こんにちは、ライターの店長です。趣味で大喜利をしています。

 

 

このようにすぐに楽しめることが売りの大喜利ですが、1つだけ大変なことがあります。それは……

 

 

そう、大喜利を楽しむためにはお題を準備する必要があります。

しかし盛り上がるお題を作るのって意外と難しいものです。僕は10年大喜利をしていますが、未だにお題のいい作り方が全く分かっていません

 

そこで今回は、各方面で活躍するお題作りのスペシャリスト3名に、Web上でお題の作り方を聞いてみました。皆さんの大喜利ライフの一助になれば幸いです。それでは早速どうぞ!

 

 

1人目

寺田 寛明
マセキ芸能社所属のピン芸人。大喜利ライブ『大喜利千景』などの主催を務め、自身も出演者として数多くの舞台で活躍する。R-1ぐらんぷり2019準決勝進出。

 

——本日はよろしくお願いします。寺田さんは様々な大喜利イベントに携わっていますが、それぞれでお題は作り分けているんですか?

めちゃくちゃ作り分けてます。出演者や客層も勿論ですが、イベントの形式によってもお題の傾向を変えています。分かりやすいポイントとしては、対戦形式かそうでないかでかなり意識的に変えてますね。

 

——対戦形式というと、IPPONグランプリのような感じでしょうか。

そうですね。僕も人づてに聞いたんですが、IPPONは意図的にかなり「難しいお題」を作っているらしいです。なのでIPPONのお題をお笑いライブの企画で出してみても、意外とハネない。

 

——どちらかと言うとIPPONでは難しいお題を「解かせる面白さ」に焦点が当たるんですかね。

IPPONは「こんなお題でも面白い回答が出せるんだ!」という凄さがあるので、普通では面白くなりづらいお題でもエンターテイメントとして成立するのかなと思います。一方で僕が主催するお笑いライブだと芸人さんが出しやすい、「盛り上がること」を重視したお題を作るよう意識しています。たとえばオカマ口調で答えさせるお題なんかはキャラも勢いも乗せやすいので、結構出しやすいですね。

 

——ライブ形式だと盛り上がるかを大事にされてるんですね。対戦形式のイベントではどうでしょう?

もちろん盛り上がった方が良いんですが、それに加えて対戦形式の場合は「クールさ」みたいなのもあるのかなと思います。IPPONもそうですが、難しいお題に立ち向かうカッコよさもあるのかな、って。なのでお題の難易度はより丁寧に調整しています。

 

——お題の難しさを調整するために、いい方法はありますか?

お題の最後の部分を絞るかどうかで、難易度はかなり変わりますね。たとえば
・ギャルが経営するコンビニ、どんなの?
というお題なら、コンビニの要素は全部使って回答できます。これが
・ギャルが経営するコンビニの”名前”
になると、名前しか答えられなくなる。つまり答えの方向性が絞られることになります。対戦形式の大喜利では最後の部分を絞った方が考えがいが出ますし、イベントとしても見やすくなると思います。

 

——逆に、お題作りでしないようにしている事はありますか?

場面にもよりますが、知識が必要なワードや要素はあまり使わないようにしてますね。以前イベントで大乱闘スマッシュブラザーズの要素を使ったお題を出したんですが、たまたま出演者にスマブラを一切知らないおじさんがいたりしたので(笑) お笑いライブでは出演者の年齢層は20代、つまりスマブラ世代がメインなのでそんなに気にしませんが、そこは状況を見ながらですね。

 

——出演者ごとに知識の偏りもありそうですね。

特に大喜利の大会だと知らないと回答できない=敗退となることがあるので、それは避けるようにしています。たとえば最近はHIPHOPやラップバトルが流行ってますが、聴く人とそうでない人の知識の差が激しいので、ラップ調で答えさせるお題とかはあまり出さないかな。

 

——ちなみに寺田さんが個人的に嫌いなお題ってありますか?

そうですね……。
・お弁当に入っていたら嬉しいオカズ。第1位はハンバーグですが、では第1000位は?
というような形式のお題があるんですが、中途半端な順位お題は苦手ですね。さっきのお題だと
・お弁当に入っていたら嬉しいオカズ。第1位はハンバーグですが、では”第8位”は?
とか。ボケればいいのか、ありそうなものを言えばいいのか判断が付かないので……。

 

——そういうのは「難しいお題」というより「よくないお題」ということですかね。最後に、この記事を読んでいる皆さんが作るならどんなお題がいいでしょうか?

