ベンチ

 

 

 

長いベンチ

 

 

 

長すぎるベンチ

 

 

 

この部分、全部つながってるひとつのベンチ

 

 

 

それは、

世界一長いベンチ

 

 

 

「世界一長いベンチ」はどれほど長いのか

先日、なんとなくグーグルマップを眺めていたら、偶然「世界一長いベンチ」を見つけてしまった。

ベンチが長い……しかも世界で一番……!?

今までベンチの長さについて考えたこともなかったので衝撃だった。

 

 

というわけで、ベンチがどれほど長いのかをこの目で確かめるため、石川県の金沢駅にやってきた。

 

 

金沢駅から車で1時間30分。増穂浦という海岸に着いた。

看板に小さく「世界一長いベンチ」と書いてあった。世界一だというのに意外と控えめな表示だ。

 

 

近くの道の駅に車を停めた。駐車場から階段を上ればすぐにベンチへ行けるらしい。

 

 

ゲートのような看板を見上げると、ときめき桜貝廊と書いてある。 

どうやらイルミネーションが開催されているようだ。

 

世界一長いベンチ 全長460.9m

看板の下のほうにしれっと書いてあって目が飛び出そうになった。イルミネーションに負けないぐらいのときめきを担っている数字だ。460って。ちょっと考えられない長さだ。

 

 

期待に震えながら階段を上りきると、目の前に海が現れた。その迫力に圧倒されてしまった。

今日はあいにくの天気だが、十分に能登半島の海の美しさが伝わってくる。

 

 

まるで吸い込まれるかのように美しい海へ歩み寄った。

そしたら、世界一長いベンチを踏み越えていた。びっくりした。

 

なんか一回スルーした感じになっちゃったが、ついにご対面だ。

 

 

これが世界一長いベンチ!

肉眼でベンチの端っこを確認できない。すごい。一体いくつのおしりがあればこのベンチを埋められるのか。

 

 

ベンチの左端エリアに着いた。

人で賑わっている。そして、端のほうで腰をかけている人が多い。座るスペースは460.9mもあるのに不思議だ。

いや、これは誰もが持つ性なのかもしれない。私も電車に乗るとつい端っこを狙ってしまう。人は端っこの席に安心感を求めるのではないだろうか。

 

 

ベンチの左端エリアを一通り探索したところで、遥か彼方にあるベンチの右端を目指してみよう。

でもせっかくの世界一長いベンチだ。その長さを最大限に体感してみたい。

 

考えた末、私が知りうる最も長いもの、日本一ながーいチョコを持ってきた。これは長いぞ。

 

ということで「世界一長いベンチの端から端にいくまでに、日本一ながーいチョコは何本食べられるのか?」というチャレンジをしたいと思う。

なぜ? という感情はいったん置いておいてほしい。ちっぽけな私が世界一に対抗する唯一の手段がこれなのだ。

 

 

行くぞ、まだ見ぬベンチの右端!

 

 

まずは、この海岸に来た時に最初に渡った小さな橋にさしかかった。

橋のたもとを見てぎょっとした。ベンチの上に橋が乗っかっている。

橋ぐらいではベンチを途切れさせないぞという執念を感じる。やはり世界一を目指すのは伊達じゃない。

 

 

チョコを半分ぐらい食べた。ベンチの4分の1もいってない気がする。相変わらずゴールも見えない。道のりは長い。

 

 

それにしても、日本一ながーいチョコって子供の頃はよく食べたけど、今食べてもおいしい。ピーナッツの香ばしさがきいている。パフが軽いのでいくらでも食べられる気がする。

 

 

ベンチの背面には記念手形がたくさん飾ってあった。地元の皆さんのものだろうか。

ベンチは近所の住民や学生さんなどで定期的に塗り替えなどをしているらしい。確かにこれだけ長いとメンテナンスに相当の人手がいるだろう。

潮風を受ける環境で、しかも木製のつくりだが、ベンチの状態はとてもきれいだ。みんなに大切にされているのがよく分かる。

 

 

そんな思いを馳せつつ、日本一ながーいチョコをムシャムシャやりながらベンチをたどっていくのだが、これ、無限だ。終わる気配がない。

 

 

日本一ながーいチョコ3本目に突入した。

思えば子どもの頃は1回のおやつにつき日本一ながーいチョコは1本と決まっていた。

なぜか? その理由が大人になった今判明した。

ながーいから1本で満足できるのだ。

 

 

つまり、満腹だ。2本と半分でおなかいっぱい。

お昼に食べた能登牛のハッシュドビーフが響いている。

 

 

世界一長いベンチの前で、日本一ながーいチョコを片手に私は敗北した。世界一の壁は高かった。

落ちこむ私を能登半島は見捨てなかった。雨雲の隙間から細かい光が海に降り注ぎ、水面がきらきらと輝いた。きれいだ。

能登の美しく優しい自然に励まされながら、私は再びベンチの終点まで歩き出した。

 

 

というか本当にベンチの端が全然見えてこないので走った。

気づいたのだが、このベンチ、走り疲れた瞬間に即座に休憩をとれて最強だ。

 

 

そして、ついにベンチの端っこが見えた。

 

ここが460.9m先のベンチの端っこだ。端から端までいくのに13分かかった。

長すぎる。その長さを自ら体験して感動してしまった。

 

 

これは世界一長いベンチを走破した記念に撮った写真(あとで見返したら普通のベンチの写真でびっくりした)

 

 

能登の海を眺めながらベンチで体を休めた。すごくいい時間だ。

 

あと、無意識にめちゃくちゃ端に座ってしまった。

460.9mスペースが空いてても端っこに座ってしまう。それは抗えない人間の性なのだ。

 

 

 

「世界一長いベンチ」は素晴らしい名所だった

 

帰ってから「世界一長いベンチ」について調べてみた。

完成当時は世界一の長さのベンチとしてギネス世界記録に認定された。

その後2003年に栃木県鹿沼市のイベントで550メートルの木製ベンチが作られ、世界一の座から陥落。

12年にはスイスで1013メートルのベンチが完成し、現在の世界最長と認定されている。

町の観光担当者によると、石川県増穂浦のベンチの長さは現存する中で「世界の5位前後とみられる」という。

世界各国に大型のベンチが登場し、長さこそ「現存する物で世界5位前後」(関係者)となったものの、住民と一緒に名所を守る心意気の象徴として、「世界一」の名前は譲らない。

北國新聞 2022/6/8 5:00より引用

 

現在はベンチの長さ世界一ではないようだ。世界各国のベンチ、長すぎる。

「世界一長いベンチ」のすごいところは、能登の海を見せるために、海岸沿いにめちゃくちゃ長いベンチを設置するという心意気だと思う。

それに実際に足を運んでみて、本当に素晴らしい名所だと思った。

ベンチに座ると海と一体化したような感覚に陥るというか、あの体験は「世界一長いベンチ」ならではだ。

 

これからも多くの人を魅了するベンチとして、ながーーく在り続けてほしい。

 

 

世界一長いベンチ – しかまち観光ガイド