それは、その時から始まった。いや、その時になってようやく私が気付いたのかもしれない。

ともかくそれは始まっていたのだ。

 

今日は午後から兄との待ち合わせがあった。一般的に見れば私達の兄弟仲は良い方だろう。

今日も二人で駅近くのバッティングセンターに行く予定だった。駅前には私が先に着いた。待ち合わせの時間通りだ。

 

木の下にあるベンチに座り、人もまばらな駅の入口に目を向けていた。兄はいつも決まって7分ほど遅れてくる。

実家で一緒に住んでいた頃は同時に家から出るので、兄のこういう特性に気が付かなかったが、もうそれにも慣れてしまった。

遅刻に対してどうこうという感情も持っていない。

 

そうして待ち合わせ時間から7分ほどたったころ駅の入口から出てくる、兄らしき姿を見つけた。

兄も私を見つけたようで、手を振りながらこちらへと駆け寄って来た。

その時だった。

 

「ごめんごめん!お待たー

 

 

??????????????

は??????………は?????????

 

状況が飲み込めない。いや、何が起きたのかはしっかりと見ているが理解が追いつかなかった。

突如現れた穴に、兄が吸い込まれた。は????

 

呆然として、しばらくベンチから立てなかった。

ふと我に返り、とっさに周囲を見回しても、兄の姿はどこにも無い。

 

…ドッキリ?いや、個人で出来るレベルのものじゃない。たとえテレビ番組のような組織の技術力でも難しいだろう。空間に穴を出現させ、そこから人を吸い込み消失させるというのは。

誰か目撃者はいないのだろうか。

それは、何かの手がかりというよりも、感情を共有できる相手がいてほしいという気持ちの方が強かった。

だが、まばらに行き交う群衆の中にそれらしき人は居らず、いつもの駅前が広がっていた。

まるで兄の存在だけがこの世界から抜き出されたかのように。

 

 


 

その後、辺りを探したが見つからず、携帯電話に連絡を入れたが返事は無かった。

途方に暮れた私は一度、家に帰ることにした。

夢かもしれない。

帰路の中、揺れるように歩みを進めながら、私は薄い希望を抱いていた。

意識ははっきりしている。だが、自分を納得させる為の説明がそれ以外思いつかない。

夢。それで全て解決する。答えに到底たどり着けないことを考えるのに、もう疲れていた。

 

家に着いた頃には夜も深まっていた。

古いアパートの一室、鍵の掛かってない扉を開くと、同居している友人の田中が居間に敷布団を引き、寝る準備をしていた。

 

「遅かったじゃん。兄貴と会ってたんだろ?…どうした?何かあった?」

 

遅い返答と私の表情から、田中は何かをさとったようだった。

数年一緒に暮らしている相手だ。感情の変化も敏感に気付くことが出来る田中に、私は少し気持ちがほぐれ、今日起こった出来事を話そうとした。

 

だが、やめた。

「兄が空間に現れた穴に吸い込まれて消えた」。

こんな事を誰が信じると言うのだろうか。もし、冗談として否定されでもしたら、胸が張り裂けそうだった。

それに、これは夢なのだ。眠りから覚めたら無くなる出来事を、あえて話す必要がない。

話すとしても、それは現実で、この夢が終えたときだ。

 

「…明日話すわ」

 

嘘ではない。もし明日、目覚めても夢じゃ無かったとしたら、兄が穴に吸われたという現実を一人で抱える事ができないからだ。

電気を消し、布団も敷かず、服もそのままに横になった。

一刻も早く夢から目覚めたかった。目覚める為に眠りについた。

 

「おやすみ…」

背中越しに、田中が呟いた。私は返事をしなかった。

すぐにでもこの世界から抜け出したかったから。

だが、それが間違いだった。私は、田中に目を向けるべきだったのだ。

 

 


目が覚めると、朝だった。

 

眠りにはつけたようだ。ぼんやりとした頭に、沸々と緊張感が湧き出てきた。

スマホをつけると、その日付は兄と約束をした日の次の日だった。明日だ。明日が来てしまった。今日は昨日と地続きの1日なのだ。

脳裏に昨日の出来事が、くっきりとした輪郭を持って浮かび上がった。

 

現実だ。

兄は突如現れた穴に吸い込まれ、消えた。これは現実なのだ。

急激な焦燥感に襲われた。どうにかしなければいけない。

何を?どうやって?

