こんにちは。ライターの菊地です。FPSゲーム『レインボーシックス シージ(Rainbow Six® Siege =通称シージ)』をプレイ中です。

 

レインボーシックス シージとは、ユービーアイソフトが販売するゲームソフト。プレイヤーが5対5に分かれて戦うFPS視点のゲームで、競技人口が4000万人もいる今最も熱いゲームのひとつ。

 

僕はゲームが好きで毎日やっているのですが、最近よく思うことがあります。

ゲームだけして生きていきたい

仕事なんかせずに、家でずっとゲームをしていたい。そしてあわよくばお金も欲しい!

 

というわけで今回は、最近よく耳にする「プロゲーマー」に話を聞いてみました。実際稼げるの? どうやったらなれるの? ゲームがうまくなるにはどうしたらいいの?

 

現役プロゲーマー、けんき さんのご自宅に伺って話を聞きました。

 

けんき

1993年生まれ。日本最大級のプロゲーミング集団『父ノ背中』の副リーダー。YoutubeでFPS(シューティングゲーム)を中心に動画投稿も行っている。

最近ハマってるのは料理。猫を3匹飼っている。

・Twitter

・YouTube

 

現役プロゲーマーに聞いた!ゲームだけで稼げるの?

「あの~実際のところ、プロゲーマーって儲かるんですか?

「第一声がその質問(笑)!? う~ん、プロゲーマーといっても収入は人それぞれなんですよね。僕の場合は少ない月でも200万はあるかな」

「ん? 聞き間違いかな? それとも、200万ペソって言いました?」

「日本円ですね。最低でも月収200万円以上です」

「ということは年収にすると2400万円以上ってこと? えっ、ゲームするだけで……? 」

「もちろんゲームはしますけど、ほかにもスポンサー企業との打ち合わせや、YouTubeへの動画投稿、実況配信などもしていますよ」

「企業との打ち合わせ……思ったよりサラリーマンみたいな働き方をしてるんですね。そういった業務は、運営スタッフのような裏方さんがするものだと思っていました」

「一般的にはそうかもしれませんね。でも僕が所属してるチーム『父ノ背中』には、選手しか在籍してないので。あらゆることを自分たちでやってます」

「プロゲーマーって、ゲームだけしていれば良いと思ってた」

 

インタビュー中も、好きあらばけんきさんの膝に乗ってくる飼い猫。かわいい!

 

「所属しているチームによっては、ゲームだけに専念できるケースもあります。ただそういったチームの場合、選手は従業員として所属するので、収入が安定する代わりに額が少なかったり、急に契約解除になったりする可能性があります」

「プロゲーマーの収入は少ないと聞いたことがあります。けんきさんみたいに稼げているプロゲーマーの方が少ないんでしょうか?」

「そうですね。ゲームだけで食べていけてる人は少ないかもしれません。ただ『父ノ背中』には、業界の平均よりも稼いでいるメンバーが多いです」

「それはなぜでしょうか?」

「チームのネームバリューもありますが、選手が従業員としてではなく、個人事業主として所属しているので、裏方スタッフや経営者にマージンが取られないというのが大きいですね」

「働いたら働いた分のお金がしっかり入ってくると」

「その通りです。実際、ほかのチームから移籍してきた選手の月収が5倍になった事例もあります」

「5倍!?仮に月収20万円の選手だったら100万円になるってこと!? 所属するチームを選ぶのも大切だなぁ」

 

ゲームは1日9時間以上!?プロゲーマーの1日とは

「プロゲーマーって、普段どんな生活をしているんですか?」

「僕の場合は12時くらいに起きて、まず猫たちの世話をしまして……」

「いや、猫の話は大丈夫です。好きすぎでしょ、猫」

「えっと、じゃあ13時から18時までは個人練習や実況配信、20時から翌2時まではチーム全体で練習をしています。それが終わったあとも寝るまで配信することが多いですね」

少なくとも1日9時間はゲームしていることになりますね。羨ましいな……。学生の頃に『ゲームは1日1時間まで!!』って親に怒られませんでしたか?」

「プロゲーマーとして生活できるロジックを立てて、しっかり親に説明していたので、僕は怒られませんでしたね」

「末恐ろしい学生だな……」

「今でこそ野球選手やサッカー選手を目指すのはカッコイイとされていますが、昔は『野球ばっかしてないで、勉強しなさい!』と怒られていた時代もあったと思うんですよ。だから、プロゲーマーも今はその時期なのかなぁと」