少人数で楽しまれるなら、最後をちょっと絞って答え方を限定してあげた方がやりやすいと思います! 特に大喜利に慣れていない場合は、その方が考えやすいですね。回答を見る周りの人たちも、何でもありなお題よりは多少方向性が決まっている方が楽しみやすいと思います。

 

あと、中途半端な順位お題はマジで変な空気になるので気を付けてくださいね!

 

——ありがとうございました!

 

 

2人目

ばらけつ
東京周辺で数多くの大喜利イベントを企画する団体『ROSE』の主催。プレイヤーとしても東北最大の大喜利大会『T-OST』で優勝するなど、輝かしい成績を修める。

 

——本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いします。自分は粗製乱造(そせいらんぞう:質よりも量を重視し、数をたくさん作ること)なタイプなので、参考になるかは分かりませんが……。

 

——かなりの数のお題をコンスタントに作られているということでしょうか?

スマートフォンのメモ帳アプリに、思いついたお題を書き溜めています。今でだいたい、150題ぐらいありますね。

 

——150題! それだけ発想のタネがあることが凄いですね。いい発想法があるんでしょうか?

発想の仕方としては、僕は大きく2つのやり方を行っています。1つは街をぶらついて、目に入ったものから発想する。たとえばシュークリーム屋さんが目に入ったら、シュークリーム自体を使ったお題でもいいですし、シュークリーム→お菓子、のように拡大させたり。シュークリームの「シュー」はフランス語でキャベツという意味なので、シュークリーム→キャベツ→野菜、のように連想したり。

 

——1つのモノから幾つも発想を転換させていくんですね。

もう1つの発想法は少しマニアックですが、大喜利のサイトをとにかく見漁ることですね。

 

——えっ、昔のお題をパクるんですか?

違います!(笑) 使っている単語やお題の作り方など、エッセンスを学ばせてもらっています。大喜利サイトって長いと10年以上運営しているものもあって、お題も無数にあるんですよね。その中でも面白かったお題などから、刺激をもらうこともあります。

 

——YouTubeで勉強させて頂いたんですが、ばらけつさんの作るお題は結構文量がある印象を持ちました。

 


ばらけつさんが実際に出題したお題

 

——あれは意識的に長めに作ってるんですか?

個人的な考えですが、いいお題(答えやすい・盛り上がりやすいお題)には前振りがあると思うんです。お題の中でしっかり振りが効いているから、考えやすいし、観客も見やすい、だから盛り上がりやすい。なので前半の状況設定は細かく丁寧に書くことが多いですね。

 

——お題で前振りをして、回答者にはどんとオチを答えてもらうような感じですかね。

そうですね、4コマ漫画の3コマ目までは準備してオチを任せる、みたいなイメージが近いかもしれません。

 

——友達同士で大喜利を楽しむ場合の、お題作りのコツってありますか?

あまり広いお題だと発散しちゃうと思うので、少し状況を絞ってあげた方がいいかもしれませんね。たとえば
・マリーアントワネット「○○ないなら○○ればいいじゃない」
という穴埋めお題だと、空欄に入れば何でもありな感じがしますよね。

 

——たしかに、文の意味さえ通れば自由度は高い感じがしますね。

これが
・めちゃくちゃブチギレてるマリーアントワネット「○○ないなら○○ればいいじゃない」
のようにちょっと縛りを入れてあげることで、状況がよりクリアになって答えやすくなるかなと思います。

 

——絞ってあげた方がいいというのは寺田さんとも共通してますね! 寺田さんはお題の最後を、ばらけつさんは最初を絞るというスタイルの違いもあるのかも。

あとこれは経験則ですが、お題を作るなら朝がいいと思います! 朝起きてから会社に行くまでの間に、普段思いつかないことを思いつくことが僕は凄く多いです。事実、イベントで特にハネたお題はだいたい朝に思いついています。朝のお題作り、オススメです。

 

——朝、少し状況を絞る、振りを効かせる、がポイントですね。ありがとうございました!

こちらこそありがとうございました!

 

 

3人目

讃岐 邦好
関西を中心に活動する演芸作家。NHK「上方演芸会」での漫才・落語の台本、お笑いライブ、映像コンテンツの台本など幅広いジャンルに向けた作家活動を手掛ける。

 

——よろしくお願いします。讃岐さんは演芸作家として幅広く活躍されていますが、大喜利イベントも数多く主催されていますよね。

そうですね。芸人さんの大喜利ライブや大喜利経験者向けの大会、初心者向けの練習会など色々やらせてもらってます。

 

——そうなるとお題も相当数が必要になると思いますが、作り方にポイントはありますか?

