
この鳥の名前をご存じでしょうか。
この鳥は『メジロ』といいます。都市部でも見られる、一般的な野鳥です。
かれこれ30年以上生きていますが、私はこの鳥の名前を知りませんでした。
ある日、本屋でこんな図鑑を見つけました。

『身近な野鳥の観察図鑑(ナツメ社)』
人間の生活圏内に生息する171種の野鳥が載っている図鑑です。この図鑑を読むと『私の住む地域にはどんな鳥がいるのか』を知ることができ、私の暮らしのまわりにはほんとうに多様な野鳥がいることに気がつきました。

こうしてこの図鑑を片手に楽しい野鳥観察の日々を過ごしていたところ、ある疑念が胸に萌しました。

「この『身近な野鳥の観察図鑑』という図鑑に載っている171種、本当に『身近』なのだろうか」 と。

「本当に『身近』であるならば、すべての種を実際に確認することが可能なのではないのか」 と。
確かめます

『図鑑に載っている野鳥171種、2年かけて探したらどれだけ見つけられるか』
運命のベルが鳴る
ハシブトガラスとハシボソガラス
図鑑を読んでまず驚いたのは、我々がそこらへんでよく見るカラスには2種類いるということ。
ハシブトガラスとハシボソガラスというのがいるらしい。ハシとはクチバシのことで、その名の通りクチバシが太いのがハシブトガラスで細いのがハシボソガラス。
「いやいや笑 カラスはみんな一緒でしょ笑」
そんなことを思いながら外に出てみると、

ハシブトガラス

ハシボソガラス

頭の形が違う
あと鳴き声もけっこう違います
カラス、2種類、いました。ほえ~
実際はクチバシよりも頭の形のほうが見分けやすく、ハシボソガラスがクチバシから流線形の頭部をしているのに対し、ハシブトガラスはベースボールキャップのような丸い頭をしている。
びっくりした。みなさんも、今日、カラスを眺めて帰ってください。流線形のやつがハシボソガラスで、頭でっかちなやつがハシブトガラスです。
高校時代に3年間チャリで通った田んぼ道に行く
図鑑によると田んぼや畑では多くの種類の鳥が見られるらしい。水が豊富で、エサとなる虫が多いためだそうです。
ふーんと思い、とりあえず近くの田んぼエリアに行ってみる。ここは高校3年間で毎日チャリで通った道。夏の日も冬の日も、朝と夕方にこの道を通って帰った。しかし私はこの道で鳥を見た記憶はない。見たとしてもスズメやハトぐらいのもん。この道に鳥はいません。


何?
いたわ。
すぐいた。変な鳥が。ヤダ、なにこの美脚の鳥。知らない。いたのか? あの夏にも? ウソをつくな。今年のアプデから実装されているだろ。
ケリという鳥だそうです。知らなさすぎる。本当に、俺の高校時代にもいたのか??

あっ! おまえは知ってる。あの夏にもいたわ。サギだ。正確には、アオサギだそうです。これがアオサギなんですね。見たことがある鳥を見ると安心するな~

また知らん鳥。カワラヒワだそうです。カワラヒワ?? 川原にいる、ヒ、ヒワ、ですか?? ヒワってなに?? 耳にしたことがなさすぎる。ちなみにこいつはめちゃめちゃいます。ぜんぜんハトよりいる。

イソヒヨドリ。シックで落ち着いた青い羽が映えるきれいな鳥。これも今年から実装された鳥です。
いる。
見たことない鳥、めっちゃいる。
3年間も通った通学路のはずなのに見たことない鳥がめちゃめちゃいます。
以前植物を覚えたときもまったく同じ経験をしたのですが、興味を持って目を向けた瞬間から、世界が変わる。いままで生きてきたなかでまったく見えなかったものがいきなり見えるようになる。この瞬間、マジでびっくりします。
聞いたことのないさえずりを追いかける
ある冬の朝、ブドウ畑のエリアを散歩していると遠くから笛の音色のようなきれいなさえずりが響いているのを聞いた。
なんかあんまり聞いたことのない鳥のさえずりだな、と思い、声の主を探して歩きだす。さえずりの主を探してみることなんて初めてだから、なんだかたのしい。まだかなり遠い気がするが、たしかにこの方角から聞こえてくる。鳥という生き物はさえずりは大きくても体は小さいので、鳴いている本人って意外とどこにいるのかわからないですね。
とにかく聴覚に集中して声のするほうへ向かっていく。普段は頼りきっている視覚というものの頼りなさを実感すると同時に、五感というものはどれもおそろしく便利なツールであるということを思い出す朝の散歩。

さえずりを追うこと10分、樹上に鳥影を見つけました! おまえか!
聴覚を頼りにターゲットを見つけることができたのがうれしくて写真を撮ってみましたが、朝の陽ざしがまぶしくいまいちなんの鳥かわからない。残念。
しかし、ふと、もしかしたら写真を調光したらもうすこし特徴がわかるかもしれないと思い、試してみる。



あっ! このクチバシがおもしろい鳥、図鑑で見た! ぜったい見た!!
この鳥ってなんて名前だっけな~と思い、図鑑をいそいでめくる。
イカルだ~~~!!!

