熊本市内から車で約1時間。
 
僕が5歳のころに、約半年間住んでいた団地に到着した。
 
「お母さん」と一緒に、小さな扉を開けて部屋に入ると
おじいちゃんとおばあちゃんが出迎えてくれた。
 
正直、ここで暮らしていたことはほぼ覚えていない。
だけど、おじいちゃんとおばあちゃんはシワシワの顔で
「こんなに大きくなって…」と、泣きながら再会を喜んでくれた。
 
2人とも80歳を過ぎていて、
おじいちゃんはハッキリと話すことができない。
おばあちゃんは耳が遠くなってしまっているようだった。
 
 
 
 
小さなコタツを囲んで、定位置に2人が座り、
「お母さん」が身の回りの世話をしているらしい。
 
僕が産まれた直後、おばあちゃんが面倒を見てくれたり
はるばる大阪までやってきて、遊んでくれたりもしたそうだ。
 
約23年ぶりの再会…。
 
父方のおばあちゃんは僕が小さいころに亡くなっていて、
おじいちゃんとは再会を果たせぬまま昨年亡くなってしまった。
 
だからこそ余計に、
おじいちゃんとおばあちゃんに囲まれて過ごす時間は
とても新鮮であり、同時に懐かしくもあった。
 
 
 
ちなみに、戦争経験者のおじいちゃんは
ソ連の強制収容所(シベリア抑留)に居たことがあるそうだ。
 
届いたばかりの戦争経験者への給付金証明書を手に取り
「いまさら、こんな紙切れ1枚で…」と、震えながら
悔しそうにつぶやいていたのが印象的だった。
 
 
 
 
「おじいちゃんとおばあちゃんが生きてる間に、ひ孫を見せにくるからね!」
 
2人とも本当に喜んでくれていた。
 
 
 
 
 
(次回、最終回です)