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ゆば座と申します。2012年からボカロを聴き続けています。

僕は1998年生まれなのですが、同世代の友人との会話でありがちなのが、

「ボカロね、全盛期の頃は聴いてたな」

みたいな発言。

うるせ~~~~! 全盛期は今じゃい!!!!

こういう場合、友人の言う全盛期とは大抵2010年代前半を指していることが多いのですが、それはお前がたまたまその時期にボカロにハマっていただけとちゃうんかい!! 自分が情報収集しなくなって観測範囲から外れていっただけのものを衰退と誤認してませんかって話!!!![1]

『超かぐや姫!』で“あの頃”の楽曲がフィーチャーされていることに喜ぶのも大いに結構なのですが[2]それよりさあ、最近の曲、聴こうよ!!!

ということで、この記事では最近5年以内に投稿されたボカロ曲の中から、僕が特にアンテナを張っている「かわいい系」の楽曲を5曲紹介します! 気になった曲は、ぜひニコニコ動画かYouTubeに飛んで再生してください!! 曲を聴かずにこんな音楽素人が書いた紹介文だけ読むっていうのが一番意味ないから!

紹介した曲はニコニコ動画YouTubeにまとめてあります。今このリンクを開いて曲を聴いてくれれば僕の役目は果たされたようなもので、もはやこの記事は読まなくても大丈夫です! 紹介文は曲・歌詞・映像のネタバレを含むので、そういう意味でもこの記事を読むのは後回しにすることが本当は望ましいと思います。

2年前にも似た趣旨の記事を書いたことがあり、そのときは再生数4桁を目安に選曲したのですが、今回は数字を気にせずに本当に好きな曲を選んだら3桁~6桁にバラけました。

☆注意事項☆

  • 紹介した楽曲のコメント欄でこの記事に言及するのはご遠慮ください
  • クリエイターの方々のお名前は敬称略で、動画説明文等での表記に準拠しています
  • 紹介文中、作者の意図を誤解している箇所があったらすみません
  • 記事タイトルは「ボカロ曲」としていますが、VOCALOID以外の歌声合成を利用した楽曲も含まれています

曲紹介

パノラマ

作:てんき
歌:めろう
 

パキッとしたピアノが特徴の渋谷系の楽曲。ボーカルは「めろう」という歌声ライブラリなのですが、落ち着いたお姉さんみたいな声質がかなりマッチしている一方、歌詞は突飛でコミカルでちょっと不気味というギャップが面白い!

特に気持ちいいのはやっぱりサビで、4拍目の裏に軸足をおいたハイテンポのシンコペーションですいすい進んでいくのが楽しすぎる! 推進力抜群の一方で、実はかなり予想外の音程に着地し続けるという離れ業を毎フレーズ成功させていて、ジェンガの終盤みたいな緊張の連続が楽しめます。これにはドパガキの僕もニッコリ。可愛いサウンドの裏で和声的にはかなり変態なことをやっているとお見受けします。

歌詞の方も「大地に降りそそぐ粗大ゴミ」「虹の上でテスト用紙が爆発したわ」のような絶妙に予想できない単語の組み合わせがたくさん登場して楽しいです。

 

SWEETEST COLOR

作曲・動画:B9☆
作詞:B級
 

 

素直になれない女の子視点の、王道の甘酸っぱラブソングです。
一人で悶々と悩んでいるAメロは伴奏の楽器も少なめなのですが、恋が急に進展しそうな「突然 鳴りだす 君からの着信」で、明るいシンセが入ってきてドラムもノりやすい4つ打ちになるので、伴奏パート全員が「行けるぞ!!!」と背中を押しているみたいで楽しい! キミもこの曲を再生して一緒に恋を応援しよう!!

曲中の半分くらいは歌唱がラップ調なのですが、その歌詞やリズムもいちいち気持ちいい!! 「イニミニマニモ」と「右に左も」で完全に韻を踏んでいるのが特に好きです。
※イニミニマニモ……英語で「どちらにしようかな」的な表現。Eeny, meeny, miny, moe.

 

パステル

作:しいか
歌:初音ミク
 
 

初音ミクの透き通るような高音がとにかく美しい!! 音符と音符の間に無声音を挟むような歌い方がクセになる曲です。
曲は非常にハイテンポでドラムもギターも激しめなのですが、なぜか「静かな曲」という印象になってしまうくらい繊細な音でできています。

特に、サビのメロディに登場する音列のすべてが僕の涙腺に直接ぶっ刺さりました。「泣けるメロディ」というのは、スケール外の音(楽譜で書くと♯や♭が要る音)が入っていることが多いのですが、その使い方が全部天才です。初めて聴いたとき、サビ前半の時点で好きを確信していたのですが、サビ後半のたった一音、「届くまで伝えて“よ”」の音に、前半にはなかった泣き要素の「♯」が追加されているというダメ押しを食らって[3]、完全にガチ恋してしまいました。

歌詞もとても素敵で、未来への不安や恐怖に対して「キャンバスはまだ埋まっていない ここじゃあ終われない!」という歌詞で背中を押してくれます。

アルゴリズムのきまぐれ

音楽:maigo
イラスト:余冥
動画:ʟᴏꜱᴛ
歌:ナースロボ_タイプT
 

僕たちが今生きている、2020年代のインターネット。読者の皆様におかれましても、XのおすすめTLやショート動画のような、僕たちを中毒にするために設計されたアルゴリズムに蝕まれながら生活していらっしゃることと存じます。そんな現代インターネットを、クールなサウンドと滑らかな旋律に乗せているのがこの曲です。「この曲が流れているのも アルゴリズムの気まぐれ」という自己言及的な歌詞が象徴的。