「なるほど。もう少し時が経てば、プロゲーマーも市民権を得て、目指すこと自体が普通っていう時代がくるのかも。でも、ゲーム三昧の生活でどうやって月200万も稼いでるんですか? 大会の賞金がめちゃくちゃ高いとか?」

「国内の場合、高額な賞金の出る大会はまだ少ないので、主な収益はYouTubeでの実況配信と動画投稿ですね。動画投稿は、企業とのタイアップやPR案件の場合、一本で100万円を超えることもあります」

 

「YouTubeで得る収益が多いんですね。プロゲーマーのけんきさんが、YouTubeを始めた理由ってなんですか? 」

「もともとは、チーターを疑われたことがキッカケでした」

「あぁ『あいつ足めちゃくちゃ早くね? サバンナ出身だろ』みたいな?」

「ネコ科の動物のことじゃないです。ゲームが上手くなると『あいつチート使ってるんじゃね?』と疑われるんですよ。だから、チートを使ってないことを証明するために、プレイ中の手元を写す配信を始めたんです」

※チート=ゲームを優位に進めるために制作者の意図しない動作をさせる不正行為(インチキ)

「チート疑惑を解消するために配信かぁ。ゲームが上手いと、いらぬ疑いをかけられて大変だなぁ」

 

けんきさんは大のネコ好きで、3匹も飼っています。でも……

 

猫アレルギーなのだそう。何なんだ。

 

プロゲーマーの落とし穴を回避する「腕より人気」

「やっぱりゲームをやり込んでお金持ちになれるって夢があるなぁ。まさに好きなことで生きていくって感じですね。僕にもゲームの才能があれば……」

才能がなくてもプロゲーマーにはなれますよ。実際、僕も才能なんてないし、ゲームも上手いなんて思ったことないですから」

「そんなバカな。けんきさんに才能がないなら、大多数のプレイヤーはどうなっちゃうんですか」

「いや、本当に才能は必要ないです。大切なのはどれだけ努力できるか。ゲームは平等なんですよ。体格差や身体能力に左右されないので、練習したら誰でも、必ず上手くなれる」

「じゃあ、今から僕がめちゃくちゃ努力したらプロゲーマーになれる可能性も?」

「あります。1日12時間以上練習し続ければ

「12時間!? 受験生の勉強時間よりも多いぞ……」

「そうですね。ただ、今からレインボーシックス シージでプロを目指すのは大変だと思いますよ。すでにプロも大勢いて、彼らも日々練習していますから。追いつくためには彼ら以上に練習する必要があります」

「1日12時間以上練習してるプロに勝つためには、どれだけ練習すれば良いんだ」

「今からプロゲーマーを目指すなら、リリースされたばかりのゲームに絞ってやり込むことをおすすめします。まだプレイ時間に差が出ていないので、プロゲーマーになれる可能性は高い。ただ、そのゲーム自体が人気が出るかわからないですけどね」

「なるほど。じゃあ、リリースされたばかりのゲームを練習しまくって、しかもそのゲームが盛り上がれば、僕も『父ノ背中』に入れる?」

「残念ですが、それだけじゃ『父ノ背中』には入れません。というのも、うちはゲームが上手いことは大前提で、人気があるかどうかも重要視しています。現在の採用基準は、Twitterのフォロワーが10万人以上いることなんですよ」

 

「10万人!? 僕フォロワー500人しかいないんですけど」

「では、ごめんなさい」

「くっ……! でも、どうしてツイッターのフォロワーが重要なんですか? プロならゲームが上手ければ良いのでは?」

「たしかにゲームがめちゃくちゃ上手ければ、大会で優勝して注目を浴びるでしょう。スポンサーもつきやすい。でも長くプロゲーマーを続けていくためには、腕より人気が大切なんです」

「ゲームの腕より大事なものがある!?」

「『ゲームが上手いから』という理由だけで注目を浴びても、自分より上手い選手が現れたり、得意とするゲームのサービスが終了すれば、プロを続けていけない

 

「長い歴史を持ち、脈々と受け継がれてきた将棋や野球、サッカーは、今さら大きなルール変更はありません。明日からその競技がなくなることもあり得ない。でもゲームはずっと同じじゃないんですね。ルール変更やサービス終了のリスクがある