穴に吸い込まれた人間を探す手だてが存在するのか。誰かに相談…田中。そうだ、田中に話そう。

田中の寝床に目をやると、そこに田中はいなかった。いつもならこの時間、田中はまだ寝ている。部屋の中にも気配は無い。ふいに不安がよぎった。

 

単に出かけているだけかもしれない。だが、人の形に空洞を保ったままの田中の布団を見ると、穴に吸い込まれた兄の姿に田中が重なって見えた。

 

ドン!ドン!ドン!

 

扉を叩く音で反射的に振り返った。田中…?やっぱり出かけていただけだったのか。

…いや、田中だったら扉を叩く必要はない。だとすると誰だ。…兄か?

理屈は分からないが、あの穴の先から兄が戻ってきたのかもしれない。私は急いで扉に向かい、胸を落ち着かせ戸を開いた。

 

「ごめんなさい…」

 

目線を下にやると、薄毛の中年男性が正座していた。

彼は隣に住む芝野さんだ。

どうしたのか聞くと、先日私が芝野さんに貸した1万円の返済日が今日なのだという。

確かにそんな事があったかもしれない。だが、今はそんな事に感情を割く余裕がなかった。今日中に返すことが出来ないので頭を下げに来たのだという。

 

「オレ最低だよね…おじさんなのに…最低おじさんだ…」

 

うるさ過ぎる。

1万円で土下座しようとしている。いつもなら止める素振りをするが、今はこの人に構っている時間は無い。サクッと土下座させて帰ってもらうしかない。

 

 

「誠に申し訳ありませ―

 

吸い込まれた。最低おじさんが吸い込まれた。一万円を返すことなく。

 


少しの間あっけに取られていたが、これで確信した。

突如現れた穴に人間が吸い込まれる。この現象は確かに存在する。

ゆっくりと戸を閉め、その場に佇んだ。

私はこの現象と向き合わなければならない。その真相を必ず突き止める。そう決意し、私はスマホを手に取った。

まずは情報だ。この現象は確かに存在する、ならばこの現象を目撃した人、経験した人、欲を言えば真相を知る人がいるかもしれない。

そう思い、ネットで検索をかけてみたが、私が望むような情報は出てこなかった。さっそく行き詰まってしまった。

 

誰か、この手の情報を持っていそうな人物…。一人思い浮かんだ。

大学時代の友人、タケル。

確かオカルト研究会に属していた。

行動を共にする同じグループにいたので連絡先を知っているが、特別仲が良いと言うわけでは無い。正直に言えば少し苦手なタイプだった。

だが背に腹は変えられない。タケルに連絡を取り、オカルト系の話で会って話したい事があると伝えると、応じてくれた。

今から会ってくれるという。場所は、駅前。兄が吸い込まれた、あの場所だ。

 

駅前に着くと、タケルはもう居た。

「久しいね。昔話は結構。超現実のこと、お聞かせ願えるかな」

そうだ。この感じだ。大学時代の感情が蘇った。何か喋り方キモいんだよなコイツ。

超現実とはオカルトの事らしい。オカルトは現実の事なので、現実を一歩超えた現実、超現実という事なのだそうだ。

それを世に広める活動をバイトをしながらやっているという。

昔は内心馬鹿にしていたが、今は違う。現に私がその超現実を目撃しているからだ。

タケルなら力になってくれるかもしれない。立ち話もなんなので喫茶店に入ろうとタケルを誘った。

 

「う〜ん」

 

これも久しぶりに見た。

タケルは「う〜ん、オッケー」と、一度悩む素振りを見せてから了承するというのを、やっていた。

何かはわからないが結構な頻度でやっていた。

それを久々に会ったら、まだやっていた。

 

 

「う〜ん、オッケ

 

あぁ…

 

まぁ、いいか。

 

 


駅前で立ちつくしていると、道路沿いに建つ雑居ビルの2階に『探偵事務所』の文字を見つけた。

手段を失った私は、ダメ元で訪ねてみる事にした。

 

