世の中に負けない無職になるには、どうしたらいいですか?
(ボルチーオ茸さん)
いや、結構こういうお悩みを頂くんですが、無理です。
ロックマンDASHのサブタイトルでお馴染みの「鋼の冒険心」でもない限り、世の中に負けちゃうって。
これは何度も言っているんですが、あらゆる職業の中で最も強靭な精神力を求められるのが無職なんです。
「働かずに、毎日好きな時間まで寝てられるだなんて最高だポヨヨ~」
などと、無職を舐め切ってる人間には、正義のトールハンマーを頭めがけて下してやりたい。
人間ね、日々に適度なストレスがないと逆にしんどいんです。
「ノーストレスこそが最大のストレスだ」
と、どこかに書いてあった気がしますし、もしかしたら今僕が勝手に作ったかもしれませんが、なんだかそれっぽいのでいい感じだと思います。
さらに、無職という茨の道を選んだ者には「将来の不安」という非常にザックリとした恐怖がゆっくりと襲い掛かってくるんです。
あなたはこの拭い切れないのっぺりとしたスライム状のモンスターの猛攻に耐えられますか?
「親または婚約者が大富豪」とか「不労所得が超ある」とかだったらいいけど、中流家庭で「まあ、今んとこなんとかなってる」ぐらいの装備じゃ、絶対に立ち向かえません。
転職までのエアポケット的無職ではなく、本気で「求道者」として無職を生きるなら、相応の精神のすり減りを覚悟すべきです。
「働かないのが悪い」とは言いません。言いませんが、「働かないのは辛い」と思います。働くことを選んだほうが遥かに楽なんです。マジで。
それでもまだ無職になりたいというなら、人の道をあえて踏み外した狂賢者みたいに理外の悟りを開くしか方法はありません。
僕の友人にもそんな偉大な無職がいまして、その人は当時28歳で「電車に乗れない」という無職界のスーパースターでした。
「なんで?」と理由を聞いたら、「めんどくさいから」と一点の曇りもない目で返答してきた彼は光ってました。確かに光ってた。
「徳の高い無職は光る」これは豆知識として頭に入れておくといいかもしれません。(でも、目は7週間放置した水槽みたいな色をしていました)
とは言っても、厳密に言うと彼は無職ではなくフリーターだったんですよね。
元々、僕がバイトしてた雀荘のお客さんでして、彼もその雀荘でバイトすることになって、という流れです。
まあ、バイトと言っても、寝坊して「遅刻します」って連絡しただけで「寝坊してもバックレないなんて永田くん偉い! 出世するよ!」と褒められるようなクズ人間の釜の底だったので、
働くという表現が正しいか疑問ではありますが、彼ほどのポテンシャルを持ってしても純な無職で居続けられなかったという事実。そこが恐ろしいところです。
「無職とは誰でもなれるプロ野球選手である」
これは今、完全に僕が考えたし、あんまりパッとしなかったので、言わなければ良かったな、と思ってる言葉です。
無職は誰でもなれるけど、続けるには選ばれた才能がいるってことが言いたかった。それを上手いこと言おうとして失敗したやつです。汲んでくれよ!意図汲んでくれよ! 汲めーーーーーーーー!!!!!
いや、でもホントに、僕にも無職の知り合いは何人かいましたけど、今はほとんど全員が働いてます。意外なことに無職って、マジでプロスポーツ選手の寿命ぐらいしか持たないんです。
だいたいそうなんです。長く続いてるのはイチロー・松井クラスのスター無職だけです。
みんな辞めちまったよ。ぬれ煎餅みたいな非生物的な淀んだ目をしてたアイツら、みーんな無職辞めちまった。
前述の「電車に乗れない」彼だけは今何してるのか知らないですけど。唯一わかるのは僕にLINEポップのハートを無闇に送ってくるということぐらいです。
33歳ぐらいの人間が、ハートも返事も一切返さない相手にLINEポップのハートを送り続ける。これはハッキリ言って異常だと思います。
人の理外を生きてる。理が通じない生物、人為らざるモノ。もしかしたら彼は「達した」のかもしれません。無職が行き着く天竺に…。
ここまで行ってようやく「世の中に負けない無職」が完成したと言えるんじゃないでしょうか?
ポルチーオ茸さん、ここを目指す覚悟があるならチャレンジしてください。もし、精神力に全力でステ振りしてないのであれば、諦めたほうが無難です。
俺たちみたいな凡人は死ぬまでゲボ吐き続けて働きましょう。
※この回答はオモコロメールマガジン2013年3月23日号掲載のものを加筆・修正したものです。