「10巻以内のマンガでオススメ教えて」

「5巻以内のマンガでオススメ教えて」

 

というようなまとめ記事が人気を集めているのを見たので、オモコロではさらなるものぐさな人のために「1巻で読み終わるマンガでオススメなやつってある?」というのを所属ライターたちに聞いてみました。さっそくどうぞ!

 

かまどのオススメ 「鳥人大系」(手塚治虫)

 

ざっくり紹介すると、「人間に代わって”鳥”が地球を支配する様を描いた作品」です。一言で説明できるのは良作の証ですね。

鳥たちが人類に反旗を翻す→人類が衰退していく→鳥たちが万物の霊長に成り代わる→鳥が文明を築き上げる→人類と同じように退廃しやがて滅んでいく…と、この1冊だけで映画何本分?ってくらい壮大なストーリーが展開されます。

 

それでいて、オムニバス形式なのでとにかく話のテンポがいいです。1つの世界が生まれ、滅びへ向かうまでを描いているのに、読み疲れもせずスラスラ読めちゃうのはすごい。

 

章ごとに神話・伝承っぽくまとめる粋な構成、フィクショナルなハッタリ、身につまされるようなシニカルなリアリティなど、虚構としての説得力も心地よくて、なんかもう漫画を読むというより、別世界の世界史を読み解くレベルの完成度です。1巻あたりの満足度は間違いなく漫画界1位だと思います。

 

 

マンスーンのオススメ 「人類は衰退しました のんびりした報告」(見富拓哉)

 

人間がほとんどいなくなった終末世界で、主人公の”わたし”と”妖精”と呼ばれる謎の存在との交流を描いたSFファンタジー作品です。

アニメ化もしたライトノベル『人類は衰退しました』のコミカライズとして描かれたものなんですが、大まかな設定だけは同じでストーリーは完全オリジナルになっています。

 

人類が生み出した「文化」「技術」「信仰」「モノ」に関する1話完結のお話が収録されており、原作にあったブラックな表現は影を潜め作品全体にゆるやかな時間が流れています。

 

作者の見富拓哉は『彼岸泥棒』という名前でコミティアを中心に活動。時にシリアス、時にコミカルな唯一無二の作品を描いてきました。しかし唯一の商業誌であるこの作品を連載後、また活動の場を同人(アイカツ!)へと移しています。

 

終末作品によくある”モノと情報があふれる現代において本当に必要なのは何なのか”みたいな説教じみた話ではなく、全てが大事だと思えるような作品です。特にCDのお話は素晴らしいので、普段YouTubeとサブスクリプションで音楽を聴いている人に是非読んでもらいたいです。

 

 

まきのゆうきのオススメ 「Palepoli」(古屋兎丸)

 

古屋兎丸のデビュー作となる4コマ短編集です。

 

よくある縦のフォーマットではなく1ページを4コマに分割した1話を基本フォーマットとし、その枠の中に収まりきらないほどに圧倒的な画力とアートの域まで達した精密すぎる描写、一人で描いてるのか疑わしくなるほどに毎ページ変わっていく作風、エログロ、シュール、パロディ、オマージュ、仏教思想などなど散りばめて、かなり実験的で攻めたネタが多いのが特徴です。

 

男女がエッチに絡み合いつつ、それがだまし絵的にドラえもんのキャラの顔になっている「コリャえもん」、毎回4コマの原稿にいたずらをして、その内容がそのままページ上に反映されているメタ構造の「没のお化け」シリーズ、教室である生徒の引き攣った顔の動きが他の生徒に次々伝染していく様子を描く「伝染病X」シリーズなど、一歩間違えたらヤバいネタも多く、いまだに記憶に強く残っています。

 

最後に収録されている彼のマジの処女作「ある愛の詩」も掲載されており、これを読んだときは本当に頭がおかしくなるかと思いました。二股をかけていた女とその男二人が対峙し、どちらが彼女にふさわしいかをSEXで決める…という話なのですが…うっ、これはあまり思い出したくないので是非読んでみてください。敬具

 

 

ダ・ヴィンチ恐山のオススメ 「フラクション」(駕籠真太郎)

 

奇想エログロギャグの鬼才、駕籠真太郎が本気で描いた「ミステリーマンガ」です。

 

駕籠真太郎はデビュー当時から一貫してエロ・グロ・不謹慎に満ち満ちたマンガを描き続けている作家で、正直どの本もかなり人を選びます。
が、発想の豊かさがとんでもなくて、つい引き込まれます。倫理のストッパーがぶっ壊れたネタをよくこんなに描けるなあ、とため息が出るほど。

