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こんにちは、えいぞうです。

 

今日は新宿二丁目に遊びにきました。新宿二丁目というと言わずと知れたゲイタウンですね。ゲイ専門のバーもありますが、夜はいわゆる観光バーやミックスバーも立ち並び、ゲイもレズビアンもトランスジェンダーもノンケも集まり賑やかになります。

 

僕は普段歌舞伎町で遊ぶことが多いのですが、ちらちら二丁目にも遊びに来てバーで飲んだりします。普通に飲みに遊びに行くのも楽しいと思うので行ったことが無い人も行ってみるとよいと思います。

 

先日も歌舞伎町のよく行くバーで飲んでいると、同じく二丁目で飲み歩いてる常連から「楽しいお店ができたよ!」という話を聞きました。そして実際に行ってみたらめちゃくちゃ楽しかったので、今回はそのお店をご紹介したいと思います。

 

今回は賑やかな夜の新宿二丁目ではなく、昼間の新宿二丁目です。こういった情報のやり取りもあるので一人で飲みに行くお店は作っておくと楽しいと思います。

 

 

昼間の新宿二丁目にオープンしたブックカフェとは!?

 

さて、平日昼間の新宿二丁目というと、実はゲイタウンという一面は薄れてオフィス街になるのですが、その中でも昼間からやっているお店はちらちらあります。

 

今回オススメするお店は11月にオープンしたばかりのブックカフェ「オカマルト」さんです。

 

場所は新宿二丁目の中心、仲通りから一つ入った新千鳥街。いろんなバーやお店が集まった飲食街です。

 

 

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入り口手前にある「」も超絶気になりますが中に入って…。

 

 

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こちらです。昼はブックカフェ「オカマルト」、夜はバー「MSB」として営業しています。

 

 

ゲイ雑誌やゲイ文学に囲まれるブックカフェ

それではお邪魔しましょう。階段を上がって、まず目の当たりにするのはゲイ書籍や雑誌が陳列された本棚。

 

 

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ゲイにまつわる作品やゲイの作家が書いた書籍に加えて、『薔薇族』や『Badi』といった、現在も発売されている雑誌

 

さらには50年代に三島由紀夫が参加したサークル、アドニス会が創刊した『アドニス』や、現在では廃刊となった『さぶ』などが初期のバックナンバーから並んでいます。

 

 

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お店に入るとカウンターから出迎えてくれたのはママのマーガレットさん。

 

かつてはゲイ雑誌『Badi』の編集長や、タワーレコードやユナイテッドアローズがスポンサーとして参加し話題になったファビュラス』の編集長もされており、ドラァグクイーンとしても活動されています。

 

 

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レスリー・キーが撮影したアー写がこちら。知る人ぞ知る変態が集まる夜会、デパートメントHなど、いろんなイベントで司会をしていたりします。

 

そんなマーガレットさんが最近オープンしたカフェがこのブックカフェ「オカマルト」です。

 

 

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店内はカウンター席のみで、マーガレットさんが淹れる紅茶やコーヒーを飲みながら、ママや他のお客さんと話したり、本や雑誌を眺めたり。それぞれの距離も近く、お酒を飲まないバーっぽい感じがしました(お酒も置いてます)。

 

まだ整理しきれていないとのことですが、お店ではマーガレットさんが持っている1万冊を越す雑誌や書籍の中から一部を置いています。持っているものの中でリクエストがあれば持ってくることも可能だそう。

 

それではマーガレットさんにお話を聞いてみましょう。

 

 

マーガレットさんに話を聞いてみた

 

お店をはじめた経緯とは?

昼間の二丁目ってそういえば全然来たことがないんですけどオフィス街なんですよね?夜と全然色が違うかんじですね。

 

マンションの一室でやってるような会社が結構多いのよね。平日のランチタイムなんかはオフィスワーカーの人たちがこの辺りでご飯食べてるのよ。夜とは全然雰囲気が違うくてすごいわよ(笑)

 

場所は三丁目もすぐ近いしめちゃくちゃ便利ですからね。二丁目で昼間にブックカフェを開こうとしたきっかけってなにかあるんですか?

