先日、オモコロで『うっすら悲哀が漂う「おセンチ写真」を見せてほしい』という記事を書いた。
どれもセンチメンタルな良い写真ばかりだったが、中でもヤスミノさんが見せてくれた1枚の写真が忘れられない。
サックスを吹く半裸のおじさんの像だ。
この独特なブロンズ像について調べてみたところ、作者は黒川晃彦さんという有名な彫刻家のかたらしい。
そして衝撃の事実も判明した。
なんと全国各地にサックス吹きのおじさんの像は存在しているという。
見たい。写真だけでおじさんのスーパープレイに虜になってしまったのだ。是非とも実物のおじさんを肌で感じたい。
ということで、私はこの像をいくつか訪ねてみることにした。
東京都 芝浦運河沿いにいるおじさん
田町駅に着いた。オフィス街と港町が混ざったような不思議な空気が漂っている。
おじさんの像は芝浦運河のどこかにあるらしい。
詳しい場所は調べていなかったので川沿いをひたすら歩いてみる。
10分ほど歩いて、いかにもブロンズ像でも飾ってありそうなひらけた通りに着いた。
どうやら勘が当たったらしい。遠くに見えるこげ茶色のあれだ。
おじさんはきっとあそこにいる。
実物のおじさんにもうすぐ会えるかと思うとドキドキしてきた。
え……おじさん……? なんか痩せてる。しゅっとしてる!
写真で見たおじさんはおなかが樽のようだった。まるで別人じゃないか。
目の前の引き締まったおなかを見て、愕然としてしまった。
初対面だけど言わせてもらいたい。こんなスマートな体、おじさんじゃない!
とショックを受けていたら、よく見ると奥にもブロンズ像があった。
あの一番奥にいるのってもしかして……
おじさんだ!!
半裸でサックス吹いてる太ったおじさん!
そうそう、おなかはこうじゃないと
マンションの茂みでサックスを吹き荒らすおじさんも好きだったけど、川沿いで優雅にサックスを奏でるおじさんもかなり良い。
なんて穏やかな表情をしておられるのだろうか。紳士だ。たとえ半裸であってもおじさんは間違いなく紳士。
ハトもこの表情である。頭の上に乗るには少しでかすぎる鳥類のような気もするが、2人の穏やかな顔を見ているとそんなことはどうでもいい。
本物のハトも来るし
おじさんの頭の上に乗ってダブルハトになってほしいとワクワクしたが、現実はそううまくいかない。しばらくコンサートを楽しんでハトは羽ばたいていった。
左からサックスを吹くおじさん、フルートを吹く少女、トランペットを吹く青年。
3人合わせて「リバーサイド トリオ」という作品だ。風景の一部として自然に溶けこんでいる。すてき。