イカル
のちのち撮った写真
これがイカルか~!
本物が見られてうれし~!!
大きくて黄色いクチバシがかわいいですね。このイカルのような、図鑑をペラペラ眺めていると目にとまるようなキャラクターがはっきりした鳥はこうして実際に見つけられるとうれしい!! しかも、イカルってこんなにきれいな声で鳴くんですね。これは図鑑を読んでるだけではわからなかったな。
イカルはこれまでの人生でもきっと私の近くを飛んでいたんでしょうが、こうして鳥の写真を撮るようになってから初めてそのさえずりのうつくしさを耳にできるようになりました。この日をきっかけに聞こえてくる鳥のさえずりを意識するようになりました。いまでは聞いたことのないさえずりを聞くとテンションめっちゃ上がります。鳥のさえずりって種類によって全然ちがっておもしろいですね!
カメラのこと

これ、今回の企画で使用しているカメラです。パワーショットズーム(キヤノン)。片手で持てる、単眼鏡のようなカメラですね。今回はこれだけを使うという縛りでやっていきます。
正直、このカメラではまともな野鳥写真はあんまり撮れません。なにせこのカメラ、ピントを合わせることがとにかく難しい。この記事に載っている写真は数十枚のうちの1枚レベルで映りがよいものと思ってください。
なんできれいな写真を撮るのが難しいのかというと、このカメラは撮った写真をすぐに確認できないんですね。いったん撮影をやめてBluetoothでスマホにつないではじめて写真を確認できる。なのでその場での撮り方の調整が難しい。

飛んでいる鳥にフォーカスを合わせるのはほぼ不可能
ただ! なんだかんだで私はこのカメラを気に入っています!
決して理想のカメラではありませんが、ほかのカメラにはない強みがいっぱいある!!

ノスリ
街灯の上の鳥にこれだけズームできるってすごいことですよ
以前私は植物をターゲットに同じような企画をやったことがあるんですが、観察するうえで鳥と植物でなにが最も大きく違うかというと、鳥は逃げてしまうという点にあります。はじめて見る鳥を見かけて、双眼鏡でのぞいて、図鑑を開いて、また双眼鏡でのぞいてみるともうそこにはいない。それが鳥。
本当に、鳥ってすぐ消えます。一度見失うともう二度と見つけられない。

おっ、鳥がいるな。
えーと、図鑑によると、オレンジの鳥、オレンジの鳥、んー?
あれ? どんな鳥だったっけ?

消失
これです。野鳥ビギナーのうちはずーっとこれが続く。そして、あとで調べようとしても姿をしっかり思い出せないんです。一瞬しか見ることができないし、目立つ特徴がある鳥ばかりではない。だからいつまでもなんの鳥だったのかわからないままになる。
「この季節、このエリア、この大きさ、とすると○○か△△だろう」という脳内インデックスが完成している状態であれば双眼鏡だけあれば大丈夫なんですが、初心者はすべての鳥から検索しないといけないのでその場で鳥を見分けることが本当に難しい!

ミソサザイ
日本最小クラスの鳥だけどちゃんと撮れてますね
しかしこのカメラさえあればブレブレでもボヤボヤでもとりあえず鳥の写真を撮ることができるので、後で家に帰ってからゆっくり図鑑やインターネットを使って鳥の名前を調べることができます。これが、本当に、たすかる!!!! これがないとこの企画はマジで無理でした!!! ありがとうキヤノン!!!

アオゲラ
でかいキツツキ 高い木の上にいる鳥も撮れる
ポケットに入る手のひらサイズも使いやすくて良。重くもないので海外でも持っていける。値段も、まあまあまあ、安くはないけど、一眼レフで同じぐらいの倍率で鳥を撮ろうとすると余裕でウン十万はするので、それと比べれば、まあまあまあ、といった具合。まあ、安くはありませんが。
これから野鳥について知りたいという方がいれば、目的によっては選択肢としていいと思います!! いいカメラです!!
鳥は冬のほうが見つけやすい
みなさん、野鳥観察で一番アツい季節はいつかご存じでしょうか?
正解は冬。
なぜなら木から葉が落ちて鳥が見つけやすくなるからです。季節で見られる鳥が違うので一概には言えませんが、でも野鳥観察は冬のほうがたのしいです。冬は夏と比べてずっと鳥が見つけやすい。

