こんにちは。鬼谷です。

突然ですが、焼肉屋って店ごとに案外クオリティの差がありますよね。

たとえば激安食べ放題の焼肉屋それなりの値段がする良い焼肉屋では、肉の味も見た目も雲泥の差があります。生肉を客が焼くという単純なシステムなのに、不思議な話です。

そんな思いつきから「安い店でたらふく食べるのもいいし、高級焼肉を丁寧に味わうのも良さそうだなあ」などと夢想していたところ、ふと一つの疑問が生まれました。

 

焼いた肉を巻くためにある謎の野菜「サンチュ」

私は野菜が好きなのでサンチュを頼むことも多いのですが、このサンチュのクオリティは激安店と高級店で変わるのでしょうか。

仮に変わるとしても何が変わるというのか。値段、味、枚数、鮮度……とか?

気になりだしたら居ても立っても居られなくなったので、実際に食べ比べてみることにしました。

対象とする店は「安安」「牛角」「叙々苑」の3つ。いずれも北から南まで幅広く店舗を展開する焼き肉チェーンです。

早速食べてみるぞ!

 

安安(あんあん)

まずは今回の調査の中で最も低価格の「安安」から。

主に関東でチェーン展開しているようですが、初めて知った方でも「値段で勝負してるんだな」と容易に想像できる店名です。

 

入店すると、いかにも個人向けという感じの席に通されました。通路沿いですが壁もあり、適度な閉塞感が落ち着きます。

 

注文用のタブレットを操作し、早速サンチュを見つけました。着席してすぐに野菜を探すような奴は焼肉屋に来ない方がいいですけどね。

気になる値段は税込310円。

枚数はまだ分かりませんが、まあ注文するには抵抗のない価格でしょう。このほかに安安カルビ(290円)、安安ロース(310円)、ライス中(250円)を注文しました。

到着を待ちます。

 

待っている間は、安安のイメージキャラクターらしい女性を見て時間を潰します。1人でも寂しくありません。

 

まずサンチュ以外の3点が届きました。右がカルビで左がロースです。

右奥に写っているのはセルフサービスの水です。

今日はサンチュを食べに来ているので、肉を見たとてそこまでテンションが上がるわけではないですね。焼肉屋にいるのに変な感情です。

などと言っていたら、サンチュが届く気配が……!

 

うっひょ~~~♡♡♡

サンチュ♡ サンチュ♡

鮮やかな緑色は炭火で熱された目にも優しく、たまりません♡

 

枚数は8枚でした。

310円で8枚ということは、1枚あたり38.75円ですね。計算したところでピンときませんが。

 

