙なバランスで成り立っているエンタメであった。

 

《ABEILLE(アベイル)》

続いて、こちらの演目。

こちらは先ほどのゴシックな雰囲気を纏うホラーとは異なる、ある種の史実改変SFである。

 

フランスの大手化粧品メーカーとのコラボで制作された公演らしく、嗅覚面や味覚面の演出がかなり丁寧だった。

全くの他業種とのコラボ案件でここまでのホラーイベントを作る需要と供給があるというのは羨ましい限りである。

 

あらすじ

 

舞台は、フランスの小さな島に住まう養蜂家の住居。

体験者は、蜂蜜を売って暮らす由緒正しき家柄の姉弟と出会う。

彼女らが言うには、その島には謎の奇病が蔓延し始めており──。

 

これは本筋とは異なる話だが。

興味深いのが、シナリオの多くが「感染症」「放射線治療」「核実験」「人体実験」などの要素に収斂されることだ。

 

最終的にはあらゆる怪奇現象に対し、作中世界における理屈を通じた「理詰め」が行われるし、公演の最後には専用スペースで、スタッフと体験者が一堂に会しての解説・感想会がある(これは特に有難かった)。

 

唯物論のホラーとでも形容すればいいのだろうか。

唯心論的ないわゆる「幽霊/お化け」は、全公演を通しても殆ど(全く?)存在しなかった。

そういう意味でも、私たちが想定できる「お化け屋敷」とは毛色が異なるのかもしれない。

 

「ABEILLE」の話に戻ろう。

2025年、ささやかなクルーズに出ていた体験者は、特殊なタイムリープ現象に巻き込まれて時空を転移

本作の主要な舞台となる、19世紀フランスの小さな孤島に難破する。

 

もう一度言う。

難破する。

 

UMEPLAYで「難破する」と言っているのだから、それは本当に船に乗るし、本当に難破するのだ。

 

「壁の手すり、しっかり掴んでいてくださいね」

 

先程の体験を経た私たちは、何の茶化しもなく、無言かつ速やかに、「船」の内壁へぴたりと身体を付けた。

 

そして──。

タイムリープ先の小さな家屋で、

奇病の治療に奔走する姉弟の壮絶な物語を五感で垣間見ることになる。

なお、本当に五感すべてを使う。

 

「これ、████を████して██の上に上がれば──」

「嘘、ここを████んですか?」

「取り敢えず行こう」

「やばい誰か来る、息を潜めて」

 

(数十分後)

 

「(███の隙間から██の会話を聞きながら)……これ。もしかして」

「やっぱり、そういうこと?」

「でも、█████なんてことをしたら──」

「そうですよ、███の██はどうなるんですか」

 

目の前で繰り広げられる群像劇を経て、

私たちは完全に「入って」いて。

 

ここに至って、私は先ほどの「二つのルール」の利点を再確認した。

 

①暗くなったら動かない。

②明るくなったら、光のある方へ進む。

 

あの場で登場人物たちに起きる様々な会話は、例えばホラーゲームのイベントムービーに近い。

 

暗い時間は立ち止まり、

目の前で起きる様々な空間演出や会話を見て世界観を理解する。

 

明るい時間は歩き回り、

そこで得た理解に基づいて様々な場所を探索する。

 

すると、何か鍵となるアイテムや空間を見つける。

これは何だろうと考えているうちに周囲が消灯し、次の演出が始まる。

 

「や、やっと明かりが見えた」

  「早めに行こうか、ここはもう危ない」

「光の安心感がすごい」

 

デジタルゲームにおける「イベント」「探索」という二つのフェイズを、光のオンオフに基づく直感的な指示だけでリアル空間に落とし込み、ストーリーを完璧に誘導しきっているのだ。

 

スタッフの言語的な指示やガイド音声による誘導ではなく「明暗」による誘導だから、誰かが置いていかれたりするリスクは少ない。

しかも非言語だから私たちのような外国人でもすぐに理解できる。

 

もっと言えば、「暗いところから明るいところに行ける」という本能的なカタルシスが、ホラー体験と恐ろしいほど相性がいい

展開の緩急を一気に引き締めているし、周囲が突然に暗くなったときの絶望感は筆舌に尽くしがたい。

 

正直、このシステムを実装した人は本当に天才だと思う

 

「え、さっきまで此処にいた人は何処に行ったの?」

「なにこの部屋。天井までぱんぱんの████──これ、全部本物?」

「たぶん、本物だと思う」

「なんで建物の中なのに、当然みたいに████があるの?」

「もしかして、この匂いって──」

 

