こんにちは、テクニカルライターのもりれいです。

 

テクニカルライターは取扱説明書が大好きな生き物なので日夜舐めたり噛んだり眺めたりしているのですが、先日手に入れたこのトリセツがいろいろすごかったので今回はその魅力をご紹介します。

 

 

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こちらの写真、45年前のミシン「ジャノメ トピアA(エース)802型」のトリセツの表紙なのですが…すごくないですか?

 

白いギター、パンタロン、ピッピー風のモデルさん、エグイ背景の色…随所に昭和のエキスがほとばしりまくってます。

 

表紙だけでこんなに今と違うのだから、中身だっていろいろ違うはずです。

 

さっそく、トリセツがないと夜も眠れないトリセツ偏愛テクニカルライター的目線でこのレトロなトリセツのみどころを探っていきましょう。

レッツ昭和!!

 

 

45年前の流行はカジュアルスタイルとカトちゃん

 

このミシンが発売されたのは、およそ45年前の1972年頃から。

 

当時の出来事としては、オイルショック・オセロ発売・カトちゃんの「ちょっとだけよ」が大流行!

 

ファッションとしてはバギーパンツ・フレアスカートなど今でも通用しているものから、ジーンズ・ニット・スニーカーという今や当たり前となっているカジュアルなスタイルが流行しはじめた時代でもありました。

やっぱり、めっちゃ昭和です。

 

はたして、トリセツにはどんな流行があったのでしょうか?

そんなテクニカルライター的目線でこの表紙を見てみると…

 

 

ミシン_3

 

ご覧ください。ミシンと人物写真の重なり具合の、このかっこよさ

 

人物がめちゃくちゃに目立ちながらも、主役はあくまでこのミシンでありこのオシャレ服を生み出したのもすべてこのミシンのおかげよ…というささやかな主張を感じるではないですか。

 

 

ミシン_4

 

そして「超自動=直線ジグザグミシン」という謎のワード。

 

何がイコールなの? と思われるでしょうが、おそらくこれはジャン=リュック・ゴダールのそれみたいなもので、さりげなくパリっぽいオシャレ感を演出しているのでしょう。

 

さすが昭和、やることが違います。

 

 

ほとばしる写真の昭和感

 

そしてこちらは先ほどの表紙の裏側(裏表紙)にあたるのですが、よくご覧いただきたい。

 

 

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…おわかりいただけただろうか。

 

トリセツの表紙にもかかわらず、画面中央にバナナを食べようとしている少女が写り込んでいる。

 

当時めちゃめちゃ高級品だったであろうミシンのトリセツで、お求めやすいバナナ。今では考えられません。今なら迷いなくアサイーとか置きます。

 

バナナは1972年から安くなったらしいのでそこまで高級品ではないはずですが、やはり不動の人気モノだったのでしょうか。

 

 

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そしてやはりハンパなき昭和っぷりを醸し出しているのはモデルさんのファッションです。

 

いちばん左の人は今でも銀座とかオシャレ度高い地域に生息してそうですが、まんなかは昭和アイドル風、右は山本リンダ的なことでしょう(「どうにもとまらない」のヒットは1972年)。

 

これが最先端のオシャレとして認識されていたわけですね…でもミシンでわざわざこんなの作った人いたのかな…?

 

 

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…と思ったら、たくさんいたみたいです。

 

最寄りのジャノメミシン直営店へ行けば専任講師が最新のワザを教えてくれる楽しい≪ジャノメ・ジグザグ教室≫が開かれていました! 大盛況ですね!
(※個人的には「!」のナナメ具合がたいへん気になっています。)

 

 

これが45年前のテクニカルライティングだ!

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ではじゃんじゃん中身のほうも見ていきましょう!

