スポーツをすることが嫌い。
スポーツをすることが好きな方、すみません。

 

体育の授業も当然嫌い。
体育の授業が好きな方、すみません。

 

とりわけ体育でやるサッカーが大嫌いだった。
体育でやるサッカーが好きな方は、名も知らぬ奴が書いたネット上の駄文なぞに興味がないと思うので謝りません。

 

体育がサッカーの日は僕にとって、嫌いと嫌いのコンボ。最悪の最悪の最悪。

の最悪。

 

僕が試合に混じっても迷惑だし、誰もイライラさせず潤滑に試合を終わらせるには校庭の端っこで息を殺しているほかない。

なのにボールはなぜか毎回こちらに転がってくる。

なんでだよ!

 

「ヘイ!!!!マイボーマイボー!!!ヘイヘイ!!!ヘイ!!」

 

途端に僕に向かってサッカーができる奴らが怒りの表情で呪文を唱えてくる。

めちゃくちゃ怖いんだよ、あれ。

 

 

だが、嫌な試合も時間が経てば終わる。
すべては時間が解決してくれる。時間はすばらしい。ビバ時間。

 

 

ところがその日はリフティングのテストなる最悪の後戯があった。

リフティングが何回できるかを一人ずつテストするものなのだが、そんなのできるわけがない。

サッカーができる奴らが次々リフティングを披露するなか、恥ずかしいからと順番を譲って譲っていたら一番最後になってしまった。

 

終わった人は教室に戻るので、校庭には僕と先生の2人だけだ。
先生も全員終わったと思ってるのかバインダーに何やら記入している。

 

「あの…」

「おお、びっくりした」

びっくりされてしまった。

 

「よし、やるか」

「はい」

なんか、満を持して登場感がすごい。出方を完全に失敗した。

 

 

 

ボールを構える。
どう構えるのが正しいのか知らないが。

 

とりあえず、右腿にボールを落としてポンって当てれば1回でしょ。

そのあと左に飛ぶはずなのでボールを左腿に当てる。これで2回。

右に飛んだらまた右腿に当てる。

次は左。

 

 

あれ?

 

これチョロくない?

ダッセ!!!!リフティングできない奴ダッセ!!!!バーカ!!!
こんな簡単なのかよリフティングって!!楽勝かよ!!!

 

 

いや待て、初めてでそんなにうまいこといくか?
一発目で前方に飛ぶ可能性もある。

 

ま、その場合はつま先でトンだな。
そしたら後ろに戻ってくる。はい把握。

 

 

 

両手を離して右腿にボールを落とした。1回。

 

ボールは前方に飛んだ。
そんな飛ぶもんなの?ってくらい飛んでいった。

 

校庭の真ん中にワタタタタタ…と転がっていくボールを無様に追いかけ、戻りがてら ちらと先生に目をやったらバインダーを見てた。

 

 

「あれ?もうやった?」


「はい」


「何回?」


「1回でした」


「ふ〜ん」

 

 

正直者が報われる世界であってほしい。

バーカ。

 

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