こんにちは、サボテンを育てるのが趣味の人です。先日買った本がおもしろかったので紹介しますね。
農業世界編輯局により昭和15年(1940年)に発行されたサボテン本『仙人掌の作り方 培養秘訣』です。
オリジナルの本をスキャンする形で、Kindle書籍として出版されています。
内容は写真やイラストが少し、他は文章で、サボテンの各種類ごとに解説がされていたり、接ぎ木や繁殖方法なんかが書かれています。
この本の何が良いって、まず旧かなの文章が美しい。そして、昨今の本ではあまり見かけないハッキリした物言いが気持ちいい。
仙人掌(サボテン)の培養法たるや、容易な上に輪をかけたるが如くで、誰にも、駆け出しの素人にも立派に育てられる。
二日三日 水をやらずに放置しても枯死することは殆どないため、多忙で毎日の手入れも出来ない無精者や、水やりに不便をかこつ二階借りの生活者、アパート住まいの方々には打ってつけの鉢物といへるのです
―『仙人掌の作り方 培養秘訣』
「容易な上に輪をかけたるが如く」……素晴らしい。確かに花や野菜なんかに比べると、サボテンを育てるのはかなり楽です。
僕は他にも色々と、(現代の)植物の本を買っているんですが、大体の本は「種類によるが~~」「一概には言えないが~~」みたいな感じでフワッとした物言いなのです。実際に種類によるし、一概には言えないので、ハッキリ書いてしまった挙げ句に枯れてしまったらクレームがくるのかもしれません。
―『仙人掌の作り方 培養秘訣』
役に立つ知識も載ってます。
日本に入ってきたのは江戸時代で、オランダの船がもたらしたとか、明治時代には上流階級の間で珍植物として流行ったとか書いてあります。
関東大震災の直前頃には、今(といっても昭和15年)の100倍の値段で取り引きされることもあり、巨万の富をなしたものが少なくなかったそうです。
―『仙人掌の作り方 培養秘訣』
害虫対策。油かすでトラップを作る方法が書かれています。
そこらへんのホームセンターで当たり前に殺虫剤が売ってる現代では、あまり考えられない方法ですよね。
まあ正直、育て方とか知識の面でいうと、現代の園芸書を読んだほうがよっぽどためになります。
でも80年前……第二次世界大戦の前にも、サボテン好きな人というのはたくさん居て、「ほほう、鸞鳳玉はこのように育てるのか」とか「うわ~、冬越しのための温室欲しいわ~」とか言ってたのかと思うと、不思議な感じがしませんか?
遠い昔に自分と同じ趣味の人が居たんだっていう、そういう感覚を味わえるので、かなりオススメの本です。
え、サボテン自体に興味がない?
そんなこと言わず、一度、ホームセンターや100均でサボテンを買って育ててみてください。そうすれば……
グロテスクな形態、エキゾチツクな風貌、猟奇的な生涯、思ひもうけぬ妖麗な花
仙人掌の持つあらゆる興味に存分、浸って戴けるのです
―『仙人掌の作り方 培養秘訣』
だそうですよ!