はじめに

 

こんにちは、株式会社バーグハンバーグバーグのまきのです。

 

2017年の1月27日に、「ドクター・ストレンジ」という映画が公開されます。

 

この映画は「アイアンマン」とか「キャプテン・アメリカ」などのマーベルスタジオの実写映画プロジェクト「マーベル・シネマティック・ユニバース」のシリーズ最新作で、ベネディクト・カンバーバッチ扮する脅威の魔術師ドクター・ストレンジがなんやかんやするアクションエンターテインメント映画となっております。

 

 

 

 

で、仲良くさせてもらっている映画配給会社の方から、これの「日本語吹き替え版の声優をやってみませんか？」というお声がかかりました。

 

このわたしに、です。

 

声優の経験は全くありませんが、50年後には死ぬ運命にあるので引き受けることにしました。

 

 

 

 

 

吹き替えに挑戦しよう

 

というわけで、某県・某所。とあるスタジオ兼平原に招待されました。

 

 

 

 

スタジオ内部はこんな感じ。平原の真ん中にあるとはとても思えない録音スタジオです。背後には機材部屋がガラス一枚を隔てて隣接しており、録音中はわたしの背中にスタッフ全員の視線が集中します。

 

そんな中、いただいた台本の中に書かれていたわたしのセリフはこちらでした。

 

 

 

 

 

 

 

ほとんどうめき声なんですけど！？！？！！？！？

 

あと初心者にとってはうめき声は難しすぎるでしょ。ねえ。「ここは◯◯の町です。」っていうだけの住民いないの？それだったら喜んでやるけど。一気に緊張してきましたわ。普段出したことのないうめき声や殴られた声を大勢の初対面の人前で背中に視線を感じながらやるんですよ。蛇口をひねったかのように脇汗が出るのを感じました。両脇から。

 

 

 

こちらが吹き替えの監督を多く手がける岩見さん。15分ほど、演技指導や台本のチェックなどを行います。ほとんどがうめき声とはいえ、やはり違和感があるとそこで観客の耳障りになってしまうので、自然に演技をすることが必要です。

 

「吹き替えをあてる元の俳優の目、表情、声の質など、全てをようく観察して、どういった声色にしたらいいかを模索してみてください。初めてということもあるので、元の映像は何度でも見て練習して大丈夫です。映像の中に全てのヒントはありますので」

 

た、たのもし〜〜〜！

 

 

 

 

「顔を掴まれて息が詰まる時はこんな感じです。どんな声になるでしょうねえ？」とわざわざ実践していただきました。まさに気分はVRの世界です。

 

 

 

 

さて、イヤホンをつけて何度か映像を見ながら、何度か練習します。

 

 

 

 

やんちゃな髪質のおかげでめちゃめちゃ頭がへこみましたね。

 

 

 

 

ゴロツキ男としてのイメージを固めているフリをして、いよいよ録音です。

 

 

 

 

「時計だ」…「時計だ」

「はい、では映像に合わせて聞いてみましょう」

 

 

映像「時計だ」…「時計だ」

 

 

「聞いてみてどう思いました？」

「あ…全然迫力が無いですね…あと自分の声きもいっすねタハハ（笑）」

「それもあるんですが、二回目の『時計だ』の言い終わりが早かったですね。もう一回やってみましょう！」

「時計だ」…「時計だ」

「あんまり変わってないですね〜（笑）もう一回やりましょうか」

「タハハ…（＾＾；）」

 

 

 

 

大勢の人々の視線が背中に突き刺さりまくる中、ゴロツキ男の声を当てる作業。めちゃめちゃ緊張しましたね…。こんなことある？部屋で横になって映画を見ているうちにちょっと昼寝してしまう役どころだったら毎週演じているどころか実際にやってるので完璧に声をあてることが出来るんですけど、どうやらドクター・ストレンジにはそういう役は無いみたいです。

 

その後、何回かやったあといつしかOKテイクが取れたので、次の段階へ。正直どれが良かったか全くわかりませんでした。

 

 

 

 

 

うめき声を収録しよう

「じゃあ、次は、殴られるうめき声を録りましょう。そこの赤いランプが点いたら何回かうめいてください」

「え、何も映像見ずに何回かうめき声を上げるの！初めて知った〜〜！はっず〜〜〜！！緊張〜〜（どんだけ〜と同じトーンで）！！」

 

 

 

 

 

 

（赤いランプ点灯）

 