なお、当然、これも非常に怖い

しかし、少なくとも私の心の中には恐怖よりも、数百年前に生きた一組の男女への感情移入と、必ず彼らと結末を共にするんだという思いの方が強かった。

 

タイムリープもののサスペンスとしても非常に面白く、シナリオと恐怖演出の絶妙なバランスが取れた、満足感の強い体験だった。

 

「あー、怖かった。ちょっと声涸れてるかも」

「いやー、やばかったですね」

「ね。これは凄いシナリオだわ」

「かなり余韻が──え?」

 

ちなみに。

 

「ん、どうしたんですか……あれ」

「え、嘘嘘嘘嘘嘘」

「ちょっと待って、あれって」

「ええええええええ!?」

 

この公演の一番最後の演出で、

全員から本気の絶叫と拍手が起きた

 

あんなことやっていいんだ、と本気で驚かされた。

あの演出は正直逆立ちしても思いつかないというか、いかに自分の思考にブレーキがかかっているかを思い知らされた。

 

なお、根底はタイムリープSFなので、最初こそ時間軸の整理と飲み込みに時間はかかるもののすぐに理解できるし、登場人物も多くない。

もし分からなくとも最後の解説時に直接質問できる。

何より、通底するテーマは王道かつ明快である。

 

そのため、個人的には「INSANE」と並んで初心者向きではないかと思っている。

もし行ける機会があればぜひ体験してほしい。

知っている人と沢山感想を語りたいのだが、話せる人が物理的に少なすぎるから。

 

《HAVEN(ヘイヴン)》

最後に紹介するのが、こちらの「HAVEN」

旅行直後の感想会ではぶっちぎりで評価が高かった

私も非常に好きな公演だ。

 

あらすじ

 

滅亡寸前の終末世界。

第21号地下シェルターに住まう人々は、長年の地下生活による「日触症」に苦しんでいた。

体験者は、太陽に触れると死亡するこの奇病の特効薬を研究している姉妹と出会い、皆と再び太陽の下で生きるために奔走する。

 

あらすじから分かる通り、

かなり本格的なポストアポカリプスSFである。

 

体験者たちは、荒廃した地下のシェルター(今更言うまでもないが、本当に「荒廃した」「地下の」「シェルター」だった)に通され、そこで起こったおぞましい事件の片鱗を目にすることになる。

 

のだが。

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

終演後、完全に放心していた

 

なんなら同行者の一人は普通に泣いていた。

 

先述のあらすじからも、

話の筋は比較的想像しやすいだろう。

 

終末世界の荒廃したコロニーで起こる人間ドラマ、そこで生まれる絶望とささやかな抵抗の話だ。

 

それらの顛末を、UMEPLAY特有の一線を越えた恐怖演出とともに追っていくつくりになっている。

 

太陽を知らない姉妹、

コロニーに蔓延する奇病、

「天啓」をもたらす謎の秘薬。

 

単語だけ聞けば「お化け屋敷」よりも短篇小説に近く、ホラー公演でその題材? とすら思うかもしれない。

 

なのだが、

完全に意表を突かれた。

 

通訳の方の話だと、

この公演に関しては、終演後の受付への移動中、

本当に嗚咽しながら泣く人が大量に出るらしい。

 

「流石に納得します。これはちょっと、やばすぎる」

 

言っておくが、この公演でも全員が均等に数十回のジャンプスケアを浴びている。

 

正直、この記事を執筆するまでに二カ月の時間を置いたのは、この公演に起因するものが大きい。

 

リアルタイムの極限状態を経た吊り橋効果的な熱によって絶賛していた可能性を鑑み、二カ月かけて頭を冷やしていたのだが。

今思い返しても非常に強い余韻が残っているため、恐らく純粋に感動していたのだろうと思う。

 

特にこの記事をここまで読み切っているような読者の方々には、この「HAVEN」が最も深く刺さると思っている。

私も心からお薦めするのだが、同時に、これはUMEPLAYの公演をいくつか経験した後だからこそカウンターとして大打撃を食らうタイプのような気もしている。

 

もし万が一可能であれば、こちらは二度目三度目のUMEPLAYまで大事に取っておいて欲しい(無論、そんな贅沢を言えるほど参加障壁の低いコンテンツではないが)。

これは数少ない体験者には頷いてもらえると思うが、「初見でHAVENを見る権利」を持っているのは非常に羨ましいことなのだ。

 