 

ここの大家さんにある日会ったら「うちの向かい開いてるんだけどあんたやらない?」って。で、夜はMSBってバーなんだけど、そこのママと昼と夜と分けていっしょにやろうかってなってね。

 

お店に並んでるのはマーガレットさんが持ってた本や雑誌ですよね?

 

実は10年ぐらい前に古書のお店を開いてたことがあるのよ。1万冊ぐらい並べて。ビルの取り壊しをきっかけにそのお店も締めたんだけど、今度は売るんじゃなくて、見てもらうお店にしてもらおうかなって思ってね。

 

本の他にも雑誌のバックナンバーが揃ってるのもすごいですすね。雑誌ってある程度読んだら基本的に捨てちゃいますからね。

 

あんたエロ雑誌なんか後生大事にとっとく?(笑)だいたい男の子ってエロ雑誌買ったらしばらくは手元において楽しんでその後は捨てちゃうじゃん。特にホモの本は今と違って昔は持ってるのがバレたら危険だったわけ。自分がホモだってバレちゃうから。だから結構捨てられてたと思うんだよね。

 

今、雑誌の状態で保存されているのが日本全国で何冊残ってるかわからないものとかありますよね。

『さぶ』だったら後半の号はあると思うけど、創刊からしばらくの号は残ってる数が減ってるんじゃないかな。

 

 

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本棚には『薔薇族』や『さぶ』、『Badi』の創刊号が並ぶ。

 

2ヶ月に1回のペースで”課題図書”と設定した特集を陳列していて、今はいろんなゲイ雑誌の創刊号を課題図書としている。

 

2月からはゲイをテーマにした絵本、4月からは東郷健を特集して陳列する予定とのこと。

 

 

このお店に置いてる本や雑誌は、ある程度自分でストックしたのを持ってきてるんだけど、お客さんからちょうだいした本や雑誌もあるのよ。だいたいゲイ雑誌っていうのは1970年代の頭ぐらい創刊していて、それを読んでた方っていうのはもうそろそろ60代とか。

 

商業ゲイ雑誌が始まった頃ですね。

 

そう。それぐらいの年になると人生の転機になっていたり。自分の身の回りを整理したりして、今度お引っ越しをすることになったから身の回りを片付けたい、って。でも今までずっと大切に取ってきたものだし、捨てるのも忍びない、ってね。たまたまここを知って、もしよかったら引き取ってもらえませんか?って聞かれて「喜んで!」って(笑)

 

 

当時のゲイ雑誌や書籍の役割

マーガレットさんが最初にゲイ雑誌に触れたのはいつごろなんですか?

 

たぶん小学校の5年生か6年ぐらいのときかな。73,4年ぐらい。

 

『薔薇族』が出はじめた頃ですね。

 

本屋さんで見かけたのよ。それまで『薔薇族』ってのはテレビで取り上げられたりしてて、子どもながらにも存在は知ってたんだけど、まぁでもまさか自分の日常生活にそんなものがあるなんて思ってないじゃん。でもよく通ってた文房具屋さんに行ったらあったのよ。もう棚のそこだけ光り輝いてたのよね(笑)

 

ぶはは(笑)小学生が接するエロ本ですね。

 

なんだけど、手に取れないのよ。まぁたぶんノンケの男の子がエロ本を買おうと思って買えないやつの50倍ぐらい手に取りにくいのはあると思うよね。それを取っちゃうと自分の人生が決定づけられちゃうわけじゃん。何度もそのお店に通っては消しゴムとか買いながらじっと見てて(笑)

 

僕も小学生のときは散髪屋さんに並んでた週間漫画TIMES(当時はエロ漫画ばかり)をちらちら見てましたね。

 

でもある日がまんできなくなっちゃって手に入れて。で、手に入れた喜びで貪るように読むわけよ。でも当時の『薔薇族』って基本的にホモは表向きに世間体を考えて、いやでも結婚はして、夜は夜で遊べばいいじゃないですか、って主張してたのよ。偽装結婚キャンペーンとかやってたり。とりあえず世間体のためにレズの人と結婚して世間体を取り繕いなさい、って。夢のある小学生の男の子が読むと人生に希望なんか持てなかったよね(笑)

