スーパーの鮮魚コーナーにはときどき妙なものが売っている。

今日は近所のスーパー「あけとみ」でめずらしい魚を買った。

 

魚と言っていいのだろうか。鮮やかなピンクが目にまぶしい。

 

タボライというらしい。

この手のものは高価だと「珍味」という受け皿があるが、安いと一気にゲテモノになる。

 

謎の加工が施されていて不安だ。

 

が、食べる。

 

汁がすごい。

 

まな板に乗せてみたものの、どうやって切ればいいのだろうか。可食部が見えない。

 

大きな口だ。

きっと海ではこの口で小魚を丸飲みしていたのだろう。

 

何かが入っている。

 

生き物が出てきた。

タボライのエサだろうか。食べようと口に入れた瞬間アミにかかってしまったのか。生は儚い。

 

名前がわからないので、図鑑を使って調べてみよう。

 

物質図鑑

「この世のあらゆる『物質』を網羅する」というなんとも豪快なテーマをかかげた図鑑だ。
犬や赤ちゃんまで「物質」と一括りにするドライさがかっこいい。

 

(なぜか絵)

守備範囲の広さにも関わらず、このようにマニアックなものまで載っているのが頼もしい。

 

そのせいで厚みがとんでもないことになっており読み辛いのが難点だ。
「棚を圧迫しすぎる」という理由でどの書店にも置かれず絶版になったという悲しい過去を持っている。

 

この図鑑ならあの生き物も載っているだろう。

 

あった。割と上の方にあった。

 

ゴヤエムシ

アフィス海域に生息する生物。
大きいものは全長20メートルを超えると言われる。
通称「海のクロワッサン」
たびたびタボライに寄生しているところを確認される。

今まで「生き物」と濁していたが、やはり虫なのか。

 

つまり、タボライが食べたのではなく寄生していたということか。

そう考えるとタボライ、体の大部分を寄生虫に占領されてて大丈夫なのか、タボライ。

そういえば私はタボライについてもよく分かっていない。

ついでなのでタボライも調べてみよう。

 

あった。

なんでもあるな。

 

タボライ

亜殿微羅目 タボ科のミシエ生物。
シャタビを射食し、変液を軟回化する。
油視動物にはめずらしく膳餌袋がないため、膚綿塔をしめなすことによって嚥態している。

 

知らない言葉が多すぎる。

 

さて、ツーインワンで得したがどうやって調理すればよいのだろうか。

 

見れば見るほど食欲がなくなる。

 

なんと暴力的な裏側。

 

おや?

 

スポっと取れてしまった。内臓ってこんなにスポっととれるものなのか。

 

いや、内臓という感じではない。そもそも別の生き物のような、

 

別の生き物…?

 

もしや…

 

これも寄生生物なのか。

 

図鑑で調べてみよう。それにしても厚いな。

 

あった。

まさかの寄生2連チャン。こんな偶然があるのか。

 

咀(そ)

いる。

 

説明に愛がない。

 

しかし、形状は似ているもののよく見ると微妙に違う。
特に右の写真に写っているシンボリックな青くて丸いパーツ。これが図鑑の絵には描かれていない。

これは咀ではないのか。もしくは、咀の中でも個体差があるのか。

 

いや…

 

まさか…

 

これも寄生生物なのか…

 

載っていたらすごいことだぞ。

 

載っていたよ。

マトリョーシカじゃないか。

 

グリフィガス・ハストン・メ・デチア・マチアン・ポワーセ・ドアーゼ・レファリーレ・ポ

貝のような構造の水中生物。
毛が束になって生えていること以外にこれといった特徴はない。

 

特徴あるだろ。

寿限無みたいな名前、特徴でしかないだろ。

 

別の生き物とあれば取り出してみたい。

 

意外と肉が固い。なかなか切れない。

 

根付きすぎている。そんなに居心地がいいのか。

 

出てこい。

 

出た。やっと出た。

 

肉がこびりついている。ほとんど一体化していたようだ。

 

洗い流す。

 

綺麗になった。

 

図鑑によると、グリフィガス・ハストン・メ・デチア・マチアン・ポワーセ・ドアーゼ・レファリーレ・ポは貝のような二枚構造になっているらしい。開けて中を見てみよう。

 

なにかいる。

寄生生物だろう。もう慣れた。

数々の変な生き物の中に住んでいるのだ。さぞ珍しい、見たこともない奇怪な生き物なのだろう。

どんなすごい生き物なんだろうか。

 

これは…

 

テントウムシ…?

 

どういう経緯で入ったの?