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こんにちは、ライターの友光だんごです。

今日は長野県諏訪市に来ています。といっても行き先は「諏訪湖」や「諏訪大社」ではなく、とあるプロジェクトに参加するため。

諏訪市って、実は「精密加工の技術」がとんでもなくスゴいんです。

 

諏訪では、戦後に「時計・カメラ・オルゴール」といった精密機器の製造がさかんになり、現在も、日本最高峰の技術を持つメーカーがひしめき合っています

 

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そんな諏訪市の精密加工技術をアピールする「SUWAデザインプロジェクト」(主催:諏訪市、企画・運営:(株)ロフトワーク)が行われていると聞き、実際に訪れてみました。

 

「SUWAデザインプロジェクト」の今年のタイトルは「スワッカソン」

諏訪市全面協力のもと発足したプロジェクト……どれほど凄まじい最先端技術を、どれほど壮大なスケールで展開するのか……

 

 

その全貌がこちらです

 

 

 

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フォォォ~ン! ギュイイィ~~ン!

 

 

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 ドギャアアッ!!

 

 

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 バァァ~~ン!

 

 

あっわかった、ふざけてる?

 

と一瞬思ったんですが、実はミニ四駆というのは、改造することが前提のおもちゃであり、工学的な技術や電子的な装飾、デザインなど、技術力を表現するには最適な素材なんだそう。

 

そこで公式ガイドラインを一切無視して、とにかく魔改造技術で作られたミニ四駆の大会やろうぜ!となったわけです。

 

でも、日本最高峰とも言われる諏訪市の技術を、おもちゃであるミニ四駆に全力投球しちゃったら……

一体どうなるの?

 

 

 

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こうなります

見てください、ギラギラと光り輝くメタルボディ!

 

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こちらはフロントウインドウに謎の画面!!

 

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本物のレーシングカーばりに躍動するサスペンション!!!

 
これらはすべて「スワッカソン」の参加作品。公式ガイドライン無視×大人げない技術力、この2つが組み合わさると、ミニ四駆はこんな有り様になってしまうようです。

 

こんなムチャな魔改造ミニ四駆で、最速を決めるバトルが開催されるわけです。最高じゃないですか?

 

 

魔改造ミニ四駆 大会開催!!

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では、大会に出場する参加者をご紹介しましょう!

この地上で誰よりもッ! 誰よりもッ! 最速を飢望(のぞ)んだ男たち!

 

入場ッ!!!

 

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▼エントリーNo.1:バネメーカー『デーデック』 

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バネの製造メーカーの『デーデック』が、チーム・デーデックとして出場。微細な技術に定評があるバネメーカーです。ミニ四駆のサスペンションを作るなら、めちゃめちゃ有利なのでは……?

 

そんな『デーデック』が作ったマシンがこちら!

 

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大人気なく、完全に勝ちに来たマシンですね。サスペンションやスライドダンパーなど、デーデック製の特注バネをふんだんに使用。速さにこだわったマシンです。

 

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▼エントリーNo.2:レンズメーカー『nittoh』

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続いてはレンズを作っているメーカー、『nittoh』のチームnittoh。

「光散乱導光体ポリマー」という技術により、入った光がロスせず、樹脂全体が均一に光るという。美しき武器を引っさげて、大会に殴り込みッ!

 

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光散乱導光体ポリマーで作られたミニ四駆(中央)。LEDの光でボディ全体が光ります。早いかどうかは、まあ、いいじゃないですか。

 

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▼エントリーNo.3:金属加工『丸安精機製作所』

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金属を機械で削る「切削(せっさく)」が得意。カメラの操作ボタンやオーディオのボリュームつまみのような「丸い金属パーツ」を中心に手がける『丸安精機製作所』。チーム名はL.P.M.。

 

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高級感あふれる金属のローラー&ホイールを搭載。フロントウインドウに表示されているパラメーターは一体何? 路面の状態やタイヤの耐久値……?

