若者のビートルズ離れが進んでいるらしい。

 

beatles

 

ビートルズの名前はおろか、楽曲を聞いたことすらない若者も少なくないという。

 

9月某日、亀有の中華料理屋で、オモコロライターのマンスーン(29)と宇内(33)がこんな話をしていた――

 

 

0-1-unai
「マンスーンは音楽好きだよね。やっぱりビートルズとか詳しいの?」

 

0-2manson
「全然詳しくないです。数曲知ってる程度ですね。あと、メンバーの名前はわかります」

 

0-1-unai
「実は俺もあんまり知らないんだよね。ビートルズって、なんであんなに有名になったんだろうね」

 

0-2manson
「なんででしょうね」

 

 

三十路の2人でさえこのレベルなのだから、10代や20代前半の若者たちがビートルズを知らないのはもしかしたら当然のことなのかもしれない。

 

 

0-1-unai
ビートルズをよく知らない俺たちが、ビートルズが結成して解散するまでの変遷を想像で作ったらどうなるかな

 

0-2manson
あ、それいいですね。やりましょう

 

 

――この物語は、ビートルズに関する2人のうろ覚えの知識を、想像で補完した「ビートルズ・ヒストリー」である。

 

 

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結成前〜ビートルズの誕生〜

ビートルズといえば、この人物の名を抜きにしては語れない。

 

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ビートルズのメインボーカルであり、ギタリストのジョン・レノンである。

 

幼少期のジョンは物静かで、その性格ゆえに友だちはおらず、暇さえあればひとり土手でギターをかき鳴らす少年だったという。

 

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ジョンの父親は飲んだくれで子どもの面倒を一切見ず、母親はそんな父親に愛想をつかしていた。家の中はいつもギスギスとしており、ジョンにとって決して居心地のよい場所ではなかったという。

 

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家に帰りたくなかったジョンは、母親に買ってもらったフォークギターを土手に持って行っては、日が暮れるまでギターをかき鳴らす毎日を送っていた。

 

そんなある日のこと。

 

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1-7-paul
「君が土手でギターを弾いてるって、学校でもっぱらの噂だぜ。しかも、上手いってさ!」

 

1-8-john
「……ああ、そう」

 

1-7-paul
「俺もギターやってるんだ。セッションしないか?」

 

1-8-john
「……別にいいけど」

 

 

ジョンは、同級生であることは認識しているものの名前の知らない男に声をかけられた。

 

この男こそが、のちのビートルズのメインボーカルであり、ベーシストのポール・マッカートニーである。

 

 

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2人はその後、毎日のように土手でセッションする。ジョンはポールの天真爛漫な性格に魅かれ、ポールはジョンの詩的で繊細な言葉選びに心をつかまれたという。こうして2人は無二の親友になっていった。

 

 

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2人はお互いの音楽の才能を認め合い、フォークデュオ「ポール&ジョン」を結成。中学、高校は路上で弾き語りに明け暮れていたという。

 

高校を卒業する頃には、ふたりの目指す道はすでに固まっていた。

 

「音楽1本で食っていく」

 

しかし、より多様な音楽性を追い求める2人はフォークデュオの限界を感じており、バンドを結成して自分たちだけのバンドサウンドを作りたいと考え始めていた。

 

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「バンドやろうぜ!」という強い決意のもと、それまでギターを弾いていたポールは、このときにベースに転向した。

 

のちにポールは音楽誌のインタビューで「ベースはギターより弦が2本少ないから簡単だと思ったんだ」と語っている。

 

バンドメンバーにギターとドラムを入れようと2人の間で話はまとまり、さっそく町の掲示板にバンド募集の貼り紙をした。今でこそインターネットで気軽にバンド募集ができる世の中になったが、1950年のイギリスにそんなものはなかったのだ。

 

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よくあるイギリスの掲示板。

 

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貼り紙を見て、ふたりの前に現れたのがこの男であった。

 

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のちのビートルズのギタリスト、ジョージ・ハリスンである。

 

 

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ジョージの巧みなギターサウンドを聴いたふたりは、即座にバンド加入を認め、ジョージもそれに応じた。このときの出会いについて、のちにジョージは「ピンときたんだよね」と語っている。

 

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これで3人揃った。残るはドラムだが、いいドラマーがなかなか見つからなかったという。

 

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「この際、もう誰でもいいから入ってくれないかな」

 

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「ドラム未経験でもいいよね」

 

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「想像してみたけど、シンセもいいよね。ドラムにこだわる必要はないと思う」

 

 

そんなある日、3人がイギリスの街中を歩いていると、どこからともなく軽快なシンセサイザーの音色が聞こえてきた。

 

 

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これが、のちにビートルズのドラマーとなるリンゴ・スターとの出会いだった。

 

 

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3人の熱心な勧誘に根負けしたリンゴはバンド加入を承諾する。

 

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こうして、ビートルズのメンバー4人が揃ったのである。

 

 

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リンゴはシンセとして加入したつもりだったが、練習初日に無理やりドラムに転向させられた。

 

最初は「ドラムなんて嫌だ」とリンゴは言っていたが、のちにテレビのインタビューで「ドラムは座れるから楽でいい」と発言して炎上した。

 

ちなみに、バンド名はこの時点でビートルズではなく「タートルズ」だった。

 

 

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