こんにちは、ライターの松岡です!

僕はコンビニに立ち寄った時、いつもブラックサンダーというチョコレートを買っています。30円という低価格と、ちょうど良いサイズ……「あと一つ何か買おうかな?」って時、絶対手にとってしまう!

 

『ブラックサンダー』は、年間販売個数・シリーズ全体で約1億6500万個を突破するなど、国民的な人気を誇るお菓子。

誰もが「おいしさイナズマ級」「若い女性に大ヒット中」といったキャッチコピーを目にしたことがあるのではないでしょうか。

 

果たして、イナズマ級の人気の理由はどこにある? 本当に若い女性に大ヒット中なの?

 

ブラックサンダーを販売している有楽製菓の社長、河合辰信さんに秘密を伺ってきました!

 

発売当初はまったく売れず終売していた?

 

「よろしくお願いします! ブラックサンダーの年間販売個数は、シリーズ全体で約1億6500万個とお聞きしました。めちゃくちゃ売れてますね。発売当初から人気だったんですか?」

「ブラックサンダーは約25年前(1994年)に発売したんですが、実は全く売れなくて一度は販売終了した商品なんですよ」

えぇ? 売れなかった頃が想像できない。一体何が悪かったんでしょう?」

「子供向けのお菓子として作ったんですが、それにしては30円という価格が高かったんです

 

※当時のパッケージ

 

「25年前の駄菓子は10円、20円が当たり前。でもブラックサンダーはこだわりにこだわった商品なので20円にはできなくて……30円という価格でしか販売できなかった

「言われてみれば、子供の頃に駄菓子屋でブラックサンダーを食べた記憶ってないですね。学生時代と社会人時代にコンビニで……って印象です」

「そう、メインターゲットに想定していた子供に売れなかった。名前も”ブラック”とか、戦隊モノっぽい”サンダー”とか、子供が喜んでくれそうなネーミングにしたんですけどねぇ……

※ちなみに「ブラック」は、ココアが黒いからだそうです

「子供にとって価格が高かったために販売終了してしまったと。だとすると、今でもブラックサンダーの販売が続いているのはなぜですか?」

「当時九州地方の担当をしていた営業から『なんとか九州だけでも販売を再開してくれ』と強い懇願がありまして。なぜか九州では復活を望む声があったんですね」

「九州人の味覚にマッチしていた……?」

「その後、しばらく九州を中心に売っていた時代が2000年初頭まで続き、そうした状況の中で大学生協での販売も進めました。すると、2004年頃に関西の大学生協で販売が1位になりまして

「なるほど!大学生だと30円の駄菓子は手頃な値段になりますね。僕も大学生の時、生協でよくブラックサンダーを買っていました」

 

「九州や関西の大学生協の販売好調が元で、大手コンビニでも西日本でテスト的に取り扱いが始まりました。これがまた大成功。そこから徐々に全国のコンビニで販売されるようになりました

「ブラックサンダーって、意外と苦労人なんですね。というか、関東地方で広まったのは意外と最近ってことに驚きました」

「関東で本格的に取り扱いが始まったのは2005年頃です。ただし、認知度が大きくアップしたのは、2008年ですね」

「!? 2008年に一体何が?」

某世界的なイベントでメダルを獲得した、某メダリストが、好きなお菓子としてブラックサンダーを挙げてくれたんですね」

「ああぁぁぁ~! そのシーン、僕も覚えています! そうか、その選手は長崎出身だから、ブラックサンダーに馴染みがあったんですね」

「ちょうどその頃、全国のコンビニにブラックサンダーが置かれている環境が整っていたんですよね。ここで一気に認知度が上昇したと思います」

「長い苦節の時代を経て、ついに花開く時が来たんですね」

「嬉しかったですねぇ。ただ、2008年に売れた要因は、外部的な要素が大きかったので、次は自分たちの力で商品を売るぞと。そこで、2011年にマーケティング部門を立ち上げました

 

「河合さんはマーケティング部の立ち上げから参加されていたそうですが、どんな仕事をしていたんでしょう?」

「商品企画やプロモーションなどを考えていました。特に2013年のバレンタインシーズンに企画した、義理チョコキャンペーンがとても話題になりまして

 

「知っています!とても話題になったキャンペーンですよね!」

「ブラックサンダーはどう見ても本命チョコではないだろう、絶対に義理チョコだろうということで、ブラックサンダーは義理チョコに最適ですと宣言をしたら、多くの方に共感いただけまして」

