あの人の口元に、白い、艶やかな米粒ひとつ

しょうがない人なんだからと

わたしはそれをとってあげて

指先のそれをウエットティッシュに包んで

それからまたあの人の顔を見る

すると、あの人の口元に、また、白い艶やかな米粒ひとつ

俺はむかし、小樽で漁をやってたんだと言って笑ってゐる

 

ほんとにもう、子供みたい

わたしはまた、それをとってあげて

指先のそれをウエットティッシュに包んで

それからまたあの人の顔を見ると

また口元に、米粒

春にはニシンがたくさん採れたものさと言って笑ってゐる

 

いつのまに。いつのまにご飯を?

首を傾げながらそれをとってあげて

指先のそれをウエットティッシュに包んで

彼の顔を見る

また米粒

2002年には北海道ニシンのシェアは 3% になったのさと笑ってゐる

 

わたしが目をはなした一瞬の隙に

ご飯を食べているのかしら

わたしはまた、それをとってあげて

彼の顔を見ると

また米粒

 

またとってあげて彼の顔を見ると、また米

またとって、また見ると、米

何度やっても、白い、艶やかな米粒が口元についている

 

犬が居ぬ、と言って笑ってゐる

ご飯はひと口も、食べていない

それなのに、米をとったら同じ場所にまた米がある

 

つまり、顔から米が生えてくる

そういう人だったって、そういうこと

 

いちばん好きなのはねー、おしりとお金。

そう言って、笑ってゐる

 

 

(忍子の日記)