 

当時のゲイ雑誌はゲイにとってどういう役割があったんですかね?エロ本であったり、情報であったり。

 

ゲイ雑誌はやっぱり通信欄、つまりは出会いよね。特にゲイみたいな孤立した存在にとっては、他のゲイと出会うのは本当に難しかったの。それを実現するための通信欄かな。

 

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通信欄。地域や自己紹介、タイプなどが掲載され、読者は気になった人にコンタクトを取る。

 

古いゲイ雑誌では欄も少なくスペックの文字だけが羅列され、出版社を通して手紙が送られる文通形式だったが、年を経るにつれてデザイン面やメールアドレスの記載など進化が見える。

 

 

あとは後ろの方に膨大に入ってる広告ね。当時広告ってのは情報だったの。もうほぼほぼバーとかハッテン場なんだけど「あ、近くの県にゲイバーがあるんだ」とかそこでわかる、情報源としての広告。だから広告だけを後ろに集めてたのね。

 

ここに行けば出会えるかもしれない。欲しい情報として広告が機能していたかんじですね。

 

そうそう。最盛期は1冊に300ページ以上広告があったのよね。あと出張の出先とかもあるかな。今みたいにインターネットが無かったからここがすごく大事な情報源だった。

 

 

記憶や体験を思い起こす媒介としての古書

この前、あるお客さんが来て、その人は探してる本があるらしいんだけど、本人も記憶が曖昧で、「どんな本?」って聞いたら「ニューヨークで」「覗き見をしているようなかんじの雰囲気がある写真が挿絵でいくつか入ってる」「(タバコの)ラークを吸う男」っていうのが言葉として頭に残ってるんです、みたいなことを言うの。

 

えらく断片ですね。

 

だいたい年がいつごろで、それを読んだのがいつぐらいで、っていう話しをしてたんだけど、その断片の情報を総合して考えると思いついた本が一冊あって、それを彼に見せてあげたら、ドンピシャで当たってたみたいで、「あーこれですこれです!」って言ってた時の喜びの顔なんかよかったよね(笑)

 

昔の記憶が思い起こされるのは良いですね。でも今のヒントでマーガレットさんがこれだ!ってのがぴたっと来たからよかったですけど、断片情報で探し当てるのはなかなか難しいですよね。

 

でもやっぱここってお客さんが本好きとかホモ好きだったりするから、それぞれが情報を持ってるのよね。たとえばこの前「風かおるさんっていう作家の本を探しています」ってお客さんがいらっしゃって。青春期にはじめて読んだホモ小説だったそうで、話の筋まで克明にここで語るわけよ。

 

ストーリーは鮮明に覚えてるけどどこで見たか思い出せないパターンありますね。

 

インターネットで検索しても全然出てこなくて、っていうのを聞いて。で、その方が帰ってから、ゲイ雑誌をずっと読んでた別のお客さんがいらっしゃって、「風かおるって聞いたこと無い?」って聞いたら「聞いたことあるよ」って言うのよ。

 

タイミングがすごい。

 

たしか『さぶ』に連載してたから、後ろのほうに小説のタイトルと作家の名前が書いてあるはずだから見てみたら?って言うから見たらあったのよ。早速探してた方に「あったよ!」って言ったらすぐ来て読んでくれて、その人が最初に読んだ小説が載ってた号がたまたまあって。個々が断片情報を持ってるわけよ。『さぶ』で見た気がするよ、とか。そういうのがこのお店を媒介にして結びつくといいかんじだよね。

 

当時同じ本を読んでた人もいらっしゃるから情報が結びついていく。

 

今の10代の子達ははわからないけれども、20代後半ぐらいは本とかの紙メディアで育ってるから、そこで生まれた原体験ってのは何かしら残ってるんだよね。特にホモなんてのはセックスの原体験なんて忘れられるものじゃないじゃん、そういう人が何人かここに来ては当時の原体験と再会を迎えたりしてるね。

 

 

後の世代に伝える

このお店がどういった場所になればいいなぁってことはありますか?