「ウオァ…！！アァ…！！ウゥェ…！！アァ…！！アァ…！！！アァ…！！！」

「ありがとうございます！最後らへん全部同じでした！」

「無くなります！うめき声のレパートリー少ないから、やがて無くなる！！」

「もう一回やって何パターンかいただきます！」

 

 

（ランプ点灯）

 

 

「ウガァ…！グアォ！！グエェ！！ガハァ…！！ハイィ…！！」

「最後普通に『ハイ』って言っちゃってますね（笑）」

 

 

 

 

なんかもうごちゃごちゃになって「ハイ」って言ってしまいました。でも皆さんに問いたい。日常的に殴られてうめき声をあげてます！？あげないですよね！？日常的に殴られている方がいたらそれは申し訳ないんですけど、質実剛健に生きてまいりましたのでこの非日常のシーンはマジに緊張しました。

 

そんな感じで同様に「袋叩きにする声」「息が詰まるうめき声」、「最後のうめき声」を何とか収録して終了しました。

 

 

 

 

 

おわりに

 

少ないセリフとほぼうめき声の担当だけだったんですが、率直な感想は「プロはすごい」ということです。

 

たった一言（とうめき声）にも関わらず、これだけの時間と労力を要し、体力もグングン削られ脇汗がどんどんシャツに吸い込まれていったんですから、主役を張る声優さんの仕事量たるや想像するだけで失禁してしまいそうです。きっと脇汗対策として替えのシャツを何枚も用意していることでしょう。そんなプロの方々が魂を込めて吹き替えまくった「ドクター・ストレンジ」は、1/27に公開されます。

 

以下、あらすじと試写会にて見させてもらった感想です。

 

 

 

 

 

あらすじ＆感想

 

【あらすじ】

天才脳外科医だが高慢ちきなストレンジ博士は、ある日 自動車事故でその神がかった両手がめちゃめちゃになり、以前のような精密に動かすことが出来なくなってしまった。金に糸目をつけずに治療しまくるがそれでも良くならず、自暴自棄になり、貯金もつき、恋人にも愛想を尽かされかけていた。そんな中、どんな傷も治す魔術師の存在を聞きつけて藁にもすがる思いでチベットへ。そこで出会った魔術師エンシャント・ワンの導きにより科学では説明のつかない超次元の存在を知ったストレンジは、治療と並行して魔術のいろはを教わるのであった…。

 

 

【感想】

エンシャント・ワンの魔術（＝試写会）にて一足早めに観賞させていただきましたが、おもしろすぎ！！漫画原作で、これで初めてドクター・ストレンジを知る人もいるだろうに、ここまでストレス無く面白く仕上げてくれるマーベル、マジでバランス感覚すごすぎる！

開始3分でいきなり誰も見たこともないほどの超次元バトルが展開されて目が一気に釘付けになり、そこからストレンジ博士をはじめとする登場人物のキャラ説明が非常にスムーズに分かりやすく展開されて、鍛錬につぐ鍛錬を丁寧に描写してからの「闇の魔術」の詳細、そして世界の破滅から人々を救う超絶アストラル次元バトル！こいつは興奮しないわけがない！

 

 

 

街が、空間が、重力がねじ曲がった中を歩き回るシーンはエッシャーの錯視の世界を歩いているかのようなワクワク感とドラッグをキメてしまったかのような映像美で口はもう開きっぱなし。これだけは実際に見て体験した方がいい…圧巻としか言いようがないので。で、肝心のストーリーはというと勧善懲悪ではなく善の追求が過ぎる余り、時に悪になりえるよね〜というところに触れているというところも単純ではなくて良いです。といってもそこまで重くせずにユーモアを散りばめてエンタメ感を強めているのも最高です。1/27公開ですが、すでに全世界で大ヒットを記録しているのも納得。すぐに見に行きましょう！！

 

ちなみにわたしが吹き替えを担当したカトマンズのゴロツキは、開始後20〜30分ぐらいで登場します。実際に完成版で見てみたら音楽や効果音のおかげで違和感は全く無かったのですが、そのシーンの時だけめちゃめちゃ恥ずかしい気持ちになりました。吹替版で見ていただいた方におかれましては、果たしてわたしがストレンジの時計を奪うことが出来るのか？という辺りも含めて楽しんでいただければと思います。

 

それではさようなら。

 

 

 

▼公開情報
┃タイトル：『ドクター・ストレンジ』
┃公開表記：2017年1月27日（金）全国ロードショー
┃配給表記：ウォルト・ディズニー・ジャパン
┃著作表記：（C）2016MARVEL
┃公式サイト：Marvel-japan.jp/Dr-str