肉が焼けるのを待ちます。

その間、サンチュだけで食べてみることにしました。

こんなに意味のない行動をするのは初めてです。

 

~~~~~~っ♡♡♡

葉っぱ♡

 

葉っぱの中でも特に味のない葉っぱという感じです。

青臭さもなく、シャキシャキとした歯応えだけがあります。

「そもそもサンチュって何なんだ」と思ったので調べてみたところ、農林水産省のサイトで「レタスの一種である」という説明がなされていました。

 

肉が焼けたので、本来のあるべき姿でサンチュを食べます。

 

ん~~~~っ♡

肉の味がして嬉しい♡

 

肉と一緒に食べることで、誰もが想像する普通のサンチュを食べている感覚が得られました。

味の感想については「肉と野菜を一緒に食べて美味しい」というほかに説明のしようがありません。

まだ1店舗目なので比較はできないものの、サンチュの満足感には文句なしです。

しかし一方で、サンチュの効果には「肉の脂っこさを軽減させる」というものもあると思っていたのですが、それを発揮させるほどカルビ側の脂を感じないかもな、と思いました。

サンチュによってさっぱり度が増すので、その場合肉の主張は強い方がバランスよく味わえる気もします。

 

ロースでも試してみましたが、赤身肉なのでサンチュと一緒に食べるとやはり結構さっぱりしていて、これを良しとするかは人によって分かれそうだなと感じました。私は好きです。

 

……というわけで1店舗目「安安」のサンチュを知りました。

あまりにも普通の「知っているサンチュ」だったので、今後どういった幅が生まれるのか不安ですが、とにかく次へ進みましょう。

 

牛角(ぎゅうかく)

2店舗目は「牛角」です。

牛角は焼肉チェーンで全国1位の店舗数を誇っているため、馴染み深い方も多いと思います。

入店すると、速やかに1人用の席へ促されました。

 

座ってみて感じたのですが、ここは目の前が厨房になっています。

つまり、安安でのように食べる瞬間の己の姿を撮るという行為は常に店員によって監視され「あいつ自分の飯食ってる姿を自撮りしてるよプークスクス」と思われる、いや真偽は分かりませんがそう思われているかもしれないと感じちゃった時点でもうかなり厳しくなってしまいました。

さらに周りを見渡すと、厨房を取り囲むように1人用のカウンター席が並び、隣同士は白い壁で完全に隔たれています。私は、いつの間にかパノプティコンの一室に収容されていたのです。

というのは冗談で☆
(己の姿の撮影が厳しいのは冗談ではないが)

 

メニューを開くと早速サンチュを見つけました。

税込319円で5枚。もしくは605円で10枚。

安安は310円で8枚だったので、牛角の方が割高なことは確かでしょう。しかし、見逃せないのはこれらの隣にある「牛角サンチュセット」というメニューです。

サンチュ5枚に大葉、ネギ、サンチュ味噌、カクテキ、ガーリックチップがついて539円とのこと。値段の損得は分かりませんが、サンチュがこれほどまでにスポットライトを浴びて複数のバックダンサーを従えている様子を見たら、これを頼まずにはいられなくなりました。

結局、この牛角サンチュセットとW牛角カルビ(539円)、ハーフサイズのロースと塩ロース(各385円)、ライス中(286円)を頼みました。肉の種類が多いのは、色々あった方が楽しいと思ったからです。

さらに、なにか飲み物を頼まなければいけないような圧力を感じたのでゴールデンパインジュースも注文しました。安安のセルフサービスの水が恋しいです。

 

カルビと上カルビが半々に乗ったW牛角カルビと、ロース・塩ロースが届きました。

カルビの脂の多さに面食らいましたが、このぐらいの方がサンチュの巻き甲斐があるでしょう。

そして、今回も少し遅れてサンチュがやってくるのです……。

 

わあ~~~!
要素がたくさん!!!

手前の赤いものに気を引かれてサンチュに目が向きませんでしたが、しっかり背後に佇んでいます。

さらに地味な大葉は右奥から頭を覗かせています。数えてみると10枚ありました。

5枚しかないサンチュに対して、賑やかしのパワーが過剰ではないでしょうか。

 

カルビと塩ロースを焼きながら、とりあえずサンチュ単体で食べてみました。

 

ここでのサンチュも葉っぱとしての味や青臭さは最低限で、食感のみが口内に響きます。

しかしシャキシャキ感を文句なく楽しめるかというと少し物足りない気もして、ポテンシャル自体は安安と大差ないと言ってもいいのですが、コンディションが整っていない印象がありました。

これには何か隙のようなものを感じます。

 

カルビが焼けたので、模範的な食べ方をします。

 

う、うま~~~い!!!

ごろっとした肉を噛むとジュムジュムと脂が滲み出てくるのが感じられ、それをサンチュが受け止めることでしつこさを感じることなく味わえます。

ああ、これや! これがサンチュと肉のマリアージュ、まさに食の黄金バッテリーや!

