バイオハザード RE:2 - レビュー

『バイオRE2』が素晴らしい3つの理由と、ひとつだけ残る問題

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結論から言おう。『バイオハザード RE:2』(以下、バイオRE2)はリメイク作品としては最高峰であることは間違いない。ただし、ひとつだけ足りないものがある。

今回のレビューでは、PlayStation 4でZ Versionをプレイしている。

レビューではその足りないひとつを説明することになるわけだが、まずは以下の4項目に分け順を追って説明していこう。このゲームはリメイクとしてとても素晴らしいからこそ、捨てきれない問題があるのだ。

1. チーズバーガーでわかるレベルの高いグロテスク表現と演出によるホラーらしさ

2. 原作のゲームシステムを現代風に再解釈した愛のあるリメイク

3. おまけモードややりこみ要素なども原作に近い

4. だからこそ発生する、完成度の高いリメイクならではの問題

1.チーズバーガーでわかるレベルの高いグロテスク表現と演出によるホラーらしさ

最初のカットシーンに登場する、トラック運転手のチーズバーガー。

『バイオRE2』は、1998年にPlayStationで発売された『バイオハザード2』のリメイクとなるタイトルだ。ゲームエンジンは『バイオハザード7 レジデント イービル』でも使われた「RE ENGINE」が採用されており、それによって特に不気味な表現は一流のものとなっている。

チーズバーガーですらこのレベルなのだから、クリーチャーになればもっと気合が入っているというわけだ。

上記画像を見てほしい。これはゲーム開始直後に出てくるチーズバーガーなのだが、とにかくマズそうだろう。しかし、冷えて固まったチーズや湿気でヘタったバンズなど描写は優れており、見てすぐにチーズバーガーであるとわかる。チーズバーガーですらこのレベルなのだから、クリーチャーになればもっと気合が入っているというわけだ。

ラクーンシティを徘徊するゾンビたちはいまにもこちらに噛み付いてきそうで種類も豊富、音を聞き分けて襲いかかってくるリッカーは、むき出しの脳みそを見せつけて恐怖心を煽ってくる。生き残りすべてを始末しようとするタイラントはグロテスクさこそないものの、殺し屋という雰囲気がにじみ出ているのだ。

クリーチャーの不気味さに目がいきがちだが、主人公たちの汚れ描写の丁寧さにも注目したい。

新米警官のレオン・S・ケネディと、兄を探して街へやってきたクレア・レッドフィールドは、そんなクリーチャーだらけになってしまったラクーンシティで命を掛けて戦わなければならない。いや、プレイヤーもまたラクーンシティに恐れおののくひとりだろう。

「ゲーム・オブ・ザ・イヤー 汚い部門」に必ずノミネートされるであろうレベル。

音楽による演出も秀逸だ。ときにBGMは鳴り止み、環境音だけが流れる。割れた窓に吹き込む雨風の音だけが聴こえる廊下で、プレイヤーは慎重にスティックを倒さねばならない。なぜならリッカーが出てくる場面では、たいていそういった息を呑ませるような演出が発生するからだ。もし見つかってしまった場合、静けさはヤツの叫び声で引き裂かれ、鼓動が早まるのを感じるだろう。

このほかにもタイラントに追われているときは足音が常に聞こえたり、主人公たちが濡れると服についた水滴を払ったりと、雰囲気作りは抜群である。かつてのラクーンシティが現代のトップレベルの技術で描き直されており、「ゲーム・オブ・ザ・イヤー 汚い部門」に必ずノミネートされるであろうレベルまで高められている。

部位欠損が明らかに規制されているとわかるシーン。

ただし、グロテスクな描写に関して一部規制があるのは残念である(Z Versionでも日本版では規制が存在する)。ここまで雰囲気がよく作られているのだから、余すところなく見たいというのが正直なところだ。

2.原作のゲームシステムを現代風に再解釈した愛のあるリメイク

とはいえ、『バイオRE2』は単なるホラーゲームというわけではない。むしろ恐怖という意味では『バイオハザード7 レジデント イービル』のほうが優れている。では『バイオRE2』はどういう作品なのかというと、原作どおり、探索とアクションを活かしたゲームシステムになっているのだ。

