私はサンリオのポムポムプリンが好きで、日々せっせとグッズを買い集めては、部屋でグッズを広げてこうなったりしている。

 

ポムポムプリンが好きだと言い続けていたら、嬉しいことに去年の誕生日にポムポムプリンのヤカンをいただいた。

 

見てほしい、世界で一番かわいいヤカンを。ヤカンのフォルムにこんなにもプリンちゃんの顔面がしっくりくるなんて誰が想像できたのか。私はできなかった。想像を超越した愛らしさ。

 

 

大事に飾っておきたい気持ちもあったが、せっかくなので使うことにした。

いい……。火にかけられても平然とした表情がたまらない。

 

プリンちゃんのヤカンによってキッチンに彩りがそえられ、私は上機嫌で毎日お湯を沸かした。

 

 

3日後、事件は起こった。

 

 

 

目の周りにぶち模様が浮かび上がり、知らない犬みたいになった。どなたですか?!

本当にショックだった。腰痛がなければ腰から大胆に砕け落ちて床に大の字になって泣きわめくところだった。

 

プリンちゃんの目の周りをよく観察してみた。焦げ付きというよりも、塗装が変色している感じだ。もしかして、これってもうどうしようもないということ……?

この日は、上の空で仕事が手に着かなかった。

 

とてもつらいが、ヤカンは使い続けることにした。

それから一週間が経った。

 

 

 

反対側の目にもぶち模様が浮かび始めた。なんでよ。「片目だとバランス悪いし」とかそういう気遣いだったらやめてほしい。

プリンちゃんはゴールデンレトリバーであってダルメシアンじゃない。これ以上、ぶち模様が入ったら本当に知らない犬になってしまう。

 

 

このタイミングで注ぎ口についてた笛が取れた。接合部分が熱で溶けてしまったので修復のしようがなかった。

沸騰したら「ピー!」と天高く鳴いていたが、今はもう「ブゴゴゴ……ッ」と小声でしか鳴かない。悲しみの追い打ち。

 

 

 

2か月後、目の周りがはっきりと変色し、知らない犬からパンダになりつつあった。

なんで目の周りだけ……? でも正直、ちょっと可愛く思えてきている。

 

 

 

5か月後、目と鼻のラインを中心に変色が横に広がってきた。パンダの時期は一瞬かわいいかもと思ったけど、変貌ぶりが著しくて悲しいよ。

今考えると、ヤカンに入れる水が少なかったのだと思う。水位より上の部分が高温になって変色したに違いない。

 

 

いよいよ塗装も削れはじめた。ああ……

 

 

 

プリンちゃんのヤカンが我が家に来てくれて11か月経った。

満身創痍のプリンちゃんの前で私は決心した。

 

塗り直そう。

あの頃の無垢なプリンちゃんを復活させようじゃないか。

 

 

 

ヤカンの塗装を剥がして塗り直す

 

プリンちゃんのヤカンを復活させるには、今ついてる塗装を剥がして、新たに塗装すればいい。

あれ、なんだ。けっこう簡単そうな話じゃないか。

 

ということで必要な道具をそろえた。

塗料はがし剤、容器とハケ、塗料を剥がすヘラ。あとは耐熱塗料スプレーだ。

換気に気をつけて、マスク、ゴム手袋も用意して準備万端である。

 

 

まずはヤカンにラップを巻き、顔の線をペンでなぞって、顔を写し取る。

プリンちゃんの目鼻立ちは神がかっており、少しでも配置がずれれば全く別の犬になってしまう。位置がずれないよう慎重にやった。

 

 

ヤカンに塗料はがし剤を塗っていく。

 

 

プリンちゃんの顔を愛でるようにハケで優しく塗った。

 

 

30分ほどして浮いてきた塗装をヘラでこすったら、ずるっと剥がれ落ちた。気持ちいい。

あと薬剤の威力を見ていたら、うっかり家のフローリングも溶かし消してしまうんじゃないかという不安に駆られたので、急いでベランダに移動した。

 

 

塗装を剥がし続けたら、未来人みたいな風貌になった。なぜ?

これ以上はどんなに薬液を塗っても、へらでこすっても塗装を剥がせなかった。変色した部分は焼き付いてしまっているようだ。

 

 

作戦変更だ。薬剤をタオルでしっかり拭き取ってから、サンドペーパーでこすってみた。

 

 

メタルほっかむりを被るプリンちゃんになった。かわいすぎ。

サンドペーパーでこする作戦は成功だ。メタルほっかむりプリンちゃんは名残惜しいが、顔の残りの部分も全部けずっていく。

 

 

塗装を全部剥がし終わった。新品みたいでまぶしい。

あとはヤカン全体をまんべんなくサンドペーパーで磨いて、塗装の剥がし作業は完了だ。

 

 

次は、新しい顔の作成に入りたい。

ラップに写しておいた顔の線をもとに、マスキングテープで作った顔のパーツを貼る。

 

 

プリンちゃんといえばおしりの穴も欠かせない。若干、巨大になってしまったが、これぐらいが健康的でいいだろう。

 

あとは取っ手、注ぎ口、フタの部分をマスキングしたら、いよいよ塗装剤の吹きつけだ。

 

 

驚くほど外が暗くなってた。儀式っぽさがすごい。

時計を見たら作業開始から6時間経っていた。私はただプリンちゃんのヤカンの塗装を新しくしようとしただけなのに不思議だ。

 

気を取り直して塗装に入る。

スプレー塗装は初めてだ。かなり緊張したが、勇気を振り絞ってヤカンに吹き付けていく。

 

腕の動きは横一文字に、一度で塗ろうとせず、まんべんなく!

 

ぎこちない動きでどうにか全体にスプレーできた。

10分間乾かしてから、二度目のスプレー塗装をして、さらに30分間乾燥。

顔やパーツに貼ったマスキングテープを丁寧に剥がして、24時間乾燥。

 

そして、ついに完成だ!

 

 

 

みんな~はじめまして!

 

 

 

ぼく、ブラックポムポムプリンだよ

 

全体を黒に塗装してみた。もう二度と目の周りが黒くなんてなってほしくないから。

木を隠すなら森の中、パンダ目を隠すならブラックポムポムプリンというわけだ。

 

 

おかえりプリンちゃん。

顔はあの頃のまま、火にかけられようが何だろうが平然とした表情は同じでうれしい。

 

 

色は黒いけれど、キッチンと私の心にまた彩りが添えられた。

 

作業を始める前は、完成まで31時間もかかるなんて思ってもみなかったが、無事に成し遂げられてよかった。

これからも大事に使っていきたい。

 

 

※今回の作業手順がすべての塗装に当てはまるとは限りませんので、塗装剥がしや塗装をする場合は、薬剤の説明書を基に安全に作業していただきますようお願いします。