 

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と思ったら、ギターの音と連動してパラメータが動き、ライトが光る機能だそう。つまりまったく意味はありません。

 

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▼エントリーNo.4:金属部品製作『小松精機工作所』

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腕時計から自動車まで様々な金属部品を手がける『小松精機工作所』のチーム、小松精機×YLAB。

注目はスーパー金属「コバリオン」。プラチナと同等の輝きを持ちながら「金属アレルギーになりにくい」「さびにくい」という特徴がある素材です。

 

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『レッツ&ゴー!』世代には懐かしい、「シャイニングスコーピオン」がベース。高硬度のスーパー金属「超微細粒鋼」をギアの素材に使用!

 

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しかもマイコン搭載なので、コースのセクションを記憶して最適な速度に制御してくれるそうです。それって「GPチップ」じゃないですか…!!

※GPチップ……原作に登場する「シャイニングスコーピオン」が搭載している学習機能を持ったチップ

 

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▼エントリーNo.5:電子機器『エー・アイ・エヌ』

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電子機器の設計・開発を得意とする『エー・アイ・エヌ』が、TEAMエー・アイ・エヌとして参戦!

ミニ四駆の小さなボディを、電子の要塞と化すことはお手の物。

 

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なんとスマホで操作できるミニ四駆「BlueNinja」というハードウェアを組み込むことによって、加速度などを検知してるんです。

 

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スタート&ストップ、さらに走るスピードなども操作可能。少年時代に妄想したマシンそのままですよ、「操作できるミニ四駆」って。

 

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▼エントリーNo.6:金属加工『共進』

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金属加工部品専門メーカー『共進』。チーム名は、やっぱチョメズ。

金属を接合する独自の技術で躍進するこのメーカー、ミニ四駆というフィールドで持ち味をイカせるのか!? 

 

これがその解答だ!

 

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マシン後方には諏訪大社のシンボル「御柱(おんばしら)」が。

ボディ横のローラー部分には『共進』が得意とする「カシメ接合」(溶接やネジなどを使わず、金属同士を接合する技術)が使われています。

 

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▼エントリーNo.8:金属研磨『松一』

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ナノレベルの研磨加工技術を持つ『松一』は、松一×乱反車というチーム名で参加。

研磨と聞くと、一見ミニ四駆とは何の関係もなさそうですが……果たして自らの技術をどう融合させるのか?

 

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はい、融合させる気ゼロ! いいからとにかくウチの研磨技術を見ろ!という自負を見事に表現しています。日本刀の材料となる玉鋼を使用(ただし速さとは関係ありません)

 

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こちらも松一のマシン。貼り付けられたウロコの研磨具合を使い分けることで、それぞれが違った光の反射をするというこだわりの逸品(ただし速さとは関係ありません)

 

 

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ちなみに、大会はレース順位の他に、自社の技術をうまく昇華できているか? 諏訪の魅力を表現できているか? などもポイントになります。

つまりレースで1位になったからといって優勝できるとは限らないのですが、勝つことが有利なのは間違いありません。

 

そのため、全員の目がギラついていました。

 

 

いよいよレーススタート! 結果は?

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選び抜かれた精鋭7組が揃い、いよいよレース開始です!

 

なお、レースは総当たりで行われ、ミニ四駆は何台使っても構いません。気分で「今回はこっちを使おう」というのも可能です(そのため、上の写真も11台並んでいます)

 

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どうですか? イイ大人がこんなに真剣にミニ四駆のコースを見つめることってあります? 素敵すぎるでしょ。

 

正直なところ「コレ絶対まともに走らないでしょ……」という見た目のマシンもあったので、それだけが心配なんですが―

 

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フォォオオアアン!!

 

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キュオォォ~~ン! ギャギャギャ……!

 

 

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ズバァァッ!