「高級なチョコだからぜひ本命にどうぞ!っていう売り方が多い中で、あのキャンペーンは正直すぎて、強烈に記憶に残ってます。ただ、必ずしもブラックサンダーだから義理とは言えないのではないでしょうか?」

「ほほう?」

「僕もバレンタインデーにブラックサンダーをもらったことがあるんですが、あれは本命だったのかもしれません。隣にいた友達には別の高そうなチョコレートを渡していましたけど、希望がないわけでは……」

「義理ですね」

 

はじめてのコラボ商品はラジオ番組と

「ブラックッサンダーは近年、様々な企業や商品とコラボをされていますが、最初のコラボはどんな商品だったのでしょうか?」

「最初のコラボは、神谷浩史・小野大輔のDearGirl〜Stories〜という、声優さんのラジオ番組とです」

 

2010年3月8日に発売された『DearGirlサンダー』 キャッチコピーは「おいしさハンサム級!」

 

「えぇ!? 確かに『DGS(DearGirl〜Stories〜の略称)』は、当時から現在まで続く超人気ラジオ番組ですが……その後 数々のコラボをおこなってきたブラックサンダーの、最初の最初があの番組とは!」

「神谷さんと小野さんには、ラジオの中で度々ブラックサンダーの話をして頂いてまして。先方から企画の一環としてコラボはできませんか?と打診して頂いたんです」

「ただ、最初のコラボということになると、かなり苦労があったのでは?」
「そうですね。ノウハウがゼロの状態だったので、かなり手探りで進めていたようです。逆に、そのおかげで番組側とは味の開発まで共同でやらせて頂いて関係を築けました。結果的に良いコラボになりましたね」

「ちなみに、どんな味を開発していたのですか?」

 

初恋の味 塩チョコです

 

「攻めすぎ」

「コラボの縁で、当時の開発メンバーもラジオに出演させて頂きました。ちなみに今、私の隣に座っている広報担当の内藤は、学生時代に聞いていたDGSがきっかけでブラックサンダーを知り、有楽製菓を志望してくれました

 

広報担当の内藤さん

 

「えぇ!めちゃくちゃ影響力あるじゃないですか!!ということは、内藤さんは声優大好きっ子だったわけですね。ちなみにどちらのファンだったんですか?」

「どちらも大好きだったんですが、あえて言うなら小野大輔さんです」

「ありがとうございました」

「今の質問、記事に必要でした……?」

「もちろんです(注:内藤さんの出番はこれで終わりです)。では話を戻しまして、最初のコラボはDGSだったということですが、他にはどんなコラボがあるんでしょうか」

業界で話題になったのは、チロルチョコさん・森永製菓さん・有楽製菓の3社でコラボした時ですね

 

「すごい! 垣根を超えたコラボですね!!同じ業種でコラボするのは、タブーだと思ってました」
「我々としては単純に『面白いね!』と思ってやったんですけど、業界内では驚きがあったみたいですね。『同じチョコメーカー同士でいいの?』みたいな」

「だってTBSとフジテレビがコラボするとか、NIKEとadidasがコラボするみたいなことでは……? 普通は驚くと思いますよ」

「その意外性がおもしろいですよね~」

「おもしろい、で済むんだ……」

 

※現在は生産終了

「最近では歌舞伎役者の海老蔵さんともコラボをしていますが、これはどのような経緯があったのですか?」

「私の知り合いの知り合いの知り合いの方が海老蔵さんの関係者の方で」

「だいぶ遠いな!」

「知り合いの知り合いの知り合いの方から、知り合いの知り合いに『海老蔵さんがブラックサンダーに興味を持っている』という話があって、それを知り合いに話して、それなら……ということで私のところに話が来たんですよ」

「全然理解できませんでした。海老蔵さんとコラボする時、味は共同で開発されたんですか?」
「はい。海老蔵さんは既存のブラックサンダーが好きということで、『何かを大きく変えるのではなくて、素材をよりこだわったモノにしたらどうか』と提案しました

「へぇ~、実際にオリジナルとは違う素材を使ったんですか?」

「コクのあるフランス産ミルクと、薫り高いフランス産チョコを使用したリッチな味に仕上げました」

※現在は生産終了

「めちゃくちゃ食べたくなりました。ブラックサンダーがコラボをする基準みたいなモノってありますか?

