僕の名前はshun。ローマ字表記なのは、その方がカッコいいからさ。
ある日、ふと思ったんだ。
警備員って何を考えながら仕事してるの?って……。
たぶん……。
これは僕の勝手な想像だけど、ブラジャーのこととか考えまくってると思う。
青いブラジャーについて考えている
この時期、ブラジャーが抜群に透けてるよね。
特に青色が透けてると、とっても得した気分になる。
効率よく若者を処分する方法について考えている
僕もそうだけど、警備員ってノリで生きてるような若者が嫌いだと思う。
そうなってきたら、いかに自分の手を汚さず若者を処分するのかを考えて当然。
かっこよくテロリストを退治する妄想をしている
授業中よく妄想してたよね。
大抵クラスのマドンナが人質に取られるんだけど、自分がテロリストを倒しちゃうの。素手でね。
「やれやれだぜ」なんか言いながらね。もうマドンナはメロメロなわけ。
でも警備員の場合は教室じゃないから、できるだけ近くに美人の女性がいるときにテロリストが来てほしいって思ってるんじゃないかな。
あの棒でカップルを切り捨てる妄想をしている
ブォン!!
警備員が持ってるライトセーバー。あれカッコいいよね。
だから武器として使いたいって気持ちがどっかにあると思う。
カップルは試し切りに最適。
女性の胸を揉みながらボウリングについて考えている
警備員って、なんかボウリング上手そうなイメージあるよね。
街行く女性の胸を揉みながら投球フォームのシミュレーションしてる気がする。
実際に警備員に聞いてみよう
日本一警備員がいそうな駅、横浜駅にきた。
さっそく警備員に声掛けてみよう!
……。
えっと、なんて声掛ければいいんだ?
「今何考えてるんですか? 」とか急に聞いたら、頭おかしい人と思われるよね。
僕だったらそんなやつ気持ち悪すぎて関わりたくない。
困った……すこぶる困ったぞ!
相手側からすれば勤務中だし、あまり長い時間を掛けて仕事の邪魔をするわけにもいかないし……。
「仕事終わった後、飲みに行きませんか?」
これしかない。
なるべく仕事の邪魔にならない方法であり、飲みの席で会話の流れから様々な情報を聞き出すことができる。
ゲイの警備員が協力してくれる可能性が高いが、この際仕方あるまい。
突撃インタビュー
「警備員さん。お仕事終わったら飲みに行きませんか?」
「勧誘は困ります」
「すみませんでした……」
何かの勧誘と思われて怒られた……。次の警備員に声を掛けてみよう。
「警備員さん。警備のお仕事って肉体的につらいですか?」
「うーん、そんなことないですよ」
「この後、仕事終わったら飲みに行きませんか?」
「いえ、大丈夫ですので」
全然ダメ。
我ながら、かなり挙動不審だったと思う。
もうやだ……。
つらい……。
ハートがこれ以上もたない。
ベンチに座って途方に暮れていると、同じように途方に暮れているおじさんを発見した。
何だか気が合いそうなので、声を掛けてみた。
「何してるんですか?」
「待ち合わせすっぽかされちゃった」
「それは大変ですね」
この人は警備員と違って暇そうだ。
「この後どうするんですか?」
「昔、的屋で働いていた時に一日で3万稼いだことあるぞ」
話聞いてくれない……。
「あんたは何してんだ?」
「仕事で警備員にインタビューしに来たんですけど、誰も相手してくれなくて困ってるんです」
「俺、警備員の仕事してるぞ」
「すごい偶然です!インタビューさせてもらえませんか?」
「うん。いいよ」
激安の殿堂から流れてくるJ-POPミュージックがうるさくて、おじさんの声がよく聞こえないから場所を移したいなぁ。
「お食事は済ませてます?」
「まだだよ」
「では、ご飯でも食べながらゆっくり話を聞かせて貰えませんか?」
「でも今は所持金20円しかないからなぁ……」
「取材に協力して頂けるということであれば、ご馳走しますんで!」
「本当にいいんですか?」
急に敬語になった。
僕のような若輩者に敬語を使うおじさんに複雑な心情を抱きながら、近場の焼き鳥屋で話を伺った。
――よろしくお願いします。まず、おじさんのプロフィールについてお聞かせください。
丸山です。年齢は64歳で、警備員の仕事をしてるよ。
――警備員になったきっかけを教えてください。
俺って飽きっぽくってさ、職を転々としたの。でも、この歳になってきたら職の幅がどんどん狭まってきちゃってね。追い詰められてるときに、コネで警備会社に雇ってもらえることになった。年配で警備員やってる人はそういう境遇の人が結構多いかもね。
――他にどんな仕事をされてたんですか?
中学を卒業してすぐに工事現場の仕事についた。あの頃は高度経済成長期だったから建築関係の仕事が多かったね。他には、空調設備関係の仕事とか……。的屋で綿あめを売ってたこともあったよ。
――一番楽しかったお仕事は何ですか?
やっぱり的屋の仕事かな。若い姉ちゃんと色々話せるしね。
――警備員は肉体的に辛いですか?
警備員にも種類があってね。俺は主に工事現場とかで交通誘導しているんだけど、通行止めの現場は時間が経つの遅くてキツイね。片側交互通行の現場は忙しいから時間が経つの早いけど、危険だよ。
――どういうところが危険なんですか?
警備員って車を強制的に止める権利はないの。だから誘導を無視して猛スピードで駆け抜けていく車が結構多いんだよ。実際に車でひかれた仲間もいるよ。
――他にはどんな種類の警備があるんですか?
施設の警備、現金輸送の警備とか色々あるよ。現金輸送の警備員は拳法使いしかなれないのよ。彼らは警備のエリートだから、腕を後ろに組まれたりしても簡単に外せるんだよ。
こう捕まるとするでしょ?
こんな感じに外せる。
――全然わからないですけど、とにかく凄いんですね!おじさんも拳法できるんですか?
いや、俺はできないよ。他にもね、彼らはエリートだから手錠を掛けられても間接を外して手錠を外すことができるんだよ。
――えっ!?それは嘘でしょう?
ほんとだって。
こう手錠が掛けられてるとするでしょ?
これをね。
こうして……
こう……。
……。
俺はできないけどね。
面白いなぁ……。
そして本題へ……
――ズバリ、警備中ってどんな事考えてるんですか?
うーん……
……
エッチな事、考えてるよね。
めちゃめちゃ仲良くなった。