さわやかな曲

加減乗除

  • 歌:初音ミク
  • 音楽:soromon advance

今これを読んでくれている読者の中には、趣味で何らかの創作をやっている方もいると思います。その中には、「今も全然続けてるけど、学生の頃に比べると意欲も熱量も……」って方も多いんじゃないでしょうか。今ビクッとなったあなたは、この曲を再生する前に心の準備が要るかもしれません。
この曲はそういう創作の世界の現実を、とてもリアルかつ的確に、そして切実に描いた曲、だと僕は解釈しました。
とくにサビ後半の

一銭にもならない音楽

…ですらない「下書き」に

毎晩と、土曜日と、日曜日を喰わせている。

そんな好きじゃない音楽に。

という歌詞は、真理すぎて目を背けていたものを突きつけられるような、暴力にすらなりうる迫力がある。
さらにニクいのは、その歌詞がとても爽やかなポップスのサウンドに乗っていること。こんなにキレイなストリングスなんだったら真っ当に青春の歌とかでいいじゃん!! 澄ました顔して多方面を刺すなし!!!

 

(▼さらに雑多な感想)

さらに、この曲は公開から3日間だけ、今の何倍もの輝きを秘めていたと個人的に思っています。

ニコニコ動画の方のサムネに書いてある「無色透名祭」。これはボカロ曲の匿名投稿イベントの名前です。ボカロ曲(に限らないけど)の評価は必然的に、投稿者のフォロワー数、絵師や動画師との人脈などに大きく左右されてしまいますよね。そういった条件を完全にフラットにするイベントが無色透名祭。参加者から寄せられた数千曲が、作者名を伏せて公開されました。

つまりこの曲、当初は作者不明だったんです。ということは、音楽で食べていこうと思っていたのに全然うだつが上がらず六畳一間で燻って「そろそろ諦めて就職しようかな」なんて悩んでいる誰かの作品かもしれない。逆に、この歌詞のような悩みとは無縁で音楽で大成功した天才が書いてる曲の可能性もある。前者だとしたら、こんなに素敵な曲を作れるクリエイターが芽を出せないこの世界を呪わなきゃいけないし、後者だとしたら、この歌詞はいよいよ皮肉で暴力的なものになる。

とはいえ、ニコニコ版が公開された3日後には作者名の公開が解禁・本人によるYouTube版も投稿されたので、作者不明ゆえの神秘性はもうないのですが。この曲の解釈がどんな方向にも分岐しうる、可能性のかたまりみたいな期間が3日だけあったということは、ここに書き留める意味のある事象だと思うし、無色透名祭の最大の価値なんじゃないかと思っています。

 

スタートラベル

  • 歌:東北イタコ & 東北きりたん
  • 作詞:みずなし
  • 作編曲:うに生姜
  • イラスト:はる
  • 動画:Nehan

フレッシュ~~~~!! 優勝!!!!!

キラキラアニソン系アイドルポップ」と動画説明文にありますが、まさにその通り! むしろ、こんなアニメは存在しないっていう事実を飲み込むのに時間がかかるまである。
歌詞、メロディライン、イントロや間奏のギターソロ……どこをとっても底抜けに明るくて元気になれる曲です。なのに、よく聴いてみるとサビのコードの運びが不思議で面白い。両手に持ったケーキを完璧なバランスで保ちながら、足場の不安定なアスレチックステージを渡り歩いてる、みたいな。
最近の流行をバッチリ取り入れて生まれた、現代アニソンの模範解答みたいな曲です。

 

レモンパイと星座の観測

  • 歌:IA & 鏡音レン
  • 作曲・マスタリング:靴紐
  • 編曲・MIX:オヨイダキビス
  • 動画:白紙ジャコウ

この記事を書いている最中にこの曲を知り、一目惚れして急遽追加しました!
まず、『レモンパイと星座の観測』という曲名。この曲の爽やかさ、甘酸っぱさを過不足なく伝えていて完璧なんですよね!!
明るくカラッとしたギターのサウンドに乗せられたボーカルは、IAと鏡音レンのデュエット。柔らかくて温かいIAの歌声(個人的にはこれだけで2014頃のボカロシーンの面影を感じてエモい)と少年らしさを感じるレンの歌声が相性抜群なのは新発見でした。相性抜群というかそもそも声質が非常に近くて、男女デュエットでありながら一体感もある珍しい聴き心地!
サビの冒頭、「僕は生きている ここに立っている」というシンプルな歌詞に対し、伴奏は少し珍しいコードから始まって半音ずつの下降を多用するというほろ苦さ。これはちょっとレモンパイすぎるかもしれない。
動画の話もします。この曲のMVのように黄色と水色で表現される清涼感のある世界が僕は昔から好きで、「色合いが可愛い」というだけの理由でこのポケットティッシュを愛用しているくらいです。
レモンの枠を活かした動画の構成もおしゃれで、サビで交差する男女の演出は「その手があったか~~!」と勝手に悔しくなってしまいました。かといって恋愛的な解釈を必ずしも押し付けてこない温度感も絶妙で、とにかく、好きです!!

 

 

おわり

好きなボカロ曲がまた出てきたら発表します。