身内音楽という音楽のジャンルがあるらしい…身内音楽というフレーズを聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?

 

僕がその言葉を耳にしたのはコチラのツイートでした。

 

数の子ミュージックメイトは、一般市民による演奏・声が録音された記録媒体(レコード、CD、カセット、など)を「身内音楽」と呼び、収集・研究しています。皆さんがお持ちの、または発見した身内音楽がありましたら、是非ご一報下さい。

 

ああ!なんか合唱コンクールのCDとかのことね!音楽室で聴かされた覚えがあるわ!

 

他にもこの方はこういうツイートをされていました。

 

身内音楽テープ最近のサルベージ対象であった保土ヶ谷区のカラオケスナックM・Kの実況録音テープ(通称MKテープ)。とんでもなくフリーダムな「川の流れのように」を見つけました!!!!何かの機会に皆さんにも聴いて頂きたく思います。

え!?他人のカセットテープ!?しかもカラオケスナックで録音したやつ?客が歌ってるの!?ってか、こういうの集めている人がいるの!?

 

ちょいと気にしていると第七回月例報告会〜身内音楽の歩み〜という身内音楽DJイベントを開かれるとのこと!すぐさまアポを取り取材させて頂きました。そちらのレポートとなります!

 

月例報告会〜身内音楽の歩み〜

イベントは神楽坂のバーで行われているとのこと。

 

 

NOTRE MUSIQUEというバーで定例会は行われました。

 

 

 

こちらが数の子ミュージックメイトさん。顔出しNGの為、数の子のイラストで隠させていただきます。

 

 

 

 

「こんにちは!メールをお送りしたおおきちです。今日はよろしくお願いいたします!早速ですけど身内音楽ってジャンルはなんなのでしょうか?」

 

 

 

「ええと、学校卒業の際に記念として合唱のCDって配られませんでした?」

 

 

 

 

 

「ああ…僕の所は無かったですけど、音楽室には過去の卒業生の記録としてありましたね」

 

 

 

「ありましたよね?そういった学校で配られた記念盤ピアノの発表会、果ては町内のカラオケ大会を記録したカセット等を身内音楽と呼んで集める活動をしています」

 

 

まだ世間に評価されていない過去の音源をレアグルーヴと呼び再評価をするというDJ文化があるのを知っていたけども、こんなにもパーソナルな音源を集めてる人がいるとは!!!様々なジャンルのコレクターがいるけども、これは極北なのではなかろうか?

 

 

 

 

「スイマセン…根本的な事聞きますけど、何故この様などインディーズな音源を集め始めたのでしょうか?」

 

 

 

「ハハハ!いや元々音楽が好きで特にローファイ(≒音がショボい)なのが好きだったんですね。フィンランドのパンクのレコードなんかを集めていて。で、大学4年の時に茨城のハードオフでこのレコードを見つけて。買って再生した時に『あ、俺が集めるべきジャンルはコレだったんだな!』って思ってしまって。それがキッカケです」

 

 

最初に見つけたというそのレコード。中身はとある高校のフォーク部の音源だったいう。

 

 

 

 

「なんというかプロの音源には収録されていない音の無垢さというか、無邪気さというか。既製品のレコードには絶対に収録されない味みたいのが身内音楽にはあるんですよ」

 

 

 

ジャケットの裏側スミに制作:株式会社フロンティアヴォイスと書かれている

 

 

 

 

「身内音楽を集めていく内に分かったことなんですけど学校の記念レコード専門に制作しているレコード会社があるんですよ。このフロンティアヴォイスとか。こういう記念盤って基本的にジャケットの印刷をしないので必然的に制作会社デフォルトのジャケットが使用されるんですよ、僕はこういう仕様をジェネリックって勝手に呼んでるんですけど(笑)。なのでウチには全く同じジャケットのレコードが大量に家にあるんです」

 

 

 

「そんなになるまで集めんてんのかい!」

 

 

 

 

どんなものでも数を集めてみると共通点と相違が見えてきて、もっと集めると年代・製作者・地域など理由が浮かび上がってくる。コレクションの魅力は見えなかった点と点が繋がっていくことでもあると思うのです。

 

 

 

 