「ブラックサンダーのブランドと親和性があるか、ブラックサンダーを好きなお客さんが楽しめるかどうかですね」

「お客さん目線で考えられているんですね」

「海老蔵さんの例で言うと、日本を代表する歌舞伎役者がブラックサンダーとコラボしていいの? という驚きを、お客さんに提供できたら喜んで頂けるんじゃないかと思ったんです」

「じゃあ、僕がコラボをお願いしてもやってくれます?」

「お客さんが喜んでくれるなら。喜んで……くれますかね?」

「Twitterのフォロワー数がフロイド・メイウェザーを超える800万人になったら改めて相談します。ちなみに、河合さんがやってみたいコラボはありますか?」

「えーっと、僕が勝手に、個人的にやってみたいコラボってことですよね? 昔からやってみたかったのは、「○○○の山」と「○○○○の里」のブラックサンダーを作って、代理戦争をしてみたいですね」

うわ、ネットが盛り上がりそう!! 実現するのを期待しています」

 

SNSの運用について

「有楽製菓さんはSNSの運用が上手なイメージがありますが、誰がどのように運営されているのでしょうか?

「SNSの運営に関しては、全部私がやっています」

「えええ~~~!!!! あれ、河合社長がやっていたんですか! 多才すぎ!」

「というのは嘘で」

「急に嘘を挟むのはやめてください」

実は去年までSNSの活用が、うまくできていなかったんです。TwitterもFacebookも専任の担当者を立てずに、手が空いた者が仕事の合間に更新するような状態で」

「それはもったいないですね」

「なので、デジタル系に強い世代にSNSの運用を任せました。内容を私がチェックすることもありますが、99%は担当者が書いたまま投稿していますSNSってリアルタイム性が大事なので」

 

「でもSNSの運用は炎上リスクもありますよね」

「そのニオイがする時は、担当者から『こんな内容の投稿をしたい』という候補をいくつかもらいます。それを見て『これが一番面白いんじゃない?』って」

「そんなんで良いの!?」

「さっきも言いましたが、SNSってリアルタイム性が大事なので、社内で会議をしてたら、旬(しゅん)を逃してしまう。腹をくくって攻めたほうが良いこともあります

 

※2018年2月1日にゴディバジャパンが日本経済新聞の一面に、「日本は、義理チョコをやめよう。」という広告を掲載した際の対応がSNSで話題を集めました。

 

「判断力にスピードが必要ってことですか」

「判断力って……そんな大したことじゃないですよ。僕は大体何でも『いいよ』って言っちゃうので

「いやいや、仮にも企業の社長がそんなに簡単に『いいよ』なんて言うわけ……」

 

「言ってた」

「まあ、こんな感じですよ」

「最後にどうしても聞きたかったことを質問してもいいでしょうか?」

「なんでも質問してください」

「ブラックサンダーといえば『おいしさイナズマ級』などの独特なキャッチコピーも有名ですよね? 気になってたのは『若い女性に大ヒット中!』というキャッチコピーです。本当に女性に大ヒットしてるんでしょうか?」

「あぁ、ハイハイハイ、それはもちろん……」

 

男性のほうがよく売れてます

 

『男性に大ヒット中!』だったんかーい!」

「どちらかと言えば、ですよ。どちらかと言えば」

 

まとめ

というわけで今回は、有楽製菓の河合社長に、ブラックサンダーの人気を伺ってきました。

 

・実は一度、終売をしていた商品だった

・九州地方から徐々に関東に進出してきた商品だった

・義理チョコ専用という市場を開拓していた

・意外性のあるコラボでお客さんを楽しませる

・SNSの監修を社長自らおこなっていた

 

色んなことがわかった結果、ますます『ブラックサンダー』が好きなってしまいました!

今日もコンビニで買っておやつに食べよう!!

 

今回インタビューさせて頂いたのは、小平市にある有楽製菓の本社。こちらには、定番商品はもちろん、ここでしか買えない限定品やグッズも販売している「東京工場直営店」があります。

 

※ラインナップは取材当時のもので、時期によって異なります

有楽製菓の知る人ぞ知るロングセラー商品の「デラックスミルクチョコレート」。また、食品だけではなく、ブラックサンダーのTシャツなどグッズも販売していました。

 

ちなみに今回は、ブラックサンダーのかっこいいロゴがプリントされたTシャツを購入したので、記事をご覧の1名様にプレゼントしますよ!(※TシャツのサイズはMサイズになります)

たくさんのご応募お待ちしてます!(※現在、募集は終了しました)

 

▼応募方法

ジモコロのTwitterアカウント、@jimocoroをフォローして、下記のツイートを引用RT→「プレゼントほしい」と書いてください→当選はDMでお知らせします!

 

 取材協力「有楽製菓株式会社」

https://www.yurakuseika.co.jp/

 

 取材協力「ブラックサンダー(公式サイト)」

https://blackthunder.jp/