1階の狭いエントランスでは管理人らしき人が掃除をしていた。

軽い会釈をしてその横を通り過ぎ、階段で2階へと向かった。

 

『金田 一探偵事務所』

 

と、書かれた擦りガラスの小窓が付いた扉を開き中を覗くと、書類やダンボールが雑多に置かれた狭い室内にソファーとテーブルが簡易的に並べられていた。

その奥のデスクに座っていた男が私に気づいた。それに続くように立って書類を整理していた男が私に気づき、話しかけてきた。

 

「何か、ご依頼ですか?」

 

私は今までに起きた全ての事を話した。話すことで少しでも楽になりたかった。

真実にたどり着く為にはなりふり構っていられなかった。

 

話しを終えると、デスクに座っていた探偵の男と立っていた助手の男は顔を見合わせた。

頭のおかしい人間だと思われたのかもしれない。無理もない。逆の立場だとしたら私も信用していないだろう。

少しの沈黙があり、口を開いた探偵から出た言葉は意外なものだった。

 

「その依頼、お受けしましょう。」

 

その返答に驚き、自分から言い出した事なのにもかかわらず、この話が信用出来るのか尋ねてしまった。

 

「その現象を真正面から信用するかどうかはさておき、私は探偵です。そうなった原因、真相、つまりは犯人を突き止めるのが私の仕事です」

 

涙が出そうだった。一人で抱えていたものを共に支えてくれる人がいる事でこんなに心が軽くなるとは。これが仲間というものか。

 

「お兄さんが穴に吸われた現場ってすぐそこの駅前なんですよね?」

 

助手が聞いてきた。正確な場所を伝えると、

 

「僕、確認してきま

 

 

えっ、あっ!ホラ!見ましたか探偵さん!

不謹慎にも助手の無事よりも、探偵に現象を直接目撃してもらえる機会が訪れた事にテンションが上がってしまった。

しかし、探偵は俯いて机に広げた書類を見ていた。

「はい?」

 

いや、今助手の方が…と言ったところで、探偵が、不敵な、どこか哀れむような笑顔を浮かべている事に気付いた。

そして、少しの間を置いて探偵が口を開いた。

 

「そうですね…話を聞いたところによると、穴に吸い込まれた、あるいは吸い込まれたかもしれない人は全員あなたの知り合いなんですよね? そしてそれが、あなたの周りだけで起こっている。となるとこの現象は、あなたに起こっているものなのではないですか?」

 

この現象が、私に起こっているもの…?

 

「正確に言えば、あなたの中で起こっているのではないかという事です。穴に吸い込まれて消えてしまった人達…お兄さん、友人、隣人、この方々は本当に消えてしまったのでしょうか?」

 

消えたのでないなら一体…。

 

「穴に吸い込まれて消えるというのは、あまりにも非現実的です。しかし、個人の中で起きている現実ならば説明がつきます。その方々は、本当にこの世界に存在しているのでしょうか?」

 

嘘だ…。そんなはずは…。

 

「あなたが作り出した存在が、あなたの前から消失した。そう、つまりこの現象の真相、犯人は

 

雑居ビルの一室に、ただ一人、私だけが取り残されていた。

 


 

「あなたの中で起きた事」

 

そう言った探偵までもが吸い込まれてしまった。

 

ならば、探偵は間違っていたのだろうか。

それともあの探偵や助手も私が作り出した存在で私が自らその存在を消したのだろうか。

私が私自身に気付かせる為に。

だとしたら、一体何が存在して何が存在しないのか。

皆は、本当に。私は、私はどうなのだろうか。

 

揺れる思考と共にふらつく足元で探偵事務所を出た私は、階段を使って1階のエントランスまで出た。

おぼつかない私の様子を見た管理人らしき人が、慌てて私の元に駆け寄った。

 

「大丈夫かい、君!ちょっと、ほら座って座って!」

 

私はエントランスに置いてあったパイプ椅子に座らされた。

息を荒くし、大丈夫だという旨を伝えると、管理人は言った。

 

「いいから!休んでな、休んでな、俺は吸い込まれとくから…

 

 

まただ。また吸いこまれた。私の前で。

彼も私が生み出した幻影なのか?それに彼は言っていた。

「俺は吸い込まれとくから…」と。

まるでそれが当然であるかのように。

 