マップ画面も非常に進歩しており、施設やアイテムの有無のみならず、行けない場所にはどんな障害があるのか、あるいは部屋にアイテムが残っているか否かもわかる。

レオンとクレアは、ゾンビだらけのラクーンシティを脱出するため、あるいは事件の真相を知るため警察署を探索し、あるいはクリーチャーから逃れて下水まで行き、手がかりや武器を探すことになる。ときには謎が立ちはだかることもあり、それを解くことによって道が開かれていく。

謎解きに関しては原作からかなり変更が加えられており、おおむね簡略化されている。物語を進めるだけならいくつか最低限の謎を解けばいいが、ロッカーの鍵など細かい部分を解決すればアイテムが手に入るという作りだ。よほどのパズル好き以外には受け入れられるであろう変更点で、むしろ、カメラワークと操作方法が変わったことによる影響のほうが大きい。


原作となる『バイオハザード2』は、かつてのバイオらしい固定カメラ&ラジコン操作である。しかし『バイオRE2』はキャラクターの背後にカメラがあるビハインドビュー、いわゆるTPSのような視点になった。こうなると原作とは異なりゾンビの頭部などを自由に狙えるようになるし、移動も思ったようにできるようになり、ゲームプレイそのものが大きく変わってしまうわけだ。

『バイオRE2』はシステムこそ変えたがプレイ感覚は変わっていない。

ただ、『バイオRE2』はシステムこそ変えたがプレイ感覚は変わっていない。自由に射撃ができるようになったものの、ゾンビはかなりタフになり特殊な倒し方をしないと復活するようになった。すると、プレイヤーはいくつかの選択を迫られる。貴重な銃弾を使って徹底的に倒すか、あるいはナイフや手榴弾といった緊急回避アイテムを使って切り抜けるか、もしくは回復アイテムをたくさん使って強引に進むか、だ。

手持ちのアイテムとにらみ合い、どの手段を取るか考えるリソース管理というのは、それこそかつての『バイオハザード』や『バイオハザード2』のころのゲームプレイと変わりない。持てるアイテムの数にも制限があるため、身軽にしてアイテムをたくさん回収するか、あるいは重装備で安定を取るか悩むのもゲームプレイの醍醐味だし、原作の雰囲気をそのまま受け継いでいる。「使い終えた鍵などのキーアイテムを捨てる」なんて別に引き継がなくていい要素まであるのには笑ってしまった。


ゲームシステムを変えたことによる利点もある。原作でタイラントと遭遇した場合は強力な武器を使って倒すのが基本だったのだが、『バイオRE2』ではまず倒せないようになっている。おまけにストーカー規制法に余裕で引っかかるレベルでしつこく追ってくるため、探索にかなりの緊張感を与える刺激的なスパイスとなっているわけだ。『バイオRE2』は原作と比べて敵の攻撃を回避する方法が多いため、こういったことも可能になっているのである。

また、ストーリーは要点こそ同じだが、グラフィックもゲーム内容も解像度が上がったため理解しやすく、かつ派手になっている。しかし原作をプレイしたのならば「あのシーンだ」とニヤリとできる箇所も多く、愛をもって『バイオハザード2』をリメイクしたことが痛いほど伝わってくるのだ。もっとも、「レオンが恋人と別れてやけ酒をして大遅刻した」なんてところまで変わってしまったようだが。

3. やりこみ要素やおまけモードなどもかなり原作に近い


『バイオRE2』のストーリーは、レオンとクレアが同時に警察署などを探索して脱出を目指すといったものになっている。そのためまずひとりの主人公でクリアすると、「New Game(2nd)」としてもうひとりの主人公の視点で遊べるようになる。

原作でこれはザッピングシステムと呼ばれており、片方の主人公がとった行動がもうひとりに反映されたり、あるいは互いに物語が補完されるような形になっていた。しかし『バイオRE2』ではこのあたりがほとんどカットされており、通常ゲームと2ndの違いは、序盤の展開・謎解きの答え・タイラントの出現タイミング・エンディングの流れ程度になっている。

『バイオRE2』ではザッピングシステムが事実上なくなっている。

どちらのキャラクターを先に選んだとしても基本的にストーリーは同じだし、原作のように通常と2ndで戦うボスが異なるなんてこともなく、最初と最後以外は流れが変わらない。つまり、『バイオRE2』ではザッピングシステムが事実上なくなっており、これはマービンがゾンビ化するくらいに残念だ。とはいえ、早くクリアして高ランクを目指すことで隠し武器やコスチュームが手に入るなんてものは健在だし、ゲーム内実績を達成するために短めのストーリーを何度も遊べるやりこみ要素は変わらない。

