中高一貫校で中1から高2までの5年間、剣道部に在籍していた。

剣道部といっても練習は週3日で髪型も自由と、相当緩い活動内容だった。

 

 

噂を聞きつけてか、他の運動部がキツくて辞めた者や、日陰からの逆転を狙う文化部など、様々な生徒が剣道部に流れ着いていた。

色々な人種が混ざり合うことで、新しい価値観が産まれる……

なんてアメリカのようなことは起こらず、単に半端な奴らが集まることで、部活動は一層緩くなっていった。

多様性って難しい。

 

 

そんな緩い剣道部で僕はというと、5年間通して「万年補欠」だった。

僕は最初から入部していたが、ちゃんと真っ当に弱かったのだ。

剣道の団体戦は、主にレギュラー5名と補欠2名で構成される。

僕は補欠として、試合を観て「いいとこ〜!」などのゲキを飛ばすのが主な役割だった。

 

では全く試合に出なかったかというと、そうでもない。

剣道は団体戦だけでなく、個人戦もあるからだ。

個人戦には補欠でもエントリー出来るため、僕も何度か出場した。

 

で、大抵初戦で負けた。何度も言いたくないが、僕は普通に剣道が弱かった。

レギュラーの皆も、2回戦までで毎回姿を消していた。

 

 

そんなこんなで、引退試合となる県大会が近づいてきた。

団体戦はいつも通りレギュラー落ちし、個人戦が最後のチャンスとなった。

 

大会当日、トーナメント表が発表される。初戦の相手は、県ベスト8校のレギュラーだった。

「終わった」と思った。

坊主で鋭い目つきの相手は、竹刀2本を素振りしてウォームアップしていた。勝てるわけがない。