「あと身内音楽の魅力に再生するまでどういった内容が入っているか分からないっていう宝探し感覚だというのもあります」

 

 

 

「確かに!魅力に気付いた人でないとそういうジャケットのレコードは手にとらないかもしれませんね。この身内音楽というジャンルは結構知られていてるのしょうか?」

 

 

 

「海外にもこういうの集めているコレクターはいるんですけど、日本人ではあまり聞かないですね。ただヤフオクで何回か競り合った事のあるアカウントはいます。その人も多分身内音楽を集めている人なのかな?という気はしているんですけど、不思議とその人とは合唱のレコードの時しか競り合わないんですよね」

 

 

アツい名盤を紹介

数の子ミュージックメイトさんのキッカケが分かったところで1000枚近くあるというコレクションからオススメを教えていただいた。

 

音の面でオススメというレコードがコチラ。

 

 

1985.10.20 新旭町 IYY音楽祭と書かれている。

 

 

 

 

「これは滋賀県で行われた青年会的なやつ主催の音楽イベントを録音したレコードなんですけど、この中に入っているDryってバンドが最高で!」

 

 

ブックレットに載っているDryのメンバー

 

 

 

 

「このDryはパンクバンドなんですけど『パンクってのがあるらしい……』っていう曖昧な情報と想像だけでパンクバンドをやった結果2017年の現在にも存在しないジャンルの音楽になっているっていうのが素晴らしいんですよ。そういう存在はしていたけど誰も知らない楽曲身内音楽のレコードにしか収録されていないんです」

 

 

パンクを知らなかったからこそ生まれた音楽があったとは!インターネットが出来て世界中の情報が調べられる様になった結果、知らないからこそ産まれたものが産まれるチャンスを潰してしまっているのかも知れない。

 

 

 

 

「コチラなんかはものすごくストーリーが詰まっているレコードです!」

 

 

青春をありがとう〜ジュンちゃんファンの世界〜と書かれたジャケット

 

 

 

 

 

ジュンちゃん……?名倉?美保?」

 

 

 

 

「これね……ファン達が推しの宝塚女優への思いをオリジナル曲にして録音したレコードなんですよ!」

 

 

 

 

ヅカオタの同人サークル作 ご贔屓へのトリビュートアルバムってことですか?愛だ!愛しかない!」

 

 

 

 

 

1980年に作られたこのレコード。収録曲は全てエッちゃんというファンのオリジナル楽曲で贔屓の女優ジュンちゃんの宝塚退団が決まった際、ファンの間では知られていたエッちゃんのオリジナルのジュンちゃんソングを「レコードに残そう!」となり、ファンが集まり自分たちで楽器を演奏して録音したレコードだという。

 

 

レコードの中に封入されている購入者へのお礼状

 

 

 

 

「これだけの詰まった身内音楽もあるんですね……」

 

 

 

こちらの天馬というとある小学校の卒業記念盤レコード。こちらはジャケットがオススメだという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!がついてるッ!!絶対コイツ本人が元の持ち主じゃないですか!」

 

こういった残留思念がこもったモノが多いのも身内音源の特徴だという。クリック一つでなんでも買える時代だからこそ、この様なネット検索で探せないモノに価値を感じる方が増えていく気がします。ちなみに落書きをされたレコードを汚レコードと呼び集めているコレクターもいるとのこと…コレクターの世界は広い…

 

落書きレコードばかりを集めた「あなたの知らない『汚レコード』の世界展」開催中 第一人者が語る“汚レコード”の魅力とは

 

 

 

 

「身内音楽って、普通のレコードと生産の仕方は同じなのに流通は関係者のみなんですよね。で、現代になって手放す人が出て来たと。これが手に入ってしまうという時代のバグ感というか、そういうのが面白くて集めています」

 

カセットテープ

身内音楽はなにもプレスされたレコードだけではない。町内のお祭りのカセットテープなども身内音楽の一部だという。

 

  

こちらのカセットには砲設会という団体の旅行とカラオケ大会が収録されている。

 

 

 

 