 

『フラクション』は、エログロは相変わらずなものの駕籠作品のなかでも比較的とっつきやすいかと思います。都内で発生した「連続輪切り殺人」の真相を追うミステリーなのですが、おそらく真相が予想できる人はひとりもいないでしょう。

 

異様なリアリティを伴う猟奇的な殺人……作中に作者と同姓同名の漫画家が登場するメタフィクション的な演出……これらが結実する「真相」にはみんな驚くに違いありません。

 

いや……人によっては怒るかも……。

 

 

ギャラクシーのオススメ 「Pay off」(きうちかずひろ)

 

『ビー・バップ・ハイスクール』のきうちかずひろが原作、『今日からヒットマン』のむとうひろしが作画を担当した作品。

依頼されて殺しを請け負う「殺し屋」の世界を描いたマンガなんですが、主人公は無敵のスーパーヒットマンではなく、何の特殊能力もありません。体力や腕前的にはそこらへんのチンピラと同程度。だからすぐに窮地に陥るし、そうかと思えば「銃を持っている」というだけで格闘技のプロだろうと一発で殺せたりもする。そのあたりのリアルなバランスが、緊張感やドキドキを感じさせてくれます。

 

殺した相手の腕時計を質屋に売りに行き、軽々と店のオッチャンに騙され、安値で買い取られるといった、『ビーバップ~~』的なコメディ要素も良い。ちなみにこの質屋のオッチャンが殺しの仲介役をやっていて、「なんか安くて楽なシゴトねぇの~?」「じゃあこういうのはどうだ?」って感じで殺しの仕事をくれたりします。こういう庶民的(?)な部分も、まるで本当にそういう業界があるかのようでワクワクしてしまう。

 

「殺し屋」と聞いて想像するのは、「孤高」「凄腕」「狂気」などだと思いますが、この作品ではそういった“マンガ的キャラ作り”が一切されていない。そこらへんの若者が、ただただ普通に、“当たり前の仕事みたいに”殺しを行うリアルさが最高です。

 

 

ヤスミノのオススメ 「シンプル ノット ローファー」(衿沢 世衣子)

 

衿沢世衣子をどういう言葉で表現しようかと考えると、いつも言葉に詰まってしまいます。間違いなく一本筋の通った作家性のようなものがあるのですが、既存のジャンルでくくろうとすると、そのどれもがなんだかしっくりこないような気がします。といっても、ジャンルに囚われない突飛な作品というわけではなく、どれもが地に足の着いた爽やかで軽いタッチの作品を多く描いています。

 

この『シンプル ノット ローファー』を端的に言ってしまうと「女子高生の日常」漫画です(こう言うと「きらら漫画」的な印象を与えてしまう気がしますが…)。ギャル、オタク、普通の人、根暗、運動部…みんながみんな仲良しではないけど、なんとなくゆるやかに繋がっている。大した事件も起こらないしドラマチックな解決もなく、ぼんやりと、でも前向きな着地があって…。地味と言えば地味ですが、なぜか面白いのです。

 

それと、大したことないシーンで変に現実感のあるところも気に入っています。例えば、ニューヨークに憧れる女の子が「朝起きると蛍光灯にヒモが付いているのが見えて嫌」と言うとか、更地になった場所に何の店舗があったか思い出せないとか、そういう妙なディティールがいいなあ、としみじみ感じ入ってしまいます。

 

あらゆる面で女子高生を理想化しているのに、妙に生々しい感じもあって、でも嫌味な感じもしない。サラリと描かれていますが、かなり絶妙なさじ加減で成り立っている作品だと思います。やもすればミニシアター的な悪い意味での気取った「リアルさ」少し鼻につきかねないところですが、このバランス感覚が素晴らしいです。

 

 

原宿のオススメ 「オモコロマガジンぬ」(オモコロ編集部)

 

 

1巻だけでオススメの漫画?

それはやっぱり「オモコロマガジンぬ」ですね。ちょうど今日発売したらしいですよ。

 

これまでオモコロで公開されてきた名作漫画をオムニバス形式で収録しています。オモコロのサイトを検索する必要なく、好きなオモコロ漫画がサクッと読めちゃいます。もしかすると読んだことのない作品にも出会えるかも。

 

なんで「ぬ」がついてるかは言っちゃいけないらしいです。告知じゃないとしたら、本当は施川ユウキ先生の「オンノジ」がオススメです。

 

 

 

 

 

記念すべき『オモコロマガジンぬ』vol.001, 002の配信開始に合わせて、

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