「あぁ~! そう言われればそうですね。ある格闘ゲームで無敵の強さを誇っていても、バージョンアップで使用キャラが弱体化されたり、新シリーズになると以前の戦法が使えなくなったり」

「そう、eスポーツは企業のサービスや方針に依存せざるを得ないわけです。 自分がプロとして活躍してるゲームが終了したら……」

「その場合は別のゲームとか、新しいゲームに移行したらいいのでは」

「他のゲームに移っても、いきなりプロレベルで活躍することは難しいでしょう。また、新しいゲームをやり込んでも、前線で活躍できるまで時間がかかる」

「え、じゃあどうするの? 無職になっちゃうってことですか?」

「だから、自分にファンがついていることが大切なんです。ファンがいれば、新しいゲームを始めても配信や動画を見続けてもらえる。つまり、新しいゲームを練習している期間も生計を立てていけるんです」

「なるほど。腕より人気が大切ってのは、そういうことですか」

 

プロゲーマーとアマチュアの線引きはどこ?

「そもそもの話になっちゃうんですけど、どうやったらプロゲーマーを名乗れるのでしょうか。やっぱり、プロテストに受かってライセンス(免許)を取得したら?」

※ライセンスとは=プロである事の証明書、免許証のようなもの。プロゲーマーの場合は、国内外で活躍できるeスポーツ選手の育成や地位の向上を目指すべく、日本eスポーツ連合が発行している

「現状、ライセンスを持っている=プロゲーマーというわけではないですね。実際、僕はライセンスを取得していません。チームメンバーの中には取得している人もいますが、個々の自由です」

 

「プロゲーマーかどうかは、企業からスポンサードを受けているかが基準になるんじゃないでしょうか。『父ノ背中』の場合は、モニターなどを製造販売しているIODATA(アイ・オー・データ)や、ゲーム周辺機器の製造、販売をしているRazer(レイザー)といった企業からスポンサードを受けています」

「名だたる企業ばかりですね。スポンサーがつけばプロであり、そして安泰であると!」

「うーん。確かに今のプロゲーミングチームはスポンサーを多く獲得して運営することが主流です。でも僕は、スポンサー依存のビジネスモデルでは、いつか限界がくるかもという懸念を抱いています」

「な、なぜ!?」

「スポンサーによる収入だけに頼ると、企業が『eスポーツは費用対効果が悪い』と考えてスポンサーを降りてしまった場合、収入がなくなってしまう。それはあまりにもリスキーです」

「なるほど。ではどうするべきなんでしょう?」

「スポンサーに頼らない仕組みづくりを考える時期じゃないかなぁと。例えば僕はオリジナルブランドを作成をしているんです。ファッションブランドの『neutoronica (ニュートロニカ)』とか、FPSゲーマー専用のエナジードリンクですね」

 

neutoronica 公式サイト

「ゲーマーってそんなに色々なこと考えて手を打たないといけないの?」

「できれば5年後、10年後もプロゲーマーとして生活していきたいんで。今取り組んでいる事業も、少しでも長くゲームを続けるためですよ」

「本当にゲームが好きなんですね」

「そうでなければ、プロゲーマーなんかやってられませんよ。寝ても覚めてもゲームしてるし、一年中ゲームのことを考えてる。プロになってからは、休みなんて年に5日もないんじゃないかな」

「年に5日!? 好きでやってるとはいえ、さすがにウンザリするでしょうね。貴重な休日は何をして過ごしてるんですか?」

「Minecraftとかやってますね」

「休みもゲームしとるんかい!」

 

 

取材を終えて

楽しくゲームをしていればお金がもらえると思っていたプロゲーマー。しかし実際は、ただならぬ努力を続けていく過酷な職業でした。

最後に、プロゲーマーがいかに真剣にゲームに向き合っているのかがわかる動画をご紹介したいと思います。

 

いかがでしょうか? このピリピリとした空気! たしかに、eスポーツと呼ばれるのも納得です。

 

かっこいいなぁ。僕もいつかこんなプレイができるように、エナジードリンクを飲みながら頑張りたいと思います!

 


 

その夜……

よーし!プロゲーマー目指してがんばるぞー! これから毎日12時間以上ゲームの練習だ!

 

カタカタ……

 

カタカタ……

 

カタ……カタ……