「こういうカセットは不要品としてまとめてセットで売られているケースが多くて。そういうのも購入しては聴いて集めています。この手のカセットはカラオケ大会を録音したものがめちゃくちゃ多いんですけど、マイクを置く『ガタッ』って音とかお客さんのガヤとかの生活音既製品には絶対入ってないのでなんかいいんですよね。ただ演歌が多いので聴き過ぎて演歌ゲシュタルト崩壊状態に陥る時もあります(笑)」

 

 

 

 

 

こちらの留夫の声と書かれたテープは、持ち主である留夫さんが会社対抗歌合戦に勝った時のエピソードを振り返りながらボソボソと自宅でレポートする一人ラジオの様な声が録音されていた。また、後半は留夫がどうやら入院した様で、同級生が同窓会で留夫にエールを送る声が収録されていた。

 

(カセットの音書き起こし)

「留夫さん、春日です。エー…病床で辛いかと思われますが留夫さんの快復を祈っております。病に負けるな〜〜!エイッ!エイッ!エイッ!」

 

 

カセットテープはその特性上レコードよりも身内感を強く感じました。

レコスタって覚えてる?

この短冊形8cmCDのジャケット。これだけでも懐かしいのだが、このジャケットに見覚えある人いるのではないだろうか?

 

 

 

「これもリサイクルショップで発見しては買っているシリーズ『レコスタです!」

レコスタとは?

(株)ジャパンアミューズメントエージェンシー(JAA)は30日、カラオケを歌って録音し、オリジナルCDを制作できるアミューズメントマシン『レコスタ(RECOSTA)』を、ゲームセンターやアミューズメント施設向けに、7月下旬に発売すると発表した。価格は270万円。

レコスタでは、利用者が任意の曲を選択してカラオケで歌うと、歌った歌がそのまま録音され、8cmのシングルCDにプレスされる。カラオケが終わった後、利用者の写真を撮影して、写真入りのオリジナルCDジャケットを作成。自分の歌が入ったオリジナルCDをその場で手に入れられる仕組みとなっている。利用料金は1回800円。

JAA、カラオケでオリジナルCDを制作できるアミューズメントマシンを発売――つんくプロデュースのオーディションに参加も可能

 

 

 

 

「あー!レコスタ!ありましたありました!!ゲーセンの片隅に置いてあったやつ!!小部屋で歌って録音するやつ!!ってか、こんなものまでリサイクルショップにあるんですね!?」

レコスタの筐体見たことある人いるのではないだろうか?

 

 

音源を聴かせてもらう。

 

 

『SHINPEI!おじょーにKNOCK OUT!』と書かれたこのCD。内容はプッチモニBABY!恋にKNOCK OUT!の替え歌。しんぺいの友人だろうか?男性二人が『友人のしんぺいとその彼女のおじょー』に捧げる形の替え歌になっている。

 

(CDの音声書き起こし)

「しんぺい♪おじょーにノッカウ!! \ノッカウ!!/ アハハハ(笑)」

 

 

しんぺいおじょーはこのCDを聴いたのだろうか?そしてなぜ手離したのだろうか?

 

 

歌い手とその恋人であろうプリクラがジャケットに貼られたレコスタCDもあった。こちらにはDIR EN GREY予感が録音されていたどこで仕入れたんだって!!!

 

身内音楽の今後

イベント終了後、数の子ミュージックメイトさんはこう語っておりました。

 

 

 

「こういうマイナージャンルのコレクターの最終目標って再発売なんですけど、身内音楽ってそういうのは絶対出来ないんですよ。そういう貴重さも含めて愛でているんですけど。いつか

 

ロック・ヒップホップ・テクノ・和モノ・身内音楽

 

みたいにジャンルとして認められるのが今の目標ですかね?魅力を発信していきたいと思います。ちなみに最近某レコードチェーン店では身内音楽ってフレーズが使われているのを発見しました。地味に知られて来ているジャンルだと思います」

 

 

数の子ミュージックメイトさんは12/2に新宿ネイキッドロフトにて身内音楽についてのトークイベントを行うとのこと!

実際の音源を是非体験して頂きたい

 

 

「言われるまで気付かなかったど、言われてみれば確かにある!」それに気付くと見えてくる世界があります。今回のこちらの記事で身内音楽目線が付いてしまったアナタ!実家やリサイクルショップに寄った際は身内音楽を気にしてみるのはいかがでしょうか?

 

 

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