そんな興奮とともに独房で心躍るのも束の間、とんでもない刺客が現れました。

 

サンチュの上の塩ロースに、大葉とねぎの組み合わせ。

これがもう、最高に美味かった……。

肉の周りは3種類の野菜が包囲しているため、噛み始めはしばらく青々とした風味が漂いますが、最終的には笑顔がこぼれるほどの美味さへたどり着きます。

カルビ×サンチュが連続三振劇で魅せるなら、こっちはあえてバッターを歩かせてから6-4-3のダブルプレーで打ち取って優勝決定の胴上げだ! 薬味バンザイ!

 

ちなみにロースとともにカクテキとガーリックチップを加えたら一気にコミカルな味となり、肉の味やサンチュの爽快さが薄れてしまうので少しもったいない気がしました。カクテキは単体で食べてもいいと思います。でもこの組合せも美味いことは確か。

ぜんぶうま~~い!!

 

……さて、牛角の添え物オールスターにまんまと翻弄されてしまいましたが、あくまでも本題はサンチュです。

そう考えた時に「牛角のサンチュはどれほど地力で勝負できているのか」という疑問は生じます。

捻くれすぎかもしれませんが、セットの大葉やネギの力はサンチュの力を増幅させる一方で、万全の状態でないサンチュをカバーするための体制としてスタンバイしているようにも感じました。

明言はしません。しかしこのときのサンチュにはそういう気配があったのです。

 

安安を振り返ると、肉やその他の要素と合わせて食べた時の満足感は牛角に及ばないものの、技巧を持たずに堂々と現れたサンチュ自体は良いものだったなと思います。

ここまで2店舗を経験し、各サンチュの違いも感じてきたところでいよいよ本丸、高級焼肉店の代名詞「叙々苑」に参じます。

 

叙々苑(じょじょえん)

翌日の昼、「叙々苑」の六本木本店に来ました。

本店というぐらいですから、全ての叙々苑はここから生まれ、全国に散らばっていったのでしょう。

なお昼に来た理由は、昼ならランチメニューがあり、夜だと無理だからです。

 

店に入ったらどうなってしまうのか分からないので、とりあえず外で記念写真を撮っておきました。

ちなみに私の身分は純粋なフリーターなのですが、純粋なフリーターが叙々苑の六本木本店に来ていいのだろうかという不安があります。最大限の贖罪として、自分が持っている服の中でも特に綺麗めなものを身につけてきたつもりです。しかしそれにそぐうバッグのようなものは持っていないので、結局いつも使っているアディダスのリュックを背負ってきてしまいました。

これが原因で失格になるかもしれません。

覚悟を決めてエレベーターに乗りました。

 

エレベーターを出ると、すぐに叙々苑の看板が見えます。もう1メートルでも進めばエンカウント必須でしょう。ボス戦前のセーブをするように、遠めから看板を撮りました。

店の前に進むと、この写真では死角になっている左側の壁の陰に、姿勢のいい男性店員が立っていました。

いらっしゃいませ!
あ、12時で予約した鬼谷というものです
お待ちしておりました。鬼谷様ですね。こちらへどうぞ
ご予約のお客様ご来店です!
いらっしゃいませ~!

 

完全にペースを握られています。これはもう無駄に抵抗せず、身を任せてしまった方がいいでしょう。

窓側のお席ボックス席がございますがどちらになさいますか?

 

通路を先導する店員様が話しかけてくださりました。席を選ばせてくれるらしいです。

窓側の席だと眼下には外苑東通り、奥に六本木交差点を望むことができますが、通路に直接面しているので店員や他の客からの視線を遮ることができません。

昨日の牛角では近代的監視システムがもたらす圧迫感にやられてしまったので、今回は迷わずボックス席を選びました。

壁に囲まれたボックス席には4つの椅子があり、私は一番奥に腰掛け、隣の椅子にリュックを置きます。

 

広くてすごい。住めます。

ご来店いただきありがとうございます。~~~(なにか有難いお言葉をいただきましたが緊張で忘れました)

はい、ありがとうございます

 

店員は説明を終えて去りました。とりあえず入店できた安堵とともに一息ついていると、再度店員が訪れて、なにか布のようなものを広げました。

「手品だろうか……」と思っていると、店員はその布をファサ……と隣の椅子に被せ、再び去ってゆきます。

私のアディダスのリュックは、綺麗な布に覆い隠されてしまいました。

 

やっぱりダメだったようです。

 

ランチメニューは税込2900円、3800円、5700円とあり、迷わず一番安いやつにしてしまおうかと思いましたが、よく見ると2900円の肉は「和牛肉のみで成形した合わせ加工肉」とのことです。意味はわかりませんが、牛同士のキメラみたいなものを育てた肉でしょうか。

これまで安安・牛角ではカルビとロースを食べてきたので、ここでもそれを比較するために、カルビと赤身ロースがある3800円のものを選びました。実はこれだけで前2店舗の合計金額に匹敵します。

そして、いよいよ主題のサンチュです。

