寒くなってきた。
朝などは、寒過ぎて布団から出られなくなる。
だからと言って、いつまでも布団の中で丸くなっていたら、そのうち球体になってしまうかもしれない。
球体になってしまったら、回転させられるだろう。
ちっちゃい穴とかに入れられる可能性も出てくる。
何かの象徴としてどこかに展示されてしまうことだってあり得る。
そうならない為にも、布団を出なくてはいけない。
だが寒い。寒くて布団を出られない。
そうだ。こんな時は、「寒い」という意識を、それに勝る別の意識に集中することで、忘れ去ると良いのではないか。
例えば「茶色い」という意識に集中する。
ゆっくり、這うように布団を出たら、「寒い」と感じるより先に、まず床が「茶色い」ことに着目する。「茶色い」という意識を持つ。
そのあとだんだんと、「寒い」ことに気付きはじめるかもしれないが、「寒い」という意識に負けないように、「茶色い、茶色い、茶色い」と、強く、何度も、床の茶色さを再認識し続けるのだ。
「茶色い、床、茶色い、床。」
と実際に声に出すことで、より強い意識を持つことができるだろう。
床、茶色い、床、茶色い、床、茶色い、床…
そうつぶやきながら、床を見つめながら、じっと待つのだ。
春が来るのを。
(旧アキヒトの日記)