一体これは何なんだ。今まで見てきた現実は本当の現実なのか。

私はいてもたってもいられず、ビルを飛び出した。

 

ビルの通り沿いは駅の側ということもあり、それなりに人通りがあった。

今や何が現実かが定まらない私でも、その光景には少しの安堵を覚えた。

 

駅がある。そしてそこに集まる人がいる。

それは共通した世界であることを象徴する証のように思えた。

あそこで何度も兄と待ち合わせをした。バッティングセンターへ行った。

あそこから家に帰り、田中と飯を食べた。芝野さんに金を貸した。その思い出は、記憶は、確かに私の中に存在した。

 

遠くで行き交う人々の中に、ランニングを着ている男がいた。

単に奇抜な色が目を引いただけで、面識がある人物では無かった。

男がふいに足を止めた。その時だった。

 

私はもう驚きはしなかった。

 


私はそのまま街を彷徨った。

商店街で開かれた、小さなお祭りのステージにいる演歌歌手が。

 

「(ありがとうございま

 

 

 

公園に併設されたバスケットコートでシュートを決めて喜ぶ選手が。

 

「イェーイ!やっ

 

 

それを応援する、プラカードを持った観客が。

 

 

家電量販店のテレビに映る、中継先の裁判所前で。

 

 

 

植え込みの枝の先で、私を威嚇するカマキリが。

 

 

 

皆一様に自然であった。

吸い込まれる者も、それに抗うことは無く。

それを見る者も、あるものがあるように、それを受け入れていた。

 


確かに、私の現実だけが人と違っていたのかもしれない。

その現象は、ごく普通に当然の理として、この世界に存在していたのだ。

ただ、風が吹くように。

 

そうしていると、私の目の前に穴が現れた。

 

不安は無かった。私がその現象を受け入れたからだろう。単に、私の順番が回ってきただけなのだ。

不思議と気持ちも穏やかだった。

私の両足が地面から離れ、体が浮き上がる。そのまま穴へと吸い上げられ…

 

いや、どっちかにして!

吸うなら吸う!吸わないなら吸わない!

遊ぶな!俺で!穴風情が!

 

結局私が吸い込まれることはなかった。何故だかはわからない。

だが、きっと考えることではないのだろう。まだ、私の番ではなかった。それだけのことかもしれない。

 

ふと、亡くなった父の事を思い出した。父は穴に吸い込まれて消えたわけではない。この世界で病気を患い、死んだ。

父の魂はどこへ行ったのだろうか。それは穴の先にある世界と同じ場所なのだろうか。

もしかすると、父が向こう側の世界から私をこの世界に押し留めたのではないだろうか。

 

そんな事を思っていると、父の笑顔が頭に浮かんだ。

 

 

えっっ回想も?回想すら吸いこまれるの???

それはルール違反じゃない?

 

吸い込みのシステムに私が慣れきっていないというのが露呈してしまった時、向こう側から小型犬を連れて散歩する女性がやってきた。

すると犬が進む数メートル先に、またしても穴が現れた。

今度はあの犬が吸い込まれてしまうのだろう。そして、小型犬が穴の手前に来た。

 

「あら、可愛い〜」

 

何???

犬が吸い込まれるの見れると思ったら何ですか?

 

謎の中年女性が穴から現れて、また穴へと消えた。これは今までに無いパターンだ。

穴に吸い込まれる人もいれば、穴から現れる人も存在する。

だとしたら彼らは穴の先を知っている人間なのか。

一度はそのままの現象を受け入れた私だったが、新たな展開を見せた現象に、動揺を隠せなかった。

知りたい。穴の、その先を。

 

間も無く、頭上に穴が現れた。

 


 

今度こそ私が吸い込まれる番なのだろうか。

そうならば早くそうしてくれ。私はもはや、吸い込まれたいのだ。

いや、違う。吸引力が無い。むしろ少し噴射の風を感じる。これは、人が出てくるパターンのやつだ。

どんな人が、穴の先から来るのだろうか。

 

来い。来い。そして教えてくれ。

穴の先が一体どうなっているのか。どんな世界が広がっているのかを。

 

 

 

すぐ行っちゃった…。あと、全然関係性がわからない二人だったな…。

写真館から直で来たみたいな感じ…家族?家族の中からあの二人で写真撮ることある…?

