「5分間息を止めてられたら、100円やるよ。」と親友に言われたので、

5分間息を止めてたら、死んでしまいました。

 

ほんとは、2分くらいたった時点で既に死んでいたのですが、

見栄をはって残り3分間は死んでないふりをしました。

 

なぜ死んでないふりをしたのかというと、

たったの2分息を止めただけでで死んだということがもしその親友にバレたら、

「アイツの肺活量はたいしたことがない」

などと陰口を叩かれるに決まっているからです。

 

だから息を止めてから2分たって死んだあとは、

とにかく「俺は生きてるんだぞアピール」をがんばろうとしました。

 

ところが、肉体は既に機能停止しており、アピールどころか、

手足を動かすことすらできない。

体温は急速に下がり、顔色は青くなるばかりという状況。

このままでは、実は死んでるってことが、バレてしまう。

 

そう思った僕(の魂)は、ひとつの契約を、神様と結びました。

それは、僕がこの世界に生きていたという事実を、最初から無かったことにする代わりに、3分間ぶんだけ命をもらう、という黄泉がえりの契約でした。

 

3分間の命の代償として、僕の二十余年の人生の軌跡は世界から完全に消去され、

僕以外の全ての人の記憶から、僕は一瞬にして忘れ去られる。そういう契約。

それは寂しいことだけど、それでも僕は、生きたいと思った。

そして、親友から「肺活量がすごい奴」と、認められたかったのだ。

 

そうして、神様から3分間の命をもらった僕は、最後の力を振り絞って

息を止めましたが、2分息を止めた時点で、また死んでしまいました。

 

 

(ヤマニシの日記)