現代人にはポケットが不足している。特に夏。

 

 

スマホ、鍵、財布、VAIO TypeP、iPod nanoをズボンの各ポケットにぶち込んだらもうタバコを入れる場所がない。

しょうがないから鍵を外に出してスペースを確保する、でもそうするといつ鍵をなくすか心配で気が気でない。なぜなら俺はベルトを通すヒモの部分を信用していないからだ。

正直見栄えとか関係なくいっぱい物が入るベストを着たい、でもあれがどこに売ってるのかわからない。中忍試験に受かれば里から支給されるのか?

 

しかもこのフルアーマーポケット状態だと極めて動きづらくなるのが問題だ。特にしゃがむ動作をとるたび右ポケットに入れたスマホに私という戦うボディが干渉して太股を貫かんとするので非常に困る。

どれもこれもポケットが足りなすぎるのが問題だ。早くオーダイルに進化したい。

 

かといって米兵が履いてるような太股の側面部分にもポケットを装備しているズボンを採用しても「ポケットに遠心力が働いてめちゃくちゃ疲れる」というまた別の問題が発生する。

仕方ないだろ、俺は弱いんだ。優しくしてくれ。

 

最終的にポロシャツを着ることで胸ポケットを追加するという方法にたどり着いたけど、それでもやっぱり現代人にはポケットが足りないという事実を思い知らされることになった。

 

ある日、いつものように14時過ぎに目覚めた。目覚めた、というかあくまで布団の中で目を開けたに過ぎないのだけどこの状態を「いつまでも寝ている」などと表されると非常にムカつくので目覚めたと書くことにする。

そしてそのままの状態でスマホをいじっていたらいつの間にか16時。これが驚くことにバイトまでもう30分もないのだ。

 

バイトまで30分、と書いたがその実移動に15分近くかかるので準備に割ける時間はわずか15分。その時間で身支度や食事を済まさなければならないということだ。まったく。現代人には時間が不足している。

 

顔を洗い、髭を剃り、寝癖を直す。この時点で7分が経過。

そしてご飯の準備を忘れていたことを思い出し、モチを焼く。言い忘れていたが我が家の冷蔵庫にはモチしかない。

そしてその7分後、モチが焼ける。

 

もう家を出なければならない時間だ。しかし目の前には焼きたてのモチがある。

 

 

しかも3つ

 

 

これはもうモチを食べながらバイトに向かうしかないと思い、迷わず胸ポケットに熱々のモチを入れた。

 

 

 

その瞬間、

 

 

 

左胸に猛烈な熱さを感じた。

 

 

 

当然だ。
胸ポケットに熱々のモチを入れたんだから。

 

たまらずポロシャツを脱ぎ、別の服に着替えていたら普通に遅刻した。モチはへばりついてもう取れなくなっていた。

 

 

 

 

現代人にはモチを入れるポケットが不足している。

 

 

 

 

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