大喜利で聞かれることって、実は何パターンかに絞られるんですよ。『~~、なぜ?』と理由を聞くお題、『~~、何?(どんなの?)』とモノを聞くお題、『校長先生「○○」』のような穴埋めお題、あとは写真で一言とか。それぞれのパターンごとにお題を作るようにしていますね。

 

——WhatやWhyなど、疑問詞ごとにお題を分けているようなイメージですね。

あと同じパターンで沢山お題を作る場合は、なるべくジャンルが被らないように気を付けています。たとえば野球なら、野球お題は1つにしておくとか。

 

——使用するジャンルに拘りはありますか?

誰でも知っていて答えられるようなものを選ぶようにしています。芸人さんのライブなど20代が中心のイベントですと、ポケモンを使ったお題とかも多いですが……。たとえば桃太郎とかの方が、誰でも面白いことを想像しやすい、易しいお題になりやすいと思います。

 

——お題の難易度調整にもテクニックがありそうですね。先にインタビューさせて頂いたお2人は、状況を絞るのがポイント、と仰っていました。

それは僕も同意見ですね。たとえば
・こんな運動会は嫌だ
だけでは「嫌」の方向性が絞りにくいですよね。疲れるから嫌なのか、それとも不条理だから嫌なのか。「嫌」の定義付けが難しいので、必然的にお題の難易度も上がります。これが
・こんな“お金持ち学園の“運動会は嫌だ
なら、嫌さの方向性もある程度決まると思います。それを入れるかどうかがひとつですね。

 

——3名全員ポイントに挙げられてる! これは間違いなく抑えておくべき点ですね。

あとはお題の最後で、聞き方をちょっとだけ難しくすることもありますね。
・こんな運動会は嫌だ

・こんな運動会は”逆に参加したい”
にしてみるとか。大喜利好きな経験者の人にはそんな感じで少し捻って、骨のあるお題を作るようにしています。

 

——友達同士で大喜利を楽しむ場合はどうでしょうか?

これはイベントだと難しいですが、友達同士など相手の人となりを知ってるなら「その人お題」を出すのもいいですね。その人がSASUKEの大ファンなら、
・こんなSASUKEは嫌だ
でも全然盛り上がると思います(笑) 難易度調整は間違えると全然回答が出なくなってしまう場合もあるので、深く考えずにその人の好みに合わせたお題を作るのもひとつの手ですね。

 

——たしかに、それだとかなり作りやすそうですね。

あとは僕が初心者向けイベントでよくやるんですが、「何を回答しても成立するお題」を出す、という手もあります。

 

——そんな魔法みたいなお題があるんですか!?

あるんですよ。全く大喜利をやっていない人でもウケやすいお題が……。それは、
・桃太郎で川上からどんぶらこ、どんぶらこと何が流れてきた?
です。

 

——あっ、たしかにモノなら何でも回答として成立する!

そうなんです、しかも桃太郎だから日本人のほぼ全員が知っている。超とっつきやすいお題なんです。ちなみに店長さん、このお題で一番よく出る回答は何だと思いますか?

 

——ハム?

違います。お歳暮じゃないんだから。正解は「おじいさん」なんです。ベタな回答ですけど、場面を想像しやすいから初めての人でも笑いやすい。

 

——柴刈りをしてる最中に足を滑らせて川に落ちたのがイメージできますね。

そういう解釈も色々と広がりますし、いい回答ですね。そんな感じで、どんな回答が出そうかをイメージすることがお題作りでは大事だと思います。

 

——ありがとうございました!

 

 

まとめ

 

・少し状況を絞ってあげた方が、回答を考えやすい
・知らない人がいそうなワードは基本避けた方がいい
・朝に考えた方が、いいお題は浮かびやすい
・お題の中で振りを効かせるのもあり

・中途半端な順位お題は変な空気になる

 

というわけで今回は、大喜利のお題の作り方についてインタビューしてきました。皆さんも大喜利で遊ぶ際は、ぜひ参考にしてくださると幸いです!

 

 

 

余談ですが、後日よくないお題(左)といいお題(右)を知人に出してみたところ、

 

 

 

トイレから戻ってきたら、よくないお題だけぐちゃぐちゃに破壊されていました。皆さんも変な空気にしないよう、くれぐれも気を付けましょう。

 

(おわり)