「おいなりさーん」
「ほいーーーっす」
「えっ、あれ!? となりの小さい子は誰ですか?」
「これはあれやん、おいなりちゃんやん」
「おいなりちゃん…。それはおいなりさんの子供ってことですか?」
「まぁ思想的にはそうやね」
「親子ではないんですか?」
「精神という意味においては親子みたいなもんかなー」
「なんでそこをぼやかして言うんですか」
「そんなことより! この子、メチャクチャ優秀なんやで! なぁなぁおいなりちゃん、モロッコのマラケシュで開かれた、東部大西洋と地中海でのクロマグロ漁獲枠を現状より約2割削減することを決定した会議はな~んだ?」
「大西洋マグロ類保存国際委員会!」
「せいか~い! うほっ! すごっ! 大西洋マグロ類保存国際委員会なんて普通言える?ちょっ! マジすごっ! おいなりちゃんすごっ! あとクロマグロ2割削減もすごっ! おいなりの時代きちゃうすごっ! わ~、まだ心の準備できてな~い! 」
「『マグロが消えればおいなりの時代』っていうロジックに、僕は未だに釈然としないものを感じるんですが。でも、おいなりちゃんって頭のいい子なんですねぇ」
「ねー! 今の時点でこれだから将来的には一体どういうことになるのか、考えただけでゾッするわ! もしかして、最高おいなり学府行っちゃう? ノーベルおいなり賞とっちゃう? やばくない? すげくない? あ~んもう、おいなりちゃんにチュッチュチュッチュした~い!」
「ん」
「うひょー!」
「マジうひょー!」
「なんてことや…。この地面に落ちた飯粒、一体どうしたらええんやろか…」
「おや? アリさんが…」
「おいなりの肉体が、今度はアリさんの命の一部になるんやなぁ。そうや、みんなが一つなんやったら、もうなんも怖がる必要なんてあらへんねん」
「ぼやかして言うのやめてください!」