第42回「心理テスト『この中で一番悪いのは誰?」

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OP/いとしいご主人様 ED/悲しみのラブレター
唄/森の子町子

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今ではすっかり忘れてしまった感覚だけど、小学生の頃の僕には、宇宙の果てのことや死後の世界のことを想像すると、車酔いのように気分が悪くなるという癖があった。

何度か小さい頃に同じ経験をしていた人と会ったことがあるし、これはひょっとして幼少期のあるあるなのかもしれない。

 

大人になった今でも宇宙や死後の世界について考えると暗い気持ちになるし、調子のいい日は「ひえぇ…」と怖くなってしょうがない時もあるものの、当時のように具合が悪くなるということはもうすっかりなくなった。

 

 

きっと「人間が及びもつかないホニャララに対して、どんな情動を結び付ければいいのか」という点において、幼い僕は未発達だったのだと思う。

 

当時の僕がまともに怖かったものといえば、せいぜいオバケや怪獣やお父さんの雷みたいなもんで、「自分に危害を加える」だったり、「自分を責めたてる」だったり、思えば恐怖する対象とその理屈がわかりやすかった。

 

ところが、死後の世界やら宇宙の果てやらは、頭の中にしか存在しないし、自分に具体的な危害を加えることはない。そのくせ、やたらと圧倒的な存在感をもって「ボクの存在とは?」を問いただしてくるようで、それに対して抱いた何かしらのモヤモヤを「どういう感情で表出すべきか」がまだ分からないでいたのかもしれない。

 

まあ、よく考えれば、大人になっても、その死や宇宙という概念に対して感じるな~んかやるせないモニャモニャを正確に表現できてはいないのだけれど。恐れるでも怖れるでも畏れるでも、ちょっと違う。言葉に落とし込むことすらできていないのに、特にどうとも思わなくなったのは、大人になって『自分の手に及ばぬものには、とにかく無視を決め込むこと』を覚えたからだろうか。

 

 

そんな感じで、死や宇宙に対して具合が悪くなることはすっかりなくなったものの、実はその時の名残は今もあって(というか、妙な具合に脳みそにリンクしてしまって)、当時の体調不良を今でも鮮明に思い出すことができる。

 

 

幼い頃、僕が「特命リサーチ200X」というテレビ番組を見ていた時。

 

その時の番組は確か宇宙の成り立ちがどうとかそんな類の特集をやっていて、幼い僕は例によって具合が悪くなってしまった。しかも番組が具体的な映像を元に丁寧に解説しやがったので、その日の症状はいつも以上に重く、本格的に寝込んでしまうほど。

 

母も心配してくれたが、まさか「宇宙のことを考えてたらグロッキー状態になったのよ」とはなんだか恥ずかしくて言えなかった。母はうろたえながらも、とりあえず楽しいテレビでも見て気分を紛らわしなさいと、チャンネルを何かしらの歌番組に変えてくれたのを覚えている。

 

余談だが、確かこの前に、とあるアニメでバキバキにフラッシュ点滅のある演出があり、それが原因で子供達が調子を崩し、寝込んだり入院したりという騒ぎがあった。

当時の僕には、それでごく軽度に体調を崩すような体験があったので(と言っても、その時は水泳教室あがりの疲労困憊状態で視聴していたため、そもそも万全なコンディションではなかったのだけれど)、母としては「すわ、あの日の再来だ」との思いがあったのかもしれない。

 

 

その時の母が合わせてくれたチャンネルでは、SPEEDというダンスグループがWhiteLoveという曲を歌っていた。

 

もちろんWhiteLoveに吐き気止めの効果はない。グワングワン揺れる頭に延々とWhiteLoveが響く。冷静に考えると、歌番組なのだからWhiteLoveもほんの数分しか流れていないはずだけど、何だかその時のことを今でも強烈に覚えている。

 

僕はますます気分が悪くなったものの、まさか「WhiteLoveでゲロッパしそうなのよ」とは恥ずかしくて言えなかった。そのまま寝室に運ばれグッタリと寝込んでしまうこととなった。

 

 

あれから20年が経つ。

 

冒頭でも言ったように、今では宇宙のことを考えて気分が悪くなるようなことはない。その構造自体はすっかり失われてしまった。よかったよかった。

 

ただ、あの日、僕の中でどっかの回路が混線してしまったのだろう。宇宙のことで気分が悪くなることがなくなった代わりに、今ではSPEEDのWhiteLoveを聴くと車酔いのように気分が悪くなるという変な癖がついてしまった。

あの「果~て~し~な~い~♪」というフレーズが聞こえた時点で、当時ほど重篤な症状ではないものの、小さく「ゥェ…」と苦いものがこみ上げるようになってしまったのだ。

 

 

 

 

もっと言うと、今この文章をタイプしている間もちょっと「ぇぁ…」って感じがしている。あの「果~て~し~な~い~♪」って一度再生されると簡単には止まってくれないよね。

 

 

 

 

 

気持ち悪ぅ~。

 

 

 

 

 

あ、マジで気持ち悪くなってきた。

もうやめだやめ。

 

 

この「もともとの繋がりは失われたのに、なんかのきっかけで別のものと結びついてしまった」状況に対して、なんか秀逸な例えを決めたかったけど、もう何も思いつかないわ。「果~て~し~な~い~♪」のせいで。

 

例えるなら何だろ、ポカリ飲むと風邪の味がするみたいな?

ほら、こんなもんよ。「果~て~し~な~い~♪」のせいでね。俺の実力不足じゃなくて。

 

この後、「小さい頃は耳掃除されて射精していたのに、大人になってからはなくなったよね」って話を展開しようと思ってたけど、それももう無理だわ。

 

ごめん、バイバイ。

END