ツイッターで話題になっているのを見て知ったゲーム『Little Nightmares(リトルナイトメア)』を購入してプレイしたところ、かなり気に入ったのでご紹介します。

 

 

リトルナイトメアはどんなゲーム?

 

タイトル:リトルナイトメア

価格:2200円+税

プラットフォーム:PS4 / Steam(ダウンロード限定)

ジャンル:サスペンスアドベンチャー

 

悪夢のような作り込まれた世界

 

「雰囲気ゲー」と呼ばれるゲームジャンルがあります。おもに「ゲーム性(アクションやかけひき)の面白さよりも、世界の雰囲気を演出することに比重を置いたゲーム」を指して使われる言葉です。『リトルナイトメア』は、その意味でまさに「雰囲気ゲーム」です。

 

 

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主人公は黄色いレインコートを着た「シックス」という女の子。敵から逃れつつ不気味な部屋からの脱出をめざす、シンプルな操作性のアクションパズルです(公式ジャンルは『サスペンスアドベンチャー』)。

 

 

こだわりぬかれた美術

 

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ステージの作り込みは圧巻の一言。ちょっとしたパズルを解いたり敵から隠れたりしながら部屋を移動していくのですが、どのステージの造形も素晴らしい!

 

「何ものか」の気配が満ちた静謐で薄暗い部屋は、歩いているだけで心地良い不安感をかき立ててくれます。濡れた床を歩くときのピチャピチャという音や、泥を踏んだあとにしばらく残る足跡など、本当に細部まで作り込まれています。

 

ホラーマニアの嗜好を分解すると、恐ろしさを楽しむ「恐怖フェチ」と、漠然とした不安感を楽しむ「不安フェチ」になると個人的に思っているのですが、『リトルナイトメア』は不安フェチ垂涎のデキです! ビックリ系のギミックはないので、安心して(?)不安を楽しむことができました。

 

 

大きく恐ろしい敵の脅威

 

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この手の雰囲気系ゲームには珍しく、「敵」がはっきりとした姿かたちを持っています。そのデザインも格別でした。一目見ただけで「こいつに見つかったらヤバい」と直感させる説得力。醜悪ながらも不快なだけでなく、どこかクレイアニメのような美しさがあります。

 

 

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立ちはだかる敵の一人である「シェフ」。うーん、ヤバい。見ただけでやっかいな存在だとわかりますよね。主人公はほとんど逃げ回ることしかできないので、近づいてきたときの緊張感は半端じゃない。「はやくあっちいってくれ~!」って机の下で心臓バクバクさせてしまいます。

 

 

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シェフ、何かに似てると思っていたんですが、ロースおじさんでした。

 

 

細やかな作り込みの短編ゲーム

 

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私はスーパーマリオシリーズを大きく苦戦することなくクリアできる程度の腕前なのですが、総プレイ時間は所々でちょっと悩みつつ進めて3時間ほどでした。2000円以上するゲームでこのボリュームは短く感じるかもしれませんが、この世界を何十時間も彷徨いたいか? というとそんなことはないので、適切な短さだと思います。映画をじっくり鑑賞する感覚で、休日を利用して一気にクリアするのがオススメです。

 

 

『リトルナイトメア』の新しさ

 

プレイして、今作のどんなところが独特だと思ったかについて説明します。

 

欲望に囚われた大人たち

 

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『リトルナイトメア』では、操作説明を除いて文字が出てきません。ストーリーも輪郭を匂わせる程度で、具体的なことはなにもわかりません。かといって、雰囲気だけのゲームでもありませんでした。ゲーム全体を通して貫かれているテーマのようなものははっきりと受け取れます。

 

そのテーマは「欲望」です。

 

 

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進行を阻む敵たちは「欲望」(とくに「食欲」)に囚われた大人を戯画化した怪物に見えますし、子どもの主人公もときどき強烈な「飢え」に襲われます。人が欲望することへの原初的な嫌悪が悪夢を通して描かれているゲームなのです。

 

さんけい スタジオジブリmini 千と千尋の神隠し 両親、豚になる ノンスケール ペーパークラフト MP07-56

 

たとえるなら『千と千尋の神隠し』の冒頭シーン、両親が屋台の食べ物を貪り、ブタに変身してしまうところ。すごくイヤな感じがしませんでしたか? 大人がケモノのような一面を持っていることへの拒絶感は、誰しも子ども時代に心当たりがあるのではないでしょうか。

 

 

『リトルナイトメア』の美術や演出に『千と千尋』の影響を感じるのは、おそらく偶然ではありません。このゲームではオマージュするだけでなく『千と千尋』で描かれたモチーフをさらに深く捉え、欲望を取り込んで大人になってゆく子供の通過儀礼を描いているようにも見えました。

 

 

割り切って組み立てられたゲーム性

 

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少し気になったのは、「アクションパズルゲーム」として見たときの目新しさの欠如です。『リトルナイトメア』は『ICO』『LIMBO』『INSIDE』などの先駆的な雰囲気ゲーの延長線上にあるのですが、既存のシステムをそのまま流用しているなという感じがしました。

 

 

走る、ジャンプする、障害物を押す、物を運ぶ、よじのぼる、といったアクションを組み合わせた簡単なパズルも、ちょっと食傷気味なのが正直なところです。プレイ中「木箱を押してあっちの段差をのぼるのね、ハイハイ」と何度か思ってしまいました。

 

ただ、そこは欠点というよりもあえて割り切っているといえそうです。『LIMBO』『INSIDE』のパズルは独創的で凝った物が多いのですが、反面、行き詰まると同じ箇所を繰り返すことになり、雰囲気が壊れて「ただのゲーム」になってしまうリスクがあります。繰り返せば不安は薄れるのです。

 

『リトルナイトメア』のパズル要素は最小限で、少し考えて操作を誤らなければ簡単にクリアできるものばかりです。それゆえ没入度(プレイヤー=主人公という実感)が高い。

 

 

ゲーム性とアートが調和した上質な雰囲気ゲーム

 

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『リトルナイトメア』はお手本のような「雰囲気ゲー」です。ときに揶揄されることもあるジャンルですが、今作は不安に満ちた雰囲気とゲーム性とがうまく噛み合い、ほかにない調和を生んでいます。映像作品では代用できないハラハラと感情移入を楽しめる、ゲームならではの良作短編だと思いました。大好きです。

 

 

『Little Nightmares(リトルナイトメア)』は、PS4版とPC(Steam)版が配信中。
どちらも日本語化されているので、気軽に遊べますよ!

 

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