 

45年前のトリセツははたしてどんな感じになっているのでしょうか? まずはもくじのページ。

 

みなさんはご存じないかと思いますが、実はもくじのページって楽しいんです。

 

「あいさつ文」「おもな特長」には会社のセンスと製品の魅力が凝縮されているし、もくじにエントリーしている項目を見れば製品のできること(性能)がおおよそわかります。

 

言ってみればトリセツ的には「顔」にあたるページなわけで、とても大事な役割をはたしているのです。

 

さて、このトリセツのもくじのページはというと…。

 

 

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超ダサくないですか、いい意味で。

 

句読点多すぎ&右揃え…読みにくいので今やったら怒られそうですが、当時はオシャレで斬新だったに違いありません。

 

そして、文章ににじみ出るこの奥ゆかしさ…。

 

「なんなりと」だなんて日常生活で言われたことありません。むしろ10ヵ年も品質保証してくれるだなんて本当にいいんですかと聞き返したくなってしまいます。

 

 

 

はしばしに現れる奥ゆかしさ…

 

奥ゆかしいのはここだけじゃありません。ページをめくるたびに奥ゆかしさを見つけることができます。

 

 

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「二色模様が……」「ちがった模様に……」

 

みなまで言わずに余韻で機能のすばらしさを伝えてきます。

 

今なら「模様を作ることができます」「模様がお楽しみいただけます」ぐらいのものですが、はっきり自慢しないこの奥ゆかしさ。

もしも実際にこの機能を試したら「本当だ……」「すごい……」という感想しか出てこない気がします。

 

 

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こちらはミシンの機能を拡張する姉妹品の宣伝文。

 

「カセットするだけで」という用法も気になりますが「大きな…大きな…」に至っては、そんなに大きいの?? と不安にすらなってきます。

 

でもよく読むと「6~7㎝」とあるので「大きな…大きな…」の定義は6~7㎝ということなのでしょう。

 

 

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これは奥ゆかしいというか、死にそうなの? 最期のメッセージなの? という一例。

 

「曲がりのないものを… 針先のよいものを… お使い…くだ……」でトリセツが終わってそうで怖いです。

 

「…(三点リーダ)」はこんなふうにトリセツで多用するものではないと思っていましたが、昔はけっこう流行していたのかもしれません。

 

 

時代を感じるレトロなイラスト&デザイン

 

イラストやデザインからも、時代の流れを感じることができます。

 

まずは、問答無用のこのイラストをご覧ください。

 

 

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こんなテレビと炊飯器、平成生まれが見てもわからないんじゃないでしょうか?

 

かろうじてステレオがまともに見えますが、CDの生産が開始したのは1982年らしいので、明らかにレコードプレーヤーなのでしょう。

 

そして、こんな強烈な昭和レトロ家電のなかで、ミシンは案外ずっとミシン然としているというのも新たな発見です。

 

 

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つづいては、なぜか「エ」だけカタカナな各部の名称とそのはたらきのページ。昔感がすごすぎてむしろ昭和以前ぽい始末です。

 

個人的には「エ」がカタカナなら「止メ」「送リ」「糸掛ケ」もカタカナにしたいところですが、もしかすると「押エ」は目立たせる必要のある主役級パーツなのかもしれません。

 

そして最後はかわいい図案集。やたらファンシーなものも、そこはかとなく昭和っぽさがありますよね。

 

 

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どうですかこの図案たちのファンシーさたるや。

 

ちょっとアップリケの左目どうしたの? と言いたくなりますが、牛の後ろ脚の具合とかフリンジをおっさんのヒゲと髪の毛にしようという試みとかたまりません。

 

自分の体操着にこれが縫われてたら嫌だなー。

 

 

結論:レトロなトリセツ+身近な流行=味わい深いおもしろさ!

 

いかがでしたか?

 

まだまだ一部しか紹介できていないのですが、レトロなトリセツっていろんな魅力があることをおわかりいただけたでしょうか?

 

みなさんもぜひ一度、実家とか古道具屋さんを発掘してレトロトリセツを読んでみてください。新しい発見があるかもしれません。

 

 

では最後に、意外にもめちゃくちゃ現代に通じる項目を発見したのでご紹介しておわりのごあいさつとさせていただきます。

 

 

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コーディングといえばサイト制作には欠かせない技術。

 

インターネットにたずさわる者として、コーディングのやりかたは知っておく必要があります。

 

●コーディング ≪縫い方≫
① ひもつけ押エのバネの下にあるミゾのいちばん左へひもを通し、
② ひもつけ押エの裏側にあるミゾにひもを通して、押エをおろす。
③ 図案のとおり縫っていく。

全然Webサイト作れそうにないですね!

 

ではまた、さようなら。