私はビーフストロガノフを恐れている。
昔見たアニメや漫画が影響しているのだと思う。うろ覚えだが、ちびまる子ちゃんでは異国の珍しい高級料理として、美味しんぼでは丹精込めてつくった凝った料理として出てきたのがビーフストロガノフだった。
どこかの国の、高級で、難解で、庶民は口にできないビーフストロガノフ。そんな思い込みを持ったまま私は大人になってしまった。
ビーフストロガノフ専門店へ行く
ある日インターネットで見つけてしまった。池袋にビーフストロガノフ専門店があるらしい。
「ビーフストロガノフ980円」と書いてある。※税抜価格
なんてお手頃価格なのか。ビーフストロガノフはどこかの国の、高級で、難解で、庶民が口にすることは叶わない料理ではないらしい。
階段を上った先にビーフストロガノフがある。長い道のりだった。今日ついにビーフストロガノフを理解できるのだ。食べる前から胸がいっぱいだ。
お店に入った。ランチのピーク時間を過ぎていたので席は空いている。朗らかな店員さんに案内され、すぐに着席した。緊張する。リュックを肩から下さずにすぐさまメニューを開いた。
でかでかと書いてあったのは「白ガノフ」、
そして「黒ガノフ」。
唐突な2択問題。初見殺しである。ただでさえ未知の料理なのに、白と黒どちらのガノフにするか尋ねられている。
いや、本当を言うと食べログで料理の写真を数枚見ていたので、白ガノフと黒ガノフの2種類があるのは知っていた。でも実際に選択を迫られると、戸惑いを隠せない。