僕には、お母さんがいない。
 
7歳(小学校二年生)のときに両親が離婚。
離ればなれで暮らすことになり、20年の月日が流れた。
 
その間、一度も会っていない。
 
23歳のころ父親経由で「柿次郎が会いたがっている」と
連絡をとってもらったことがあったけれど、なぜか断られた。
 
曖昧な記憶の中では「会わせる顔がない」とか、
そんな理由だったような気がする。
 
きっと、間接的に聞いたのが良くなかった。
父親と母親の共通の知人経由だったらしく、
僕の気持ちの部分は伝わっていなかったんだろう。
 
だけど、今回は違う。
 
 
 
「自分が30歳になるまでには、このモヤモヤとした感情を消化したい」
 
改めて強くそう思ったので、お母さんと再会するために
手紙を書いて送ることを決意した。
 
住所は、父親から聞きだしていたので問題なし。
 
僕にとって「母親」という存在は、とても不確かなもの。
そして20年という長い月日が重くのしかかる。
 
慎重に言葉を選びながら、
素直な気持ちをそのまま手紙に込めてどうにか完成した。
 
 
 
 
 
 

おかあさんへ

 

突然のお手紙失礼いたします。

あなたの息子の柿次郎です。

 

小学校2年生以来になるので、

20年ぶりの連絡になると思います。

 

僕も今年で28歳、一度は連絡をしておきたくて

慣れない手紙を書いています。

 

現在、住み慣れた大阪を離れて東京で暮らしています。

夢だった職業に就いて、楽しい仲間たちに囲まれながら

充実した日々を過ごしています。

 

20年の月日は、過去を振り返るには十分の時間。

母親として「罪悪感」を覚えているのかもしれませんが

今となっては何も気にしていません。

 

おかあさんはお元気ですか?

よかったら、返事をもらえるとうれしいです。

 

                  柿次郎より

 

 

 

 

(つづく)