難易度もスタンダード以下は現代風にオートセーブがあるものの、ハードコアになるとそれがなくなるうえインクリボンでセーブ回数が限られるタイプになる。敵もかなり強くゾンビに噛まれただけでDANGER状態に陥るため、「バイオハザード」というもので緊張感を味わいたい人にはうってつけの難易度だ。

「The 豆腐 Survivor」の主人公である豆腐。豆腐ならではのぷるぷる感や角が欠けるダメージ演出もやたらとレベルアップしている。特徴の関西弁も健在。


そしてクリア後には、特殊部隊の生き残りとなる「The 4th Survivor」や、なぜか木綿豆腐として脱出計画を遂行する「The 豆腐 Survivor」といった原作から引き継いだミニゲームが待っている。こちらも限られた装備でいかにゴールを目指すかという肝心な部分は変わらず、しかしながら豆腐がやたらとリアルだし、クリアすると豆腐のように「ほんまかいな!」と言いたくなること間違いなしの嬉しいおまけ要素まであるのだ。

4. だからこそ発生する、完成度の高いリメイクならではの問題


グラフィックや演出はかなり磨き直され、ゲームシステムも現代風に変更はありつつもきちんと原作の楽しさを再現できている。やりこみ要素も忘れていないし、『バイオRE2』はほとんど非の打ち所がない完璧な作品だろう。リメイク作品として見れば、10点満点のMasterpieceを与えてもいい。

リメイク作品として見れば、10点満点のMasterpieceを与えてもいい。

ただ、それはあくまで『バイオハザード2』のリメイクとして捉えた場合だ。私は確かに熱中して『バイオRE2』を遊んだし、あらゆるオマージュに口角を上げ、新しくなった部分に感心した。そして一通り遊び終えたあとに、とてつもない物足りなさを覚えた。

そう、『バイオRE2』にひとつだけ問題があるとすれば、それは『バイオハザード2』の完璧なリメイクだということだ。原作はそもそも20年以上も前に発売されたタイトルで、レオン編とクレア編があるもののマップは同じで謎解きもかなり似通っている。やりこみは一部の物好きが遊ぶタイムアタックだとか、あるいは本編の要素を流用したちょっとしたものだ。いや、それは当時のPlayStationのゲームであれば許された。しかし2019年は、10数時間、何10時間もずっと新鮮な景色が広がる大作ゲームがゴロゴロ転がっている時代なのである。

後日、サブキャラクターのエピソードを描く無料DLC「THE GHOST SURVIVORS」が配信されるので、それがあればもう少し本作の評価は上がるかもしれないが、いずれにせよ2019年のゲームとして物足りなさは否めないだろう。『バイオRE2』は本当に『バイオハザード2』の良質なリメイクであり、それ故に原作を大きく越えるインパクトを残すことはできていない。それが、本作にたったひとつだけ足りないものである。

長所

  • より磨かれた不気味すぎるグラフィック
  • 現代風にしつつも原作の雰囲気を感じさせるゲームシステム
  • タイラントをはじめ、より心を揺さぶる恐怖演出
  • やりこみ要素までしっかりと原作再現されている
  • クレアの口が悪くなっている

短所

  • 暗すぎてわかりづらい箇所もある
  • ザッピングシステムがなくなった
  • 良くも悪くもあくまでリメイクである

総評

最初に出てくるチーズバーガーを見た瞬間に理解できるように、『バイオRE2』は質感や演出をとてつもなく強化し、それでいながらゲームシステムの触感を残しつつ現代風にアレンジした傑作といえる。しかしこれはあくまで1998年にPlayStationで登場し世間に衝撃を与えた『バイオハザード2』のリメイクでしかなく、2019年で新たな革命を起こすかのような完全新作タイトルというわけではないのだ。

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バイオハザード RE:2

2019年1月25日
  • Platform / Topic
  • PC
  • PS4
  • XboxOne
  • PS3

『バイオハザード RE:2』レビュー、リメイク作品としては文句なしの傑作

9
Amazing
Return to Raccoon City in this HD remake of the blockbuster second game of the survival horror franchise. The city has somehow fallen victim to a zombie outbreak and it's up to you as either police officer Leon Kennedy, or Claire Redfield to find out what's going on.
バイオハザード RE:2
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