なんか怖かった…関係性わからないから…………。

 

関係性のわからなさで、興奮が覚めてしまった。

呆然と歩き、たどり着いたのは、駅前にある木の下のベンチだった。

ベンチに座り、人通りの増した駅前の広場を見ていた。

また、誰かが吸い込まれていくのだろう。

それに対して、どうこうという気持ちはもう持っていない。

 

すると、群衆の中から二人の男がこちらに歩み寄ってきた。

長い前髪を流した男と、サングラスをかけた男。

歩きながら私の方を見て、前髪の男が投げかけるように言った。

 

「珍しいね、君。」

 

私に対して笑みを浮かべると、彼は続けた。

 

「人が穴に吸い込まれていく。それはこの世界において当然のルールだ。誰も気にしちゃいない。息を吐くから息を吸う。そんな風にさ、あたりまえに存在する世界の仕組みに疑問を持つ、いや、そもそも不自然に思うこと自体ありえないんだけどね」

 

私はそこでようやく気づいた。彼らは、知っている人間だ。

 

「まぁ、僕らはこの世界においてバグみたいなもんだ。だからお仲間である君に特別に教えよう。穴の先が、いや、この世界がなんたるかをね。」

私は彼から目を逸らさず、静かに耳を傾けた。

 


「たとえば、映画とかのフィクションで、こういうのを見たことがないか?『僕らが人間として住むこの世界は、さらに上の高次元の世界の中で、その世界を模して作られた箱庭だった』っていうようなオチのストーリーを。主人公達のいる世界は、ゲームやスパコンのプログラムだったり、コインロッカーの中に存在する矮小な世界だったりね。まぁ、つまりはここもそういう世界だっていうことだよ。」

 

あまり驚きは無かった。

有無を言わさずに吸い込むあの穴に対しての説明として、高次元からの干渉だというのが腑に落ちたからだ。

 

「そう、あの穴の先の世界が本当の世界であって、ここはその世界を模した箱庭に過ぎないのだよ。」

 

…しかし、となると一つ疑問が生まれる。

この世界が上の世界を模したものであるのなら、この世界の住人が穴に吸い込まれてあちらの世界へといくことは何を意味するのだろう。

上の世界でも、さらに上の世界から吸い上げられるという現象が起こっているのか。

だとしたら、それは無限に次元から次元へと吸い上げられていく世界なのだろうか。

 

「そこで肝になるのが、この世界が意図して作られたかどうかだ。菌や細胞が擬人化され、感情や日々の生活が存在するという旨の漫画を読んだことがあるかい?あれはフィクションとして、描かれたものだが果たして本当にフィクションなのだろうか?人間が認識出来ていないだけで、本当にそういったものが存在するかもしれないだろう?我々がまさにそうだ。上の世界の人間達は、僕らに感情や生活が存在するとは微塵も思っていないだろうよ。この世界の存在意義はそこじゃないってことだ。」

 

…つまり、私達の世界から人々が吸い上げられていくのではなく、吸い上げられる為に私達の世界が作られた…と。

ならば、一体何なんだ。この世界は。

何の為にこの世界が存在しているんだ!

 

「とはいえ、ここは上の世界を模した世界だからね。この世界にあるものは、上の世界にあるものだよ。勿論、君も知っているものだ。僕らの全ては向こう側から反映されている。生活だって、流行だって、僕らの世界そのものだってね。そこに世界があるなんて考えもしないはずだ。僕らだってね…。」

前髪の男は嘲るかのような、でも、どこか哀しげな表情で微笑んだ。

 

「この世界の存在意義は、僕らの存在意義だ。世界がそうあることを望めばこそ、僕らが生まれる。そう、つまりそれは…

 

 

 

言わないんだ。

いや、でも言わなくていい。

もうわかった。いや、元々分かっていたのかもしれない。この世界の存在意義。私達が何の為に存在するのか。

 

吸い込まれることだ。

穴に吸い込まれて初めて、私達は完成する。

 

「その通りだ」

サングラスの男が初めて口を開いた。

 

「おめでとう

 

 

 

 

 

私は、私達は、この世界はー

 

 

 

 

 

 

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