ヒレンジャク
ふつうに公園にいたんですが、こんなピジョットみたいな鳥見たことねえよな
ウソつくなよって思う
冬はただ上を見上げているだけで知らない鳥がいます。最高!! 野鳥観察おもしろい!! 野鳥観察をはじめるならマジで冬!!
このあたりから、野鳥の写真を撮ることの楽しさがわかりはじめてきます。ひいては、電車とかコスプレイヤーを撮ることが趣味の人の気持ちもわかってきました。動く被写体ってきれいに撮るのが本当に難しくて、難しいからこそ、たまーにキレイに撮れるとめちゃめちゃうれしいです。
ウソ
ウソっていう鳥です かなりかわいい
あなた、知らないでしょう、冬鳥のかわいさ。ウソ、かわいすぎる。見てこのカラーリング。これは写真もきれいに撮れて最高!!!
アトリとか、ベニマシコとか、冬はかわいいカラーリングの鳥を見つけられるチャンス! いますぐ外にGO!!

夏はだって、じっと粘って、こんなんですよ
イカルはかわいいけど大変なんだマジで 暑いし
それに対して夏の探鳥はつらい!! 葉っぱの陰に隠れてぜんぜん鳥が見つからない!! めちゃめちゃ暑いし!!
でも夏にしか見られない鳥もいるぞ!! キィーッ!!!

モズ!
はやにえとか『百舌』という漢字とか、知ってはいるけど姿は知らん鳥の代表みたいな鳥
でかいスズメみたいでかわいい そこらへんにたくさんいます
これも冬の写真ですね。モズは通年見られる鳥ですが、こういう鳥でも冬のほうが見つけやすいしきれいな写真も撮れます。
モズを初めて見たときは「これがモズかあ~!」って思いました。モズはかなり身近な鳥で、習性としてかなり目立つところにいるのですぐ見つかります。モズみたいに名前は知ってるけど姿は知らない鳥ってけっこういますね。

ウグイス
ウグイスってこんなんなの?
たとえばウグイスとか。
みなさん、ウグイスの姿って知ってますか? ウグイスのルックス、地味すぎる。外見の特徴ゼロ。ウグイスってこんな鳥なんだ。知らなかったな。
国立科学博物館『鳥展』に行く
こうしてこの企画を進めていくうちにだんだんと鳥のことが好きになってきたので、ちょうど開催されていた国立科学博物館 特別展『鳥』を見てきました。

ほぼ開館直後に行ったんですがめっちゃ人がいてビビりました。トイストーリーマニアぐらい混んでました。この世に鳥が好きな人ってこんなにいるんだ。
鳥展では科博の圧倒的な剥製所蔵がいっぺんに見られて最高でした。なんと500近い鳥類の剥製があったそうです! 500種類! すげえ! 俺の図鑑には171種類しか鳥が載っていないのに。カントー図鑑から一気にシンオウ図鑑ぐらいまで広がりました。

まんなかがシマフクロウ 日本にもいるフクロウです
めちゃめちゃでかい マジの猛禽
国内外の鳥の剥製がいっぱい見れてマジでうれしかったです。剥製は図鑑と違って立体で眺められるからサイズ感がよりわかりやすく、「サンコウチョウってこんなにちいさいんだ!?」「シマフクロウでかすぎる!!!」みたいな驚きがいっぱいあってよかったです。

いわゆる『極楽鳥』と呼ばれるフウチョウ科の鳥の剥製もあって感動しました!!
変な鳥すぎる!!! どうしてこんなに華美な姿になってしまうんですか!!? 世界にはいろんな鳥がいるんだなあ。いつかニューギニアに行って飛ぶ姿を見てみたいですね。

ヒクイドリ!!
かっけ~~~ ヒクイドリかっこよかったなあ。気性の荒さと強烈なキックでヒトを何人もあの世に送ってることから『世界一危険な鳥』と表現されることもあるヒクイドリ。マジで強そうだった。この眼光、シビれるね。本物もいつか見てみたい!

脚の太さと爪の鋭さたるや! これに蹴られたら死ぬわ。死に説得力があった。これは図鑑では感じられない威圧感。剥製はポーズにかなりセンスが出るんじゃないかと素人ながらに思うんですが、科博のヒクイドリは強そうでかっこよかったなあ。

あと千葉に現れた怖すぎる鳥ことミナミジサイチョウが見られたのがめっちゃうれしかったです!!
あのニュース以来、俺の心の中にずっといた鳥だから見れてよかった。あらためて、こんなデカくて黒い鳥が千葉の田んぼにいたのマジですごい。こわすぎる。恐竜じゃん。近所を散歩してて草むらからコイツが出てきたら明日のぶんまでおしっこ出るぞ。
オシドリを探す
オシドリ。
みなさん『オシドリ』という鳥の名前は知っていると思いますが、その姿を思い浮かべられる人はそんなに多くないと思います。そのオシドリは冬になると山梨でも観察できるらしいので見てみたい。見たいよなあ。