 

もともと僕が古本を始めるきっかけがあって。木村べんさんっていう『薔薇族』や『さぶ』の表紙を描いていた売れっ子のイラストレータさんがいらっしゃって、彼が亡くなった時に友人から連絡があって、「今べんさんの遺品を整理をしてるんだけど、一切合切捨てられそうになってるけどあんたいる?」って聞かれてもちろん引き取るって。

 

 

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木村べんさんが描いたイラスト。イラスト集は完売しており、原画展が開催されていたりする。

 

 

彼はイラストを描く人だったからヌード写真集や海外の雑誌とか、ビジュアルの資料がたくさんあったの。それを受け継ぐ形でいただいて。故人の意志もあるから捨てられないし、大切にしなきゃなって思いながら、あ、でもこういう形ででも木村べんさんのことがのちの世代に語り継げていくんだったらそういう役割もあるかなって。本も喜ぶだろうし。「実はこれは木村べんさんって方が昔いてね」っていうのを本を介して伝えていけたら、木村さんに愛された本も幸せじゃないかなって思うけどね。

 

当時活躍した人や、どういったカルチャーがあったのかを伝えていくのもおもしろいですね。

 

ホモ絡みのことってこの世に存在していないと思われた生き物だったからさ、非日常というか、今もそうなんだけど、だからちゃんと書かれたものって実はなくて、逆に言うとエロ本とかに書かれたものに当時のゲイの姿が描かれていたりするのよね。そういうものって無くなりやすいし、学術的な価値や古書的な価値が与えられないものだから無くなっちゃいやすいんだよね。だからどうしようもない類の印刷物を集めていきたいなとは思っています。

 

ゲイカルチャーの流れを読み解く資料として雑誌が貴重になりますね。

 

本もそうだけど、イベントのフライヤーなんかも集めていきたいなって。チラシだからイベント終わったら捨てられちゃうんだけど、後々価値のある資料になるよね。この時代はどんなドラァグクイーンが活躍していたとか、どんなDJが活躍していたかとか、それによってどういう音楽が流行っていたとかがわかる資料になるし。昔集めてたんだけどものすごい量になるから部屋を圧迫してやめちゃったのよね(笑)

 

 

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棚に並ぶイベントのフライヤー達。女装紅白歌合戦が気になる。

 

 

お店に来る度に賑わってますがお店にはゲイやノンケ問わずいらっしゃいますね。僕から見ても並んでる本や雑誌はおもしろいです。

 

滑り出しはお客さんにも喜んでいただいてるし、お客さんはやっぱり本を触媒にしておしゃべりがしたかったり、盛り上がったりするのよね。

 

本がコミュニケーションのきっかけになるお店ですね。今日はありがとうございました!また遊びに来ます!

 

 

昼間の新宿二丁目もまた楽しい

ということで今回は昼間の新宿二丁目、オカマルトさんにお邪魔しました。

 

開店してまだ間もないですが賑わっていて、他のお客さんやマーガレットさんの話にゲラゲラ笑うことは間違いなしです(ここに書けなさ過ぎる)。

 

 

 

このツイートにもよく表れていますが、オカマルトにはいろんな方が集まります。本を眺めたり、本をきっかけにしておしゃべりをする場所。行くときっと楽しいと思います。

 

普段は夜に来る場所も昼間に来ると新たな発見がありますね。他にも新宿二丁目はいろんなお店があるので、来たことが無い方は昼夜問わず一度遊びに来てみても楽しいかと思います。

 

そしてその入口としてオカマルトを訪ねてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

 

(取材協力)

ホモ本ブックカフェ「オカマルト」

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営業日:
日曜〜水曜(13〜20時)

※月曜日〜土曜日は20時からバーMSBとしても営業

 

住所:
〒160-0022 東京都新宿新宿2-18-10  新千鳥街2F