サンリオのポムポムプリンが好きで、ぬいぐるみやフィギュアを集めている。
いつも様々なファッションを見せてくれるプリンちゃんだが、彼はどんな服でも自分流に着こなしてしまう。そういうところが本当に好き。
ある時、私の元にとんでもない情報が飛び込んできた。
愛媛県歴史文化博物館ホームページより引用
なんと、素焼きプリンちゃんの絵付けイベントが開催されるらしい。
大変なことになった。世界でひとつだけのオリジナルファッションのプリンちゃんを生み出せるということだ。そんなの考えるだけでもう、正気を保つので精一杯というぐらい興奮してしまう。
イベントの開催地は愛媛県の西予市らしい。地図を見たら現在地から950kmのところにあった。ウソみたいに果てしない距離だ。
しかし、人には何に変えても駆けつけるべき時というのがある。
私はすぐに飛行機のチケットを取った。
本番までに絵付けをマスターしたい
この滅多にないチャンスを成功させるためにも、家で絵付けの練習をすることにした。
練習台は100円ショップで買ってきた素焼きの陶器だ。プリンちゃんのふくよかなボディを意識して丸っこいものを選んでみた。
絵の具を使うのはたぶん20年ぶりだろうか。
プリンちゃんらしい淡いクリーム色を目指して黄色に白色を混ぜてみる。調整が難しい。いくら白色を足しても黄色が飲み込んでいく。
デジタルならバーを動かすだけで簡単に色をつくれるが、アナログはそうもいかない。筆と絵の具の重みから「現実」を感じる。
ひとまず塗ってみた。絵の具を水でのばすと塗りやすいのだが、ムラになってしまった。あと、乾くのに時間がかかる。絵の具に混ぜる水は控えめなほうがよさそうだ。
服の部分を塗る練習。輪郭をきれいに整えるのが難しい。本番ではまず鉛筆でしっかり下書きをしたいと思う。
単色だとのっぺりした感じなので、ハイライトの練習。なんとなく光沢っぽく見えるだろうか。
はじめは上手くいかなかったが、陶器に触れるか触れないかぐらいのタッチで素早く筆を動かしたら何とかなった。この筆の感覚を忘れないようにしよう。
植木鉢での練習もいいが、本番で使うようなプリンちゃんの形の陶器で完成形をイメージしておきたい。
ということで、紙粘土でプリンちゃんの頭部を再現してみることに。これを丸っこい陶器に乗せたら本番と近い形になるだろう。
ちょっと予想外のオリジナル壺入り犬が誕生してしまった。
気を取り直して顔の塗りの練習。
ここで気づいたのが、筆で線や点を描く難しさだ。特に目や鼻の小さい丸は苦戦した。筆先が跳ねて輪郭がジャギジャギになってしまう。なにか対策を考えないといけない。
やってみたらいろいろな課題が見えた練習だった。私は本番に向けて練習を重ねた。
ポムポムプリン絵付け本番
ついにイベント当日を迎えた。愛媛県歴史文化博物館。来てしまった。
真っ白なプリンちゃんとご対面。まぶしい。なんて純真無垢な存在なのか。
それをこれから私色に染め上げるのかと思うと、胸の高鳴りが抑えられない。
制限時間は1時間30分。短いのか長いのか分からない。だけど、練習を思い出せばきっとうまく出来るはずだ。
白を多めに、丁寧に色を調整すること。
絵の具はムラにならないよう水分を少なく、分厚く塗ること。
乾かす時間を考慮して手早く塗ること。
予想以上に素焼きの吸水性が高かったのは嬉しいハプニングだった。絵の具がすぐに乾くのでじゃんじゃん塗れる。
いいぞ、これはいけるぞ!
と思ったら、耳の裏側に塗り忘れがあった。油断は禁物である。
続いて、持参したシャーペンで服のラインを描いた。
おなかに自分のアイコンを描いてみた。
プリンちゃんが私の顔の服を着ている。こんな日がくるなんて夢みたいだ。
これは持論だが、プリンちゃんはウエストの位置が高ければ高いほど似合う。
ボトムスが脇の下までぐらいまで入りこんでると、魅力がぐっと上がるのだ。
服をおおまかに塗ったあとはいよいよ顔だ。
重要かつ細かいパーツなので緊張する。
目、鼻、口は溝で縁取られていて細い筆が入りにくい。そこで持参したつまようじで描く作戦を試みた。
なんか目がショボショボしてる気がする。
でもはみ出すよりかは全然いい。あとでまた調整しよう。
顔のパーツという山場を越えたので、ほっとひと安心。
大きな筆に持ち替えて次は帽子だ。もう大胆に塗っちゃおう。
あっ
めちゃくちゃはみ出してしまった。
大人だからやらないが、パイプ椅子から転げ落ちて床を殴ったあと大の字にひっくり返って泣きわめきたくなった。
一瞬の気の緩みが命とりとはこのことだ。
私は、静かに激しく喜んだり憤ったりした。
続いて、背中側の絵付けに取りかかる。
やっぱりプリンちゃんのまんまるボディーの魅力を最大限に生かす服といえばこれだろう。「まわし」だ。
そして、プリンちゃんの大きな特徴としてあげられるのが、服を貫通するおしりの穴である。
プリンちゃんは服を着ると、おしりの穴のレイヤーが最前に上がってくるという現象が起きる。
もちろん、まわしを巻いていてもこれは採用されるはずなので、忠実に現象を守りたい。
プリンちゃんにとっておしりの穴はチャームポイントであり、大変重要な部位だ。自然と気合も入る。
だるまの目を入れるかの如く、筆に魂を込めておしりの線を引いた。
そういえば彼の名前を決めてなかったが、それは自然と降りてきた。
彼の名は、豊 夢青龍
愛媛の地にて、1時間30分で生まれた。
彼は未完の大器である。
未完――つまり、時間内に絵付けが終わらなかった。
かなり集中して取り組んだが、完成したのは7割ぐらいだった。
幸い、家に練習の時に使った絵の具や筆があるので、帰ってからじっくりたっぷり時間をかけて、プリンちゃんを完成させることに。
短い時間だったけどありがとう、愛媛!
次の日、2時間ほどかけてプリンちゃんを完成させた。
絵付けってすごく時間がかかる。でも夢中になるから一瞬のようにも感じる。
それでは、世界にひとつだけのオリジナルプリンちゃんをご覧いただきたい。
丸さが強調されるよう、おしり周りは立体感を意識して。
トリックアートのような艶やかな結髪で、日本の伝統美を表現。
ショボショボだった目は、プリンちゃんらしいつぶらな瞳にブラッシュアップ。
そして、これからもプリンちゃんを応援したいという思いを込めて、化粧まわしに私のアイコンを施した。
豊 夢青龍、ここに完成。
私だけの横綱が、今、私の家には居る。
こんな嬉しいことはない。
ごっつぁんです。
※愛媛県歴史文化博物館での当該イベントは終了しております。
※絵付け体験は「AWAJI HELLO KITTY APPLE LAND」でもできるようです(2024.10.26時点)。要チェック!
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