ということで山梨県北杜市は『みずがき湖』へ。ダム湖です。きみ、ライターのくせに写真がヘタすぎるな。どうやったらこんなに写真を斜めに撮れるんだ。教えてくれ。
このあたりでオシドリが見られるらしいんですが、ここはダム湖、かなり広い。野鳥は「このあたりで見られるよ!」という情報を得ても具体的にそのエリアのどこで見られるかまではわからない。こればっかりは地道に探すしかありません。

こんな道をとにかくいっぱい歩いて探す。鳥を探すのって大変すぎ。
1時間ぐらい歩いたりキョロキョロしたりしていると、カモっぽい鳥が岸にいるのを見かける。双眼鏡を覗く。


オシドリだーーー!!!!
いました! オシドリです!! うおー!!!!
これはすごくうれしい。やったあ! 念願のオシドリ。とうとう見られました。探してた鳥を見つけるの、うれしいですね!!

近くで見るとこういう鳥です

オシドリを観察していると『オシドリ夫婦』という言葉が生まれた意味がすごくよくわかりました。オシドリってホントに、ずっとつがいで行動するんですね。いつもペアでいっしょにスイスイ泳いでいた。オスのあとにメスがスイスイついていったり、メスのあとにオスがスイスイついていったり。これはたしかに仲睦まじい様子に見える。かわいい。
野鳥観察を始めてから、これはうれしかった日です。
森に響くカケスの声
探鳥では『西湖野鳥の森公園』によく行っています。

西湖野鳥の森公園
ちいさいお屋敷みたいでかわいいですね
施設内には鳥の剥製や写真の展示がたくさんあって楽しい。
そして今日あらためて思ったのは、俺はもうここに展示されている鳥のほとんどの名前がわかる、ということ。

立派な展示
見たことがある鳥も、実際に見たことのない鳥も、すべて名前がわかる。キバシリもホシガラスもカワガラスもイスカもアトリもシメも知っている。もう本当にだいたいわかる。成長を感じるようでうれしい。
施設から出ていつものように野鳥を探す。頭上で「ガー」「ギャー」という鳴き声がして、「カケスかな?」と思って見上げるとカケスがいた。

カケス
どこか愛嬌のある顔で好き
これには俺自身「うおっ!」と思いました。おまえ、鳥ハカセじゃん。
たしかに最近はシジュウカラ、ヤマガラ、カワラヒワ、ホオジロ、エナガなど、低山エリアで頻繁に聞く鳴き声と、それ以外の鳴き声を脳内で自然に区別するようになってきている。これら以外の声がしたとき、脳内でさくいんを当たる。今回はカラスっぽいしゃがれた大きい声、しかしカラスの声ではなかったのでカラスの仲間のオナガかカケス、エリア的にはカケスかなと思い見上げると、カケス。「うおっ! カケスだ!」。おまえ、鳥ハカセじゃん。

きれいなカケスの羽根
落ちてる羽根から鳥がわかるとうれしい
自身の成長を感じるとうれしいですね。なんとなく続けた趣味でも上達するもんだなあ。
南へ飛ぶカワウ

これなあに

なあにかな

これはね これはね
鵜のコロニー

カワウという鳥がいる。あのウ。でも鵜飼のウはカワウのウではなくウミウのウなので厳密には違うウ。でもそのウミウのなかまがカワウ。さきほどのコロニーはこのカワウのコロニー。
さいきんよく写真をとるスポットでカワウを見かけるようになり、その生態をインターネットで調べているうちにいろいろなことを知った。まずカワウはアユなどの水産資源を食べてしまうことから人間に不利益をもたらす一面があること。そのため人為的に数がコントロールされていること。山梨県においてはカワウのコロニーは1か所になるよう管理されていること。その1か所のコロニーが笛吹川流域にあること。そういうことをふまえて、コロニーを見に行ってみた。行ったら、めっちゃいた。

あらためて画像をごらんください。カワウのコロニーです。カワウがいっぱいいるなあ。このエリアだけで300羽ほどいるそうです。

すごいな。インターネットの情報のとおり、行ったらいた。うれしい。感動を覚える。

婚姻色のカワウ
頭が白い
夕方、空を見上げるとカワウが飛んでいる姿をよく見かける。いままでは鳥が飛んでいても「鳥が飛んでいる」ぐらいの情報しか得られなかったのに、いまでは「カワウが南にある笛吹川のコロニーに向かって飛んでいる」ということがわかるようになった。おもしろい。こういうことがうれしい。世界が拡張した。

藤原 仁