ランチタイム限定サイドメニューなるものの中に「ランチサンチュ」という項目を見つけました。

果たしてお値段は……

 

ランチサンチュ、550円

こ、これは……

 

そこまで高くはないのではないか……?

 

しかし油断するのはまだ早いです。ランチタイムに気軽に頼めるサンチュということで、枚数がすごく少ないかもしれません。店員に聞いてみましょう。

呼び出しボタンを押すと、間もなく店員がやってきました。

まずはミックスランチの注文を宣言し、併せて質問します。

このランチサンチュって、何枚ぐらいあるんでしょうか?
たしか……、6枚ほどだったと思います
(6枚で550円か……。たしかに安安や牛角と比べると高いな)
そうなんですね。ちなみに、ランチサンチュじゃない普通のサンチュはありますか?
はい、ございますよ。そちらにはエゴマの葉と野菜スティックが付いて、300円お高くなっております
(謎の葉と野菜スティックがあるとは言え、6枚で850円のサンチュ!くぅ~、やっていやがる!)
そうなんですね。じゃあランチサンチュの方を一つお願いします

 

悔しいですが、私には850円のサンチュを頼むことはできませんでした。だって高いんだもの。

それに今回の目的はサンチュの味を知ることですから、これでいいのです。

550円で野菜スティック無しのランチサンチュは、私のためにあったのです。

 

待つ間に通常メニューも見てみましたが、そこはまさにケタが1つ違う世界でした。ランチメニューのありがたさが改めて沁みますね。

 

恐るべき夜の叙々苑に想いを馳せていると、ついに食べ物がやってきました。

 

失礼いたします

まずこちらが御膳でございます

 

へえ、御膳……。御膳の意味はよくわからないけどすごく美味そうです。

 

続けて出されたこれが叙々苑の肉です。ギラギラと光りながら円錐形の山を作っています。

いくらサンチュが主役といえども、流石に興奮が抑えられません。

そしてお客様、サンチュなのですが……

あ、はい!

先程わたくし、サンチュは6枚と申し上げましたが……

はい……(おいおいおい! 枚数の訂正ですか!? まあ天下の叙々苑様が550円で6枚なんてヌルすぎると思ってましたけどね!! 5枚ですか! 4枚ですか! それとも半分の3枚ですか!? もう何枚でも構いません! 最悪1枚あればオッケーです! 1枚しか要りません! 1枚でお腹いっぱいです! ごちそうさまでした!!)

実はサンチュの枚数は……

 

 

10枚でした

じゅ、じゅじゅ、10枚!?!?

 

失礼いたしました

いえ、ありがとうございます……

 

店員は、10枚のサンチュを置いて去っていきました。

10枚550円って、牛角より安いじゃんかよ……。

 

お待ちかね、これが叙々苑のサンチュです。

550円とは思えない立体感と輝きを放っています。

そして見た目についての一番の特徴をお伝えすると、このサンチュは立っているのです。

これまで安安と牛角で頼んだサンチュはいずれも平皿に積まれていましたが、叙々苑のサンチュは凛と背筋を伸ばしています。それだけの鮮度があるぞということを態度で示しているのでしょう。

 

肉を焼いている間、例によってサンチュだけで食べてみます。

 

シャッキシャキ。

シャッキシャキのパリッパリでした。厚みも瑞々しさも十分なうえに野菜本来の味や適度な苦味がしっかりと感じられて、もうこれだけで美味いです。

そしてもちろん大前提として、私がこれまで食べてきたものと同じ「サンチュという野菜」であることは間違いないとも感じます。
ただその質の高さが想像を超えてきたというか「えっ、強豪校って試合前の練習でもこんなに本気出すの?」と度肝を抜かれたような感覚です。

同じサンチュでも、これほど変わるか……?

 

カルビが焼けたので、乗せました。

 

うんまあい……。

超うまい肉と超うまい葉っぱを一緒に食べたら超超うまいという、それだけの話です。

 

ロースと焼きネギを一緒に巻いたやつも、噛めば噛むほど旨みが出てくる肉とともにネギの甘味が爆発していて最高でした。

そのほかにも、エビ・トウモロコシ・キムチ・ナムル・サラダ・スープ・ごはんを食べましたが、いちいち説明したらキリがないくらい美味かったです。

 

全てを食べ終え「もう思い残すことは無い」と感慨に浸っていると、何を察したのか店員がやってきて皿を下げ、食後のコーヒーとデザートの杏仁プリンを持ってきました。

 

もう、俺をどうしたいんですか……。

 

「お手上げです」という気持ちを込めて記念撮影をしました。壁も綺麗すぎて鏡のように反射しています。

叙々苑のサンチュに、乾杯☆

 

結論

以上、焼き肉チェーン3店のサンチュを比較してみました。

それにより分かったことは……

 

そして……

 

以上です。

 

この記事があなたのサンチュライフの参考になれば幸いです。

長文となってしまいましたが、最後までお読みいただきサンチュベリーマッチ