 

 

速すぎて目で追えない。なんだこれ。

さすが諏訪の技術を結集したレース、すべてのマシンがちゃんと走ってる!

 

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中には速すぎてコースアウトしちゃうマシンもありました。速度と安定性のバランスが難しい!

 

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実は一番「これダメだろうな~」と思っていたのが、『松一』の玉鋼を使った「剣刃虎」。だって重そうだったから……。

 

でも、速さはないものの、堅実に走っていました。むしろ、速すぎてコースアウトしてしまうマシンより、確実にゴールにたどり着けるため、意外にも勝ちを多くひろっていた印象です。

 

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まあ、周回遅れになって後ろから追突される一幕もありましたが(頑丈なので壊れない) 

 

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御柱がそそり立つ『共進』の「諏訪大車」。走る前に祈りを捧げてて大丈夫かな?と思ったのですが―

 

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めちゃくちゃ速い! こんなのサギでしょ!

 

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『丸安精機』のマシンは再調整を繰り返し、ボディをテープで止めながら疾走。

 

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『nittoh』の光るマシン。ライトの残像が尾を引いてめちゃかっこいい!

 

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レースは、全戦大盛り上がり! そこかしこで「あぁ~……!」とか「よっしゃぁ~!!」という歓声が上がっていました。

 

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ただ、速く動くものを見すぎて、そろそろ動体視力の限界が……

 

 

 

というところで、1時間以上に及ぶ総当たり戦、すべてのレースが終了しました。

 

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結果はご覧の通り。

1位|nittoh「LIGHT FACE RACER / NANO METAL RACER」(全勝で文句なしの1位)

2位|共進「諏訪大車」(御柱パワーのご利益を見せつけた)

3位|デーデック「スプリングマシン2号」(バネを有効に使い安定した強さ)

 

ただし、「レースで1位=大会で優勝」ではありません。レース順位の他に、自社の技術をうまく昇華できているか? 諏訪の魅力を表現できているか? などもポイントになるからです。

 

果たして、この一大プロジェクトを制するのはどのチームだ……!?

 

 

結果発表

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では発表します。

第一回「スワッカソン・プロジェクト」、優勝は……

 

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ざわ…

 

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ざわ……

 

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ざわ……

 

 

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ドギャーン!

 

 

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「LIGHT FACE RACER / NANO METAL RACER」のnittohチーム!!!

 

レースで1位をとる圧倒的な速さに加え、自社の技術「光散乱導光体ポリマー」によって、樹脂全体が均一に光るという美しさが評価されました。文句なしの優勝ですね。

 

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続いて準グランプリは……

 

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「諏訪大車」の『共進チーム』に!

 

レースでの強さはもちろん、諏訪大社の御柱を取り入れたという地元愛。バランスの取れた準グランプリと言えるでしょう。

 

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続いては準グランプリとジモコロ賞をダブル受賞したこちらのチーム

 

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「剣刃虎」「龍鱗」の松一×乱反車

速さを捨てて見た目に全振りした『取り繕わなさ』が素晴らしかったですね。

 

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 ジェイ・キッズ賞

 

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地元企業の「ジェイ・キッズ」からの賞はデーデックチームに! 実はこのチームのお手伝いをさせてもらっていたので、嬉しかった~!

 

 

まとめ  

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大人たちが全力でミニ四駆と遊び倒した今年の「スワッカソン」諏訪市をあげての技術アピールを、ミニ四駆でやるというのは、かなり斬新だったのではないでしょうか。

 

何より、色んなメーカーや工場が、全員もれなくメチャクチャ仲良しになっていたので、新たなビジネスにつながりそうな匂いがビンビンします。

 

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なにより諏訪市の担当者2人の満足げな表情が、プロジェクトの成功を物語っているように思います。

 

来年があるならまた参加したい! 次は自分でイチから作ってみようかな……

 

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☆ミニ四駆の「第3次ブーム」を取材した記事もぜひご覧ください!