ブロス編集部です。編集部メンバーがここ最近読んで面白かった漫画を紹介するコーナーのお時間、題して「今月の読良漫(よよまん)」です。今回はたまに何故か読みたくなる「読んで嫌〜〜な気分になる漫画」を集めてみました。

それでは早速編集部メンバーの「読良漫(よよまん)」をご紹介しましょう。

 

 

恐山のオススメ嫌漫画「ザ・ムーン」

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【オススメ人:恐山】

『銭ゲバ』で知られるジョージ秋山先生の巨大ロボット漫画なのですが、ロボット漫画としてはアクが強すぎる、唯一無二の奇作です。

「私は正義を発明した!」と宣う魔魔男爵の作り上げた巨大ロボット「ザ・ムーン」が9人の少年少女に託されるところから物語は始まります。用途はなんと「自由」! 力は正義であり、純真な子どもが力を持てば純度の高い正義が実現されるだろうというのが魔魔男爵の考えなのです。

このザ・ムーン、とにかく使い勝手が悪い。中に乗れないから歩いてついていくしかないし、9人が心を1つにして脳波を一致させないと動きません。ひとりでも殺されたらそこで終わりです。みんなで必死に念仏を唱えてどうにかしようとするシーンは圧巻。

ストーリーには爽やかさの欠片もなく、子どもたちは社会問題を反映した後味の悪い事件に直面します。甘やかしの一切ないラストシーンには「え、そ、そんな……」と声が漏れました。正義に正面から向かい合った結果、ロボット漫画という体裁ごと破壊してしまった、読むのにエネルギーを消耗する怪作。

 

まんが王国でめちゃめちゃいいとこまで読めます。

 

 

かんちのオススメ嫌漫画「九条の大罪」

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【オススメ人:かんち】

『闇金ウシジマくん』の作者、真鍋昌平氏による弁護士を主人公にした漫画です。作者が第1話をまるまるTwitterに投稿して話題になっていたのをきっかけに、この作品を知りました。

半グレやヤクザなどを顧客に持つ弁護士が罪を犯した人間の弁護をするのですが、いやぁ、第1話が胸糞悪くて最高。

どんなに真面目でも無知なら損をし、どんなに悪人だろうが知識を味方につけた者が得をするという世の中の不条理さを見事に表わしていて、第1話を読んですぐに単行本1巻を購入しました。
あまり被害者に感情移入せず、「現実にもこういうことあるんだろうな」と社会勉強のつもりで読むことをおすすめします。

↑このツイートのツリーで1話読めます。嫌〜〜〜〜

 

 

ヤスミノのオススメ嫌漫画「かわいい闇」

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【オススメ人:ヤスミノ】

物語は可愛らしい小人たちのお茶会から始まります。

主人公の小人・オロールには恋人がいて、この前の舞踏会についてお喋りしています。小人たちは見るからに幸せいっぱいで、おとぎの国のようにのどかです。ですが突然、頭上から赤黒い何かがしたたり落ちてきます。せっかくのお茶会が台無しなり、みんな大急ぎで会場から抜け出します。

そこで小人たちは少女の死体の中でお茶会を開いていたことが分かります。

この冒頭の死体が登場するシーンがとにかくすごくて、絵本のように可愛い小人と写実的でグロテスクな現実が接続される瞬間はあっと言わされます。これだけでも相当な意欲作だと伝わります(出版されたフランスでも物議を醸したそうです)。

小人たちは純朴ゆえに残酷で、ひたすらにエゴイスティック。全編を通してずっと生理的嫌悪感を逆なでするような嫌~~~なことが続きます。でもバンド・デシネというジャンルが抱える、ある種の敷居の高さのようなものは一切ありません。イラストの美麗さも相まって「嫌~~~」と言いながらスイスイ読めます。

僕が好きなのは、ある小人が小鳥に混じって親鳥からエサをわけてもらおうとするシーンで、そこはちょっと笑ってしまいます。

 

試し読みは無い上に、かなりのお値段。ヤスミノの審美眼に賭けよう!

 

 

原宿のオススメ嫌漫画「奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール

【オススメ人:原宿】

映画「花束みたいな恋をした」で、主人公の2人が「消費しているカルチャーが似ているから、僕たちはうまくいくはずだ!」と繋がっていくのを見て、この漫画の冒頭のオシャレワードが頻発する空疎なホームパーティのシーンを一番思い出しました(2015年の作品なので、今読むと「おいしさ」がズレてしまった感じもありますが)。

「奥田民生」のような自然体の男に憧れる主人公のコーロキくんは35歳の雑誌編集者で、「マレ」というライフスタイル雑誌に配属され、恋愛やギョーカイの仕事にまつわる「地獄めぐり」を経て、「一旦、世間からこういう人間に見えていればいい」と現実と妥協することを覚えた大人になってしまう(それが良いことなのか悪いことなのかは保留されています)というストーリーで、「嫌~~~な気分になる」というカテゴリで紹介するのがちょっと憚られるほど好きな作品なのですが、描かれていることのあまりの当事者性の高さに「くらって」しまい、一度しか読めてない作品でもあります(映画でも漫画でも、自分にとって摂取カロリーが高すぎるとそうなることってありますね)。

中盤からは「出会う男すべて狂わせるガール」をめぐるサイコな展開が続いていき、ネットに落ちている想い人の情報を後ろめたい気持ちを抱きながらサルベージしたことのある人なら、とても他人事とは思えない作品だと思います。あと主人公が炎上してる時のTogetterの再現度がめちゃくちゃ凄いので必見!

 

日刊スパで1話が試し読みできますよ。

 

 

■また来月

また来月も、皆さんの「読良漫(よよまん)」をご紹介させていただきます。

それではさようなら。