 

注意:日本にはまず来ないと思ってください

 

総評として、あらゆる意味で、無二のホラーエンタメであった。

 

近年は書籍や映画に限らず、中国語圏のホラーエンタメを様々に輸入する動きも出てきているが──「恐怖心展」「行方不明展」その他様々なイベントの企画運営で様々なことを知った私が断言する。

 

UMEPLAYを日本国内でそっくりそのまま再演するのは絶対に無理である。

これを実装できる施設がそもそも思いつかないし、移植にあたって改正しなければならない法と条例が多すぎる。

 

主要な演出をダウングレードすれば可能かもしれないが、そのためには主要な演出をダウングレードしなければならない。

 

そのため、無理を言っていると分かってはいるが、ぜひ現地で体験してほしい

 

A常春さん。確か、UMEPLAYは以前にも数回体験されてるんですよね」

「うん」

※今回のUMEPLAY体験および記事掲載にあたり、UMEPLAY本社との連絡や通訳者のアテンド、その他あらゆる旅程の管理はアパレルブランド「トキキル」代表のみーぬさんと常春さんが行ってくださいました ここで改めて深く感謝申し上げます

 

「まだこれよりも怖いものってあるんですか?」

「それがね、一番怖いやつをまだやれてないんだよ。特に梨さんには是非やってほしかった公演があれもこれも」

「やばすぎ」

 

ちなみに、先日トキキル代表のみーぬさんとお会いした際に聞いてみたら「あー、あの身の危険を感じるやつと言われた。

 

なお、当然、現状の体験ハードルは高い。

現地へ行く以外の体験方法がない未訳の海外エンタメだし、あらゆるホラー表現に容赦がない。

※なお、すべての公演に途中退出のシステムはある

 

特に後者。

過剰な装飾表現によって恐怖を煽っているのではなく単純な住み分けとして、全員にお薦めはできない。

 

これはホラー作家としての肌感覚だが、

駄目な人は開始数秒で蹲るタイプのホラーだろう。

お化け屋敷などでありがちな「ホラーが極端に苦手な友人/恋人を引っ張っていく」的な行動は、正直本当にお薦めしない

 

しかし。

ホラーと濃密な体験に飢えた人

特に、あらゆるホラーコンテンツを摂取して、

ある種の「上限」が何となく分かってきた人。

そういう方々は絶対に行った方が良い。

 

なお、この他にも素晴らしい公演は沢山ある。

個人的には、容赦のない恐怖がお好みなら「REVIVER 2(リバイバー 2)」を強くお勧めしたい。

本稿で記述した非常に丁寧な小技もさることながら、全体を通した恐怖表現の突き詰め方が随一だった。あの場面、ホラーエンタメで恐怖を飛び越して「絶望」を感じたのは人生で初めてだった。

 

なお、「ホラー体験のための海外旅行」を実際に視野に入れられる、数パーセントの奇特な方には、二つほどアドバイスを。

 

まず、歩きやすい靴と服装で行くこと

ヒールは以ての外だし、欲を言えばリュックやキャリーケースの類も現地のホテルなどに預け、最低限の装備で臨んでほしい。

 

次に、他の観光予定はあまり入れない方が良い

エンタメのためだけの限界的な旅程に馴れている方なら問題ないが、初見だと本当に疲れるだろう。

三泊以上の日程を組んでいる、もしくは現地に土地勘のある友人がいるなどでない限り、この体験をメインに据え、他は余裕があれば行く程度に留めておくのが無難だ。

 

それにさえ気を付ければ、

あらゆる体験の極北ともいえる無二のエンタメがあなたを待っている。

存分に期待値を上げて臨んでほしい。

どうせすぐに超えられる。

 

総括

 

以上、梨による「UMEPLAY」コンテンツの感想記事であった。

 

繰り返しになるが、ホラー体験としても読書体験としても、人生トップレベルで満足している。素晴らしかった。

 

もし私が数億円の私財を手に入れたら、中国へ行って人生初の「お化け屋敷」を作ろうかと本気で思っているくらいには非常に強い影響を受けた。「体験」に飢えている人々ならば、まず行って損はないだろう。

 

但し、劇薬であることには間違いない。

過剰摂取には十分に気を付けてほしい。

 

私もあと五回ほど現地へ赴き、UMEPLAYの全公演を二周し終わったら、改めて付き合い方を考え直そうと思う。