一方、ボーカルはUTAU版の「ナースロボ_タイプT」が使われています。機械学習ベースのリアルな歌声合成ではなく、収録された音声を一文字ずつ加工してつなげる古典的な歌声合成手法です[4]。そのおかげで「アルゴリズム」というテーマにピッタリの無機的な歌声になっているのですが、どこか優しい温かみもあるのが素敵。

そして、動画はさらに時代を遡り、90年代のWindowsをコラージュしたレトロなデザインになっています。つまり、歌詞・歌声・動画からいろいろな時代の「テクノロジー」がごっちゃになった概念を一気に楽しめるんですね!

 

スモーキィクォーツ

音楽・動画:小宮かふぃー
子供が描いたような絵:晴いちばん
歌:初音ミク
 

これは、もはや映画です。たった4分半に、超かぐや姫!級のストーリーが凝縮されています。絶対に観たほうが良い。

登場するのは、宮殿に住む幼い王女と、庶民的な怪盗のお姉さん。宮殿に侵入した怪盗はなんと王女を連れ去ってしまい、二人の共同生活が始まります。そこで生まれる奇妙な信頼関係と、やがて訪れる別れ。再会の約束を果たすことはできるのか!?

楽曲だけでなく、可愛くて柔らかい絵柄の手描きアニメーションも一人で作っているというのだから驚き。いったい何枚描いた??????

西洋風の風景を感じさせるオーケストラ編成は壮大でありながらポップでもあり、僕の中の「聴きながらつい指揮者の真似をしてしまう曲ランキング」堂々の第一位です。

冒頭は妖しげなアコーディオンのフレーズから始まり、映像の色合いもちょっと不穏な感じ、描かれる人物の表情も曇り気味。最初の約一分はずっとそうなのですが、サビに入った瞬間に一転。雲が晴れるかのように楽曲全体が明るい雰囲気に変わり[5]、「明るい色の背景+人物の笑顔」というカットが初めて描かれます。その明転の瞬間の歌詞が「眩しくて」なのは、完全に計算し尽くされている。ただ音楽と絵が上手いだけじゃなくて理詰めで設計できるんかい!!!!

(さらに雑多な感想:クリックで展開)

実はこの曲はYouTubeでもニコニコでも10万回以上再生されているので、僕が紹介するまでもないかもしれません。ただ、逆に言うとこんなに素敵な曲を聴いた人が10万人しかいないというのは深刻な社会問題だと思うので、問題提起の意味も込めて紹介しました。

オモコロ読者なら一発でイメージできるように勝手に他のオモコロライターの名前を出すと、橋本ライドンさんの漫画が好きならこの曲も好きだと思います。

最後に、本当に僭越すぎるのですが、この曲の好きな旋律ベスト3を発表します。耳に自信がないので楽器名は間違ってるかも。

  • 2番のAメロ4小節目の「受け取ったものは確かだ」のあとに入るサックスの対旋律。来世はサックス奏者になってこれ吹きたい。5,6小節目は歌が入ってくるから音量的には譲りつつも、本当は俺のフレーズを聴いてくれって思いながら吹きたい。
  • ラスサビの終わりの小節で半音ずつ駆け上がるアコーディオン。歌が終わっても楽器だけでもうひと展開作るぞという気概を感じる。物語的にも、「…大人になったらね!」という約束は果たされるのか!?という山場が残ってるからね。
  • 間奏のピアノソロ、細かいリズムでスケール外の音を踏みまくっているのになぜか調和していて不思議すぎる!!来世はピアニストになってこれ弾きたい。
  • アウトロ5,6小節目、主旋律を1.5拍遅れで追いかけるチューブラーベル(のど自慢の鐘のことです)。来世はチューブラーベリストになってこれ弾きたい。

 

おわり

好きなボカロ曲がまた出てきたら発表します。

 

 

脚注

  1. 僕が最近こそボカロの全盛期だと主張するのは、YouTubeで1億再生を超えるメガヒットが続々生まれている(=一部のプロが鬼バズりしている)ことや、ボカコレの投稿数が2025年に過去最高を更新した(=アマチュアの新規参入も盛んで文化としての裾野も広がっている)ことを根拠にしているのですが、マジレスすると指標によっては2010年代前半を全盛期と主張することもできてしまいます。
  2. 超かぐや姫!をクサしたいわけではないです。僕は気に入ったので2回観ました。ワールドイズマインのライブシーン、ガチかっけぇよな。 
  3. コードがIII7のとき、メロディに含まれるソの音をコードに合わせてソ♯にしてしまうと味が濃すぎてしまうからか、♯を付けない場合が多い気がします(この解説記事でいう「ソ♯のキャンセル」)。この曲は、「サビの前半はソ♯をキャンセルしたのに、後半はキャンセルしない」という構成で予想を裏切ってくれているんですね。 
  4. ナースロボ_タイプTのUTAUは連続音なので、厳密には「一文字ずつ」ではないかも。
  5. ロ短調から同主の長調への転調。冒頭の妖しげなアコーディオンと同じモチーフの旋律が長調になってサビのメロディとして登場するのも、伏線回収感があって気持ち良い!