この春で、留年2年目を迎えてしまうクズ大学生のわたし。
ねぇわたし、これでいいのかな?
どう思う?
ねぇ永田どう思う?
(ニカ子/23歳女性)
留年2年目ですかぁ〜、なるほどね〜。いや、僕も実は大学をちょうど2回ほど留年させて頂いてるんですけどね。
まあ、だからあんまり僕が言えたことじゃないんだけど、ニカ子さん、クズだろうな〜。クズ中のクズなんだろうな〜。マジでマジで。これマジのやつで。
いや、別に急に呼び捨てられたから、嫌味を言ってるわけではなくて。状況証拠的にニカ子さんはクズっていうのが確定してるんですよ。
あの、僕あんまり女性で留年してる人って見たことがないんですよね。勝手なイメージかもしれないですけど、やっぱり男性より女性のほうが真面目な人が多くないですか?
世間全体で見たら違うかもしれないけど、大学生っていう枠で見たら絶対そうだと思う。
もちろん大学生の中にも不真面目な女はいる。ギャルはいる。でもニカ子さんはギャルじゃないでしょ。
だってギャルはオモコロ見ないもん。
そう、ギャルはオモコロ見ないんです!!
これは真理。世界の何が変わったって、これだけは変わらないんです。これは唯一絶対の真理! これは覚えて帰ってね!
で、ギャルでなく留年する女なんてクズでしょ。はい、証明完了です。
男だってそうだよ、ギャル男じゃなく留年する男はただのクズ。いや、だってさ、ジャンルで分けたらそういう呼び方しかないんだもん。しょうがないんですよ。
僕が1回目の留年した時のことなんですけど、「留年者ガイダンス」っていう大学側が設けてる留年者向けの講習があったから、それに行ったんです。
「よ〜し!今年こそ頑張っぞ!」という堅い意志とともに行ったんですよ。
で、僕は留年するやつなんて「昨日、クラブでさ〜。DJしてさ〜。コレもんのコレがさ〜」みたいなことしか言わないギャル男ばっかりだと思ってたんですよ。
そんで、留年者ガイダンスなので周りは当然、留年してる奴ばっかだから、ギャル男に囲まれるんだろうな、って僕はちょっと覚悟して行ったんです。
蓋を開けてみたらギャル男0人でした。
もちろんギャルも0。
代わりに居たのは、なんだろ、漢字1文字で言ったら「陰」とか「欝」とか。お前画数多いな〜って感じのやつばっかりなんですよ。
ちっとも横文字使ってくれない。「D」も「J」も全然使わない。
新学期だから春だったけど、ちょっとホントに湿度高かったもん、その部屋。そいつらのジメジメ感ハンパじゃないのよ。
で、ここまで読んで、みんな気付いたと思うんだけど、僕はそいつらのことをちょっとバカにしてるんですよ。
「ああ、こいつら本物のクズなんだな〜」って見下してるんです。
そう、これが今回のポイント1。
クズあるある。
「クズはクズを見下す」
これなんですよ。
多分、相手も僕のこと見下してたと思う。「ふん、クズが」って内心思ってたんだよ、絶対。
まあ、今だったらその時のことを客観視できるからはっきりわかります。僕とそいつら、完全にイコールです。まんま鏡合わせ。
大学生っていう爽やかなフレッシュジュースを、進級っていうフィルターに注いだら、ろ過されちゃった泥。それが俺達。
なのに、そこでもいがみ合うからね。同じ泥なのにフィルター上で闘うからね。そりゃ戦争なくならねーわ。
そんで、そのガイダンスの内容がまたひどかったんです。
教授が「昨日までは忘れて、明日からが人生の新しい1日だと思って頑張ってください!」みたいなことを延々と言ってくるだけなんですよ。
え? 今日って仮出所の日だっけ? 違うよね? 俺、受刑者じゃないよね? 留年ってそこまで悪かったっけ? 刑事罰だったっけ?
それって看守が囚人を見送る時にしか言っちゃいけない言葉じゃないの? 大丈夫?
しかもなんか知らないけど、その教授めちゃくちゃどもるんですよ。さっきはさらっと書いたけど、本当は
「あ、あ、あ、あ、あし、明日からが人生の、あた、あ、新しい1日だと、お、お、おも、おもっって…」
なんですよ。
いや、どもり癖とか吃音症は仕方ないし責める気もないけどさ。どこかで聞いたことあるようなポジティブな詩を、そんなにどもりながら頑張って言う必要ってある?
そんなゴミみたいなスキャットを飛ばされ続けるこっちの身にもなってよ。何なのこの状況? なんか意味あんの?
「キ、キ、キミたちは、り、り、りゅ、留年してるけど、ま、ま、ま、ま、まだ大丈夫なんだっ!」
とか教授が言った時かな。一人の神経質そうなメガネが急に立ち上がったんです。
お、なんか文句言うのかな? いいぞいいぞ!って内心、メガネを応援してたら
「僕は留年じゃなく、留学してたんですっ!!!」
どうでもいいわ。
どうっでもいいわ!!
なんかキショいメガネ野郎だと思ったら、そういう系かよ。確かに正式には「留年者・留学者ガイダンス」だけども。
でも、一緒にされてるってことは扱いも一緒なんだからさ。黙ってろや!!! カス!!! メガネ!!!
その後もメガネは、留年って言葉が出る度に「留学ですっ!」って言い続けるっていう、安定のプレイングを見せてた。
あー、こいつ泥じゃねえわ。ウンチだわ。ここに居るのは全員泥だと思ってたけど、ウンチ混ざってやがった。
僕はその時が初めてかな。クズに仲間意識を持ったのは。
エイリアンが攻めてくれば、人類は結束して地球上の戦争はなくなるってよく言うけど、まさにだわ。
ウンチは駄目でしょ。ウンチが混ざっちゃいかん。
俺達、泥が力を合わせて、ウンチを駆逐しなきゃ! あとついでにペラッペラの詩を吐く和製スキャットマンもぶん殴ろう!
そう、思って我が愛すべき泥たちのほうをパッと向いたら、全員寝てた。
泥ども全員寝てた。
なるほど。なるほどね。
超賢いわ。キミ達が留年したなんて信じられん。
その後、俺も寝ました。起きたら、全部終わってたから家帰った。そんで、その後2週間は大学行かなかった。
そんなピュアハートストーリー。
ニカ子さん、こういう貴重な体験が出来るのも全ては留年のおかげですからね。
留年するとこういう素敵な体験がたっぷりできるんだよ? ウユニ塩湖とか見に行ってる場合じゃないからね。
そうなんです、クズにしか見えない景色ってあるんです!
和製スキャットマンも、ウンチメガネも、あの泥たちのエレガントな所作も、留年もしないエリートには決して見ることはできないんです。
いいかい? 忘れるな。クズは個性なんだ!
クズは人間性をオシャレに着飾るためのドレスなんだよ。そして留年は素敵なペンダント。
クズの自虐は、自慢と一緒。ただ黙って凛としておきなさい。それがクズ淑女の嗜みってやつさ。
そしたら、いつかお母さんに買ってもらったスウェットを着こなし、パチンコ中毒という名の素敵な蝶ネクタイをつけた王子様がキミの前に現れるはずだから。
だからニカ子さん、今はまだ自分のクズ性を磨くときだよ。
3留いこう。
パーティーはその後だ。
※この回答はオモコロメールマガジン2012年3月